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鈴木が特攻して数日の夜が開ける少し前、兵舎の扉が叩かれた

「橘清志。突撃命令が下った。午前六時三十分。飛行場集合だ。」

その言葉が鼓膜に残る。

眠気もなく、言葉もなかった。静かに布団から体を起こし、敬礼をするように頷いた。

外は薄暗く霧が出ていた、岡部さんが起き上がりぽつりといった。

「…ついに来たのか。お前が行くのは惜しい。」

何も言えず荷物をまとめた。手ぬぐいと家族写真、そして白紙のままの遺書

訓練場の端に1本の松の木がある。何人もの人を見送って成長来た大きな松の木。

岡部が来て小さな包み紙を差し出す。

「…これは、?」

「梅干しと乾パン。うちのかあちゃんが送ってきたやつ。」

しばらく手を伸ばせなかった。やっとの思いで受け取ると岡部は黙って頷いた。

「なぁ、お前も怖いか?」

しばらく考え、言葉を選び答えた。

「…はい、でもみんなもそうだったんでしょ?」

初めて優しい笑顔を岡部は見せた。

「俺ももうすぐ飛ぶと思う。だから、今は見送ってやるよ」

朝日が昇りかけていた。

兵舎へ戻り、遺書を書いた。震える手で、泣きながら。

──────────

母さんへ

俺はお国のために命を捧げます。

けれど、泣かないでください。

母さんは笑顔の方が美しいですから。

一つだけわがままを言えるとしたらまた、

兄さんたち、母さん、父と笑って過ごしたいです。

育てて下さりほんとにありがとうございました。

そして、ごめんなさい。

清志

──────────

朝日が差し込んだ。

どこか切なかった。

母に苦しい思いをさせぬと、この国を勝たせる為に命を捨てる。

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