テラーノベル
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ずっと、好きな人がいる。
目立つタイプではないけれど、まつ毛が綺麗で、手がしなやかで、優しくて、朗らかな人。
最初は友達だったはずなのに、気付けばその人の虜になっていた。
連絡先を交換して、毎日のように話して。休日はよく一緒に出かけたりお互いの家に行ったり。学校でも周りの人に常にいる2人という扱いを受ける程度には、一緒にいたはずだ。
最初は、どうせ無理だからせめて友達だけでもと思って話しかけたが、気付けば相手にとっても大事な存在にはなれていたはずだ。
「ずっとずっと、片倉君が好きでした!付き合ってください!」
体育館裏に響く告白の言葉。2人に漂う、青春特有の甘酸っぱい雰囲気。けれど、それを言ったのは俺ではなかった。
辺りには心地の良い穏やかな風が吹いている。しかし、俺の中では汚泥のような感情が溢れ出てきた。
なんでそいつなんだ?だって、字は汚いし勉強も出来ない。いつも期末テストの時は俺に泣きついてきていた。たまに人を揶揄うし、抜けてるところがあるし、それ以外にもいっぱい……
お前もなんで満更でも無い顔なんだよ、殆ど関わったことなかっただろその子と。そんな、そんな俺も見たことない顔で嬉しそうにするなよ。
俺の中からドロドロぐちゃぐちゃしたものが溢れてくる。しかし、角の向こうでは甘酸っぱくて爽やかな、青春が溢れている。
片倉に告白した子が、頬を赤らめ目に涙を浮かべる。その様子を最後に、俺は思わず反対方向に駆け出した。
次の日、俺はいつもより少し遅めに来て、教室の前であの子と別れた片倉に話しかける。
「お前あれ彼女かよ〜?ずりぃぞ、俺より先に可愛い子とくっつくなんて。」
上手く喋れているかが分からない。
やめろ、そんな顔で頷くな。そんな幸せそうな、気恥しそうな顔で。
「どういう出会いなん?照れんなよ〜、応援するからさ!」
俺はまたいつも通り、あいつの友達になった。
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