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あれから綾野さんの調子は落ちついており、今日も個性を使わずにヴィランを捕まえている。
「今日もお兄さん見つからなかったね。」
「そうだね。私と瓜二つなのに見つからないもんね。」
行き違う人の顔を確認していくが、そう簡単にはいかない。
「(僕が落ち込んでどうする!!)」
かっちゃんからの連絡も、見つからなかったとのこと。ロッカーに備わっている鏡に映る自分に“よしっ”と呟き更衣室を後にする。
「綾野さん!!」
ちょうど事務所を出た彼女を追いかける。
「一緒に帰ろ。」
そう言って柔らかな笑顔を見せる彼女に、自分はいつも励まされている。
「かっちゃんから連絡きてたよ。見つからなかったって。」
「ありがとう。あの人見た目によらず優しいんだね。」
「かっちゃん、誰にでもあんな態度とっちゃうけど本当は優しいんだよ。」
「なんでわざわざあんな態度とっちゃうのかな。普通にしてたらもうちょっと人気でるんじゃない??」
「あれが普通だからなぁ。僕には普通のかっちゃんが想像できない。」
「なにそれ面白っ!!きっとあの人どこかでくしゃみしてるよ。」
他愛ない話をして、今日はそれぞれの家路についた。
そんな日々が続いたある日の巡回任務中のこと。
「危ないっ!!」
と僕を突き飛ばした綾野さんは、脇道から飛び出てきた車ごとお店に突っ込んだ。
「綾野さ、!?」
無人、はたまた人が乗ってるのに暴走しだす車。自分も急いで事態の終息に努める。彼女は無事だったようで、個性を発動し対処している。思い返せばこれが始めて彼女が個性を使って任務を行った日だ。
「綾野さん…??」
騒動が収まり彼女に声をかける。気づいてないようなので横に並んで声をかけようとすると、鋭い眼光で彼女は野次馬をみていた。
「綾野さん??」
「緑谷君。兄さんの気配がした気がするの。最初に緑谷君をかばった時から。個性も勝手に発動して、緑谷君が声をかけてくれるまで解除するのまた忘れて…。」
呼吸を乱す彼女の肩をそっと抱いて。
「落ち着いて。僕がいるから大丈夫。まだお兄さんの気配感じる??」
「もう感じない…。さっきまで野次馬の中から感じたんだけど…。」
彼女の表情が歪む。見ると個性を使って車を止めた衝撃で腕や足を負傷している。
「そのケガ…!!今は病院に行こう。」
救急車へ彼女を誘導する。
「暴走する個性を止められない自分が怖い…。」
「(なんで綾野さんはお兄さんのことになると個性をコントロールできなくなる??彼女にとってお兄さんはどんな存在だったんだ??たった1人の、唯一の家族じゃないのか…??)」
まとまらない思考。僕は救急車で病院に向かう彼女を見送った。事務所に戻って聞いた、車が暴走した原因は何者かが自動運転システムをハッキング。その全てが国内シェア1位のメーカーの車であった。この出来事が、後の重大事件に発展するきっかけになっていたことに僕たちは気づかないでいた。