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理事長「…そうですか。好奇心旺盛な時期です。こうなる時が来るのも分かっていたので、彼には事実を話して、バース検査を受けてもらいましょう。なんでも、幼少期に1度受けただけだとお母様が仰っておりましたから…」
早朝、岩本と深澤は昨晩のことを理事長に包み隠さず打ち明けた。最初は驚いた様子だったが、すぐに受け入れてバース検査も促してくれた。
康二の部屋に向かうと、ベッドですやすや眠る康二と、その隣にそっと頭を伏せて眠る阿部がいた。
2人とも、深澤と岩本の気配に気付いたのか目を覚ました。
深澤「おはよ。」
阿部「んっ、おはよーございます。」
まだ寝ぼけ眼の阿部の頭を、深澤が撫でて「阿部ちゃん、ありがとな」と微笑む。
阿部「ふっかさん、頭撫でるの癖ですよね…ときめいちゃうのでやめてもらっていいですか?ふふっ」
岩本「ん”ん”っ!…朝からイチャついてんなよお前ら」
甘々な雰囲気に、堪らず咳払いをして呆れた様子の岩本が声をかけた。
向井「あっ、俺また寝ちゃった…?」
康二は目を擦りながら身体を起こす。
岩本「康二…具合はどうだ?」
向井「もう元気いっぱいです!ピンピンしとるで!」
岩本「そっか、なら良かった。」
深澤「康二、起きたばっかで申し訳ないんだけど話があるんだ。」
向井「話…?」
岩本「あの部屋の話だ。そして、康二が意識を失ったのにも…理由があるんだ。」
そう告げると、康二は布団をバッと剥がし、ベッドの上で正座をし、前のめりになった。雰囲気から、真面目な話だと察したのだろう。
深澤「あの部屋は、オメガバースを持つ者が利用する部屋なんだ。オメガバースって聞いた事はあるか?」
向井「少しだけ…でもそれって、架空のもの…じゃないんですか?」
深澤「まあ、そうだな…ほとんどの人はそう思ってる。でも中には、ほんのひと握り、本当にそういう染色体を持ってる人が居るんだよ。この学校にいる生徒は、…みんなそうなんだ。」
康二は驚いた様子で目を見開いた。
向井「俺、そのオメガバースって染色体持ってへんのに、なんでこの学校に…」
深澤「俺も、康二は染色体を持ってないって聞いてたから、それは俺にも分からないんだけど…昨日倒れたり、苦しくなったりしただろ?あれは、多分康二が持っていた染色体がフェロモンに触発されて覚醒したんだ。」
向井「じゃあ俺も、オメガバース…ってこと…?」
深澤「ああ。…だけど、俺もあれほどまでに強いフェロモンを嗅いだことがない。しかも、αの俺とΩの照、どちらにもフェロモンを放っていた。それに阿部ちゃんが康二に飲ませた抑制剤が効いたことから考えると、特殊なバースの可能性が高い。」
向井「えっ、3つ以外にそんな特殊なものが?」
阿部「世界規模では、有り得なくない話なんだ。だから俺もいつでも対抗できるように抑制剤を持ってた。」
岩本「理事長には今さっき、昨日の件を報告してきた。あと、康二にはバース検査を受けてもらう。通常はフェロモンで分かるけど、康二のは特殊だから。結果と対処法が分かるまでは阿部に抑制剤お願いしてるから、それで対応して欲しい。」
向井「…分かりました。」
康二は事の重大さと、自分の身に何が起きているのか不安でたまらなかった。謎の部屋、あの秘密を知ろうとしなければ、平穏な日々を過ごせていたのかもしれないと思うと、自分の好奇心旺盛な性格を少し恨んだ。