テラーノベル
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🦈「ここ……で、ねるの?」
小さな声。体はまだ震えている。
📢「そうだ」
いるまはゆっくりと頷き、祠の入り口を示す。
📢「外にいるより、ずっと安全だ」
こさめはため息をつき、少しだけ肩の力を抜く。
長い逃亡の後にやっと訪れた休息は、ほのかな安心感をもたらした。
🦈「……ありがとう」
小さな声でつぶやく。
しかし、すぐに目を伏せてしまった。
感謝を口に出すことに慣れていないのだ。
その声には、恐怖と不安、そしてほんの少しの希望が混ざっていた。
いるまは黙って祠の奥へと歩き、古びた石の台に腰を下ろす。
📢「お前は、ここで眠れるか?」
短い問いかけだが、強い意志がこもっている。
こさめは小さく頷き、祠の隅に座り込む。
🦈「うん……だいじょうぶ……たぶん」
いるまはその様子を静かに見つめた。
人間の子どもは弱い。
しかし、こうして生きようとする姿には、
神である自分でも認めざるを得ない力がある。
📢「……お前、名前は?」
いるまがぽつりと尋ねる。
🦈「こさめ……」
小さな声。
こさめは少し戸惑いながらも、名前を告げる。
その響きには、まだ壊されていない子どもらしい自由さが感じられた。
📢「こさめ……」
いるまはその名を口に出してみる。
自分の中で、初めて人間の名前を呼ぶ気持ちが、なぜか自然に湧き上がった。
🦈「……ここ、あったかい」
こさめが、祠の石段に座りながら呟く。
少しだけ微笑むように、顔がほころぶ。
その瞬間、いるまの胸に、かすかな温度が広がった。
(……人間に、こういう瞬間があるのか)
これまで、人間を遠ざけ続けてきた自分にとって、それは新しい感覚だった。
孤独と静寂の中でしか感じなかった、自分以外の存在との繋がり――。
📢「眠れるか?」
再び問いかける。
🦈「うん…………だいじょうぶ」
その言葉に、いるまは目を細めた。
本来、関わるべきではないはずの人間が、目の前で安心している。
不思議な感覚が胸を突いた。
📢「……寝ろ」
短く、しかし確かな命令。
こさめは小さくうなずき、石段に身を沈める。
その瞳はまだ完全には閉じられないが、少しずつ重くなっていく。
いるまは祠の入り口で立ち止まり、夜空を見上げる。
月は淡く光り、森の闇を静かに照らしていた。
(……この子を守らなければならない)
強く思った。
理由はわからない。
ただ、胸に確かな感覚として芽生えていた。
そして、祠に広がる静寂の中で、ふたりの時間はゆっくりと流れ始めた。
コメント
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愛してる結婚しよ()