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あの日から。
ひでは少しだけ変わった。
いや。
正確には。
変わったというより、隠している何かが増えた。
愁斗はそれに気づいていた。
「……ひでくん。」
『ん?』
「最近、変。」
『何が?』
「分かんないけど。」
「なんか考えてる。」
ひでは一瞬黙った。
でも。
いつものように笑う。
『考え事くらいするだろ。』
「……そっか。」
それ以上は聞かなかった。
聞けなかった。
数日後。
季節の変わり目。
急に寒くなった日。
愁斗は朝から少し体が重かった。
頭がぼんやりする。
喉も少し痛い。
でも。
今日は施設の子どもたちとの約束があった。
「大丈夫。」
そう言いかけて。
止まる。
スマートフォンを見る。
ひでくんとの約束。
辛い時は言う。
愁斗は短くメッセージを送った。
「今日は少し体が重い。」
すぐに返信が来る。
『休め。』
『今から行く。』
「……早い。」
思わず笑った。
施設へ来たひでは、愁斗の顔を見るなり眉を寄 せた。
『顔色悪い。』
「やっぱり?」
『やっぱりって何。』
「自分でも分かってた。」
『じゃあ休め。』
「今日は少しだけ。」
『少しだけ、は禁止。』
愁斗は苦笑した。
「厳しい。」
『大事だから。』
その言葉に。
胸が少し温かくなる。
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夕方。
愁斗は部屋で横になっていた。
微熱。
疲れが出たのだろう。
ひでは椅子に座っていた。
「……ごめん。」
小さな声。
『何が?』
「また心配かけた。」
ひでは静かに首を振る。
『愁斗。』
『それ、もう言わなくていい。』
「でも。」
『俺が心配したいからしてる。』
愁斗は黙る。
『迷惑じゃない。』
『何回言えば分かる?』
その声は優しかった。
「……。」
愁斗は目を閉じる。
「昔から。」
『ん?』
「こうだったのかな。」
『何が?』
「誰かが心配してくれるの。」
ひでの胸が締めつけられる。
「俺。」
「小さい頃のこと、全然覚えてない。」
「でも。」
「たまに思う。」
「誰かを探してる気がする。」
その言葉に。
ひでの手が止まった。
夜。
愁斗が眠ったあと。
ひでは一人で外に出た。
空を見上げる。
言わなきゃいけない。
でも。
怖い。
『もし違ったら。』
『もし、俺の勘違いだったら。』
でも。
あの記録。
あの名前。
あの夢。
全部が繋がっている。
ポケットから一枚の紙を取り出す。
施設の記録。
そこに書かれた二つの名前。
英寿。
愁斗。
『……やっと見つけたのに。』
『また失うのが怖い。』
その時。
後ろから声がした。
「ひでくん。」
振り返る。
愁斗が立っていた。
『起きたの?』
「うん。」
「……話したい。」
ひでの心臓が跳ねる。
「最近。」
「何か隠してるよね。」
『……。』
「俺。」
「怖いんだ。」
愁斗は小さく笑う。
「大事な人が、何も言わずにいなくなるの。」
その言葉で。
ひでは分かった。
今までの愁斗の強がりの理由。
誰にも頼れなかった理由。
全部。
失うのが怖かったから。
『愁斗。』
「ん?」
『明日。」
『話したいことがある。』
愁斗は少し不安そうな顔をした。
「……悪い話?」
ひでは首を振る。
『違う。』
『でも。』
『大事な話。』
愁斗は少し迷って。
小さく頷いた。
「分かった。」
その夜。
二人とも眠れなかった。
明日。
今まで知らなかった過去が明かされる。
二人の人生を変える言葉が。
もうすぐそこまで来ていた。
コメント
1件
あおいです🌷 第25話、じっくり読ませていただきました。愁斗の「大事な人が、何も言わずにいなくなるの」という言葉に胸がギュッとなりました。ひでくんが持っている施設の記録──「英寿」と「愁斗」が並んだ瞬間、この二人が以前から繋がっていたんだと気づいて鳥肌が立ちました。言いたいのに言えない怖さが、二人の距離感にすごく現れていて、切なかったです。明日、何が明かされるのか…続きが気になります✨