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18になったと同時に免許を取り終えた
俺は兄貴からドライバーの仕事をもらった
昼間と夜の生活が忙しなく始まった
免許も誕生日を迎える前に学科を受け始め誕生日を迎える頃無事卒検に受かった
初めは人を乗せるのは緊張したが上手くこの仕事もこなしていった
一つ嫌なのが大人になるにつれ視力が悪くなりメガネをして運転しなければならなかった
すぐに免許に印字され渡された
カッコ悪いな
普段柄シャツからタトゥーを覗かせているのにメガネを掛けた姿はたまに笑われた
昼の仕事を終わらせハイエースを走らせ人を乗せホテルに向かう
会話なんてない
みんな素はこんな仕事したくないんだろう
顔が死んでるものばかりだった
これから客と会ってしたくもない笑顔を振り撒いて仕事をするのだから
次は集団の送迎、繁華街のほとりでみんなを降ろす
こんなことを日々繰り返し
何回かピストンしたら休憩する
そうしているうちに次の連絡が入りホテルに迎合する
次は肩まで伸ばした明るい髪の女1人が立っていた
乗り込んでも俯いて泣いていた
「大丈夫?」
普段なら声を掛けないけど..無性にほっとけなかった
行き先も勝手に告げて自分の世界に入って携帯を触ってる奴ばかりで、でもその女は黙ったままだった
「どこまで行こうか?」
女は顔を上げた
「ごめんなさい..」
掠れた声が聞こえて俺は振り向いて顔を顰めた
首中にあざが出来ていて真新しいあざに感じた
ドライブに入れていたのをパーキングに戻し
「..え?客にされたの?」
「いつものことなの..ゴホッ」
「ちょっと待ってて」
サイドブレーキを弾いて車から降りて冷たい水を自販機で買ってきて差し出す
「意味ないかもしれないけどこれ..冷やした方が..」
「ありがとう..」
「…まで送ってください」
女はドアに持たれて眠る様に目を瞑った
「着いたよ」
前から声を掛けるが反応がなくて振り向く
寝息が微かに聞こえて安堵する
俺は反応をないのを良いことに少し彼女を眺めた
とても綺麗な人だった
「困ったな..」
シートベルトをはずして運転席から手を伸ばし
膝に少し触れようとするが遠くて届かない
「着いたよー」
もう一度声を掛ける
また俺は車から降りて彼女の寝てるドアの逆から歩道側からスライドドアを開けた
隣に乗り込み少し緩く揺すった
「大丈夫?起きて着いたよ」
「んん…」
石鹸なのか良い匂いが少し近づいただけで鼻に充満する
喉のあざがさっきより色が薄くなっている
よかった
でも..客とシャワー浴びてきたんだよな
すきだらけのこの女に勝手に自分との情事が浮かんでくる
“ああ..っん やめて..いやっ”
“ひろと..”
仕事相手に手を出すと罰金があるから頭ではわかってる
絶対にだめなんだけど男の性で、でもそのくらい良い女だった
迎えに行った時背が異様に高い様に思ったでも細いから女だと思った
最近はそんなの当たり前にいるから
細くて肩紐の華奢なロング丈のワンピースを着ているから気づかなかった
胸だってあるし..
でも彼女は多分男の子だ
俺とそんなに変わらない年で
なのに俺は興味をそそられた
女とはそれなりに遊んだから
特異なこの女と2人きりという状況に
必死に自分を隠して
邪な考えを振り払った
「ねぇ、次の連絡入ったら俺行かなきゃ行けないから起きてよーお姉ーさん」
今度は覗き込んで肩を触った
いつもならこんな事しないのにやっぱり男だと思ったらどこか警戒心がなくなって何かが緩くなっていた
「あ、ごめん..寝ちゃってた」
「もう着いたんだ..」
飛び起きて窓の外を見ている
起きちゃったか..まぁよかったけど
少し残念に思いながら彼女が喋りだした
「君初めてみるね、あの人は辞めちゃったの?」
あの人..部屋は違うけど先輩のことだろうか
この仕事を教えてもらったのもその先輩だった
「まだいます」
「そっか..」
先輩とこの人何かあるのか..?確かドライバー歴はまぁまぁ長いはず
すると彼女が
「次も君が迎えにきてよ」
「優しいね、ありがとう
これ嬉しかった
..少ないけど」
と千円を渡してきた
俺は受け取らずまた迎えに行きますと告げると
「良い子だね」って降りて行った
子供扱いされたようで悔しいような彼女の目に入ったことが嬉しいような
名前聞いておけばよかったな..
触れたかったな