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11歳の涼太は、今日も学校が終わるとすぐにランドセルを背負い直し、裏山に向かって駆け出した。放課後の風は少し冷たく、だけどどこか心地よかった。彼の隣には、クラスメイトの美咲が追いかけるように走ってくる。
「遅いよ、涼太!」
「待って、美咲、今日は新しい道見つけたんだ!」
二人は学校の裏にある小さな森の中に秘密基地を作っていた。まだ小さな木の小屋だけれど、二人にとっては世界で一番特別な場所だ。中に入ると、棚の上には絵本やお菓子の缶、手作りのカードが並んでいる。
「見てよ、この木、前より大きくなってる!」
「本当だ…私たちも少しは大きくなったのかな?」
涼太は窓から差し込む夕日の光を浴びながら、手に持った小さな虫眼鏡で木の葉の形を観察した。美咲はそっと横に座り、二人だけの時間を楽しむ。
「ねえ、涼太、今日の授業でさ、先生が言ってた“将来の夢”って…」
「うん?」
「私、まだよくわかんないけど、涼太は?」
「俺は…秘密基地みたいな、ワクワクする場所を作る仕事かな」
「へえ、面白そう。でも、私も涼太と一緒ならどこでもワクワクできそう」
二人は笑いながら、お菓子を分け合い、森の中の小さな冒険の話をした。夕暮れが森をオレンジ色に染める頃、家に帰る時間が近づく。
「また明日も来ようね」
「もちろん!秘密基地は俺たちの場所だもん」
二人は手を振り合いながら、また学校の方へ駆け出す。日常の小さな冒険は、涼太と美咲にとってかけがえのない時間だった。