「それで聖奈の欲しいモノはなんだ?」
もはや恥も外聞もない。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。っていうしな!使う場面間違ってそうだけど。
「うーん。欲しいものかぁ。殆ど手に入れたからあまりないんだよね」
「そうか…ミラン達には何をプレゼントするんだ?」
本人にもわからないんだ。何かヒントだけでも欲しい。
「よくぞ聞いてくれました!ミランちゃん達にはコスプレセットだよ!!
絶対似合うよね!!」
「あ、ああ。そうだな…」
それはプレゼントなのか?ただの地獄では?
俺はミラン達が玩具にされる不憫さを憐れんだ。
「あっ!じゃあ、新しいカメラはどうだ?ミラン達の姿も異世界の景色もたくさん撮れるぞ?」
「ホント!?それ良いね!!確かにカメラは新しい物の方が綺麗に撮れるもんね!」
エリー。ミラン。済まん。俺はお前達を売った。
その後、電気屋に行って高性能新型カメラを買った。
俺には違いはわからなかったが、聖奈さんは店員さんと色々話していた。
かなりの高額になったが、お金を家賃以外で使っていないから気にならない。
むしろ漸く使い道が出来て、少しホッとしていた。
「どうせならパソコンとプリンターも買おうか。異世界用に」
「良いの!?やったぁ!ミランちゃんならすぐに使い方を覚えそうだね!地球の仕事もいずれ任せられるかも!」
すまん。ミラン。
「ほどほどにな…」
「もしかして気にしてる?大丈夫だよ。ミランちゃん自身がこっちの仕事に興味があるんだよ。流石に嫌ならさせないよ」
それなら良いな。
その後は別の店員さんにあれやこれや聞いてパソコンとプリンターを選んでいった。
「車で来て正解だったね!こんなに持って帰れないもん」
「そうだな。問題はマンションについてから運ぶのが俺達だってことだな」
プレゼント以外にも食材や異世界で使う備品なども大量に買ってきていた。
年末にまとめ買いするよりはマシだと思ったが、これはこれで大変だな。
マンションに着いた後、俺達は車と部屋を往復した。
世界間転移も久しぶりに複数回した。
もちろん寝ている二人の枕元には、可愛くラッピングされたプレゼントを置いておいた。
「何かあります!」
朝、ミランの声で目を覚ました。
いつもは俺だけ寝坊して朝食の時に起こされるから、まだ眠い……
「どうしました?あれ?こっちにもあるですっ!」
どうやらプレゼントに気付いたようだな。
「あっ!二人とも良かったね!サンタさんからのプレゼントだよ!いいなぁ。私とセイくんは向こうでは大人だから貰えないんだよね」
そんな設定があったのか…二十歳未満で良い子にしていたら貰えるってことか?
「でも、これまではなかったですぅ…」
「エリーちゃん。多分それは、こっちの世界にサンタさんがいなかったけど、今回からは私達がここに来たから側にいる二人にも向こうのルールが適用されたんだと思うよ。
だから、これまでもミランちゃんもエリーちゃんも良い子だったのは、間違いないよ!」
凄い。めちゃくちゃ屁理屈だけど、悪いことをしていないから強気だ!
「でも…良いのでしょうか?私達だけがプレゼントを貰えても」
「ミラン。素直に受け取っておけ。サンタさんは地球でも、誰にでも来てくれるわけじゃない。
貰えたら自分の日頃の行いが間違っていないってことと、その幸運に感謝していればいい」
ミランはお姉ちゃんだからな。
弟達が貰えないのが気になるんだろう。
それは後でフォローするから今は素直に喜んで欲しい。
「わかりました。サンタ様。ありがとうございます」
様って…あんまり聞いたことないな……
「これは何ですか?」
プレゼントを開けた二人が聞いてくる。
説明は俺の役目だ。聖奈さんは朝食を作っているからな。
というか、逃げた。
コスプレをプレゼントしたのがバレるのを、今更恐れたようだ。
俺も説明すんの嫌なんだけど……
「それはパズルという物だな。似たようなピースって呼ばれているモノが1000個くらい入っていて、箱の絵になるように組み合わせる遊びだ。
ちなみにエリーのが1500個で、ミランのは2000個だ。
両方とも難しいけど、二人なら出来ると思うぞ」
額縁も用意してあるけど、かなりのサイズだ。ホントに完成させられるのか?
自分で買ったけど、かなりの超大作だぞ……
まぁ、完成出来なくても遊びだからいいんだけど。
「この絵になるのですね。綺麗ですね。楽しみです」
ミランは気に入ってくれたみたいだな。
少し大人な感じのパズルだけど、ミランは大人だからな。
「何か機械っぽい絵ですね!私好みです!」
エリーのパズルは絵がSFっぽいやつだから気に入ってくれたか。
「まだありますね。これは一体…」
「私のにも入ってます!」
「それはコスチュームだな。普段着とは言えないが、向こうの世界で有名なキャラクターや職業、動物とかになりきる衣装だな。
二人が着たら聖奈が大喜びするのは間違いない」
俺も二人が着たなら可愛いと思うが、それを伝える勇気はない。
「セーナさんが喜びそうな衣装です…」
「エリーさん。恐いのはわかりますが、折角サンタ様から頂いた衣装なので一度は着ましょう」
聖奈さん。やっぱり恐れられてるぞ……
「今日がそのクリスマスだから、折角だから夕食の時に着たらどうだ?
聖奈もクリスマスメニューで夕食を作るって張り切っていたからな」
俺が出来るのはここまでだ。
朝食を食べた後、ミランの家にプレゼントを持っていくことになった。
「良いのですか?」
「勿論だ。その為に聖奈と買ってきたからな」
「そうだよ。ミランちゃん達にはサンタさんがプレゼントをくれると思っていたから、弟さん達の分は私達が用意していたの」
嘘に嘘を重ねるとミランにはすぐにバレるだろうが、それは仕方ないな。
むしろすでにバレていそうだが、エリーには絶対バレていないからミランも態々言うことはないだろう。
「ありがとうございます」
俺達は水都セイレーンの家からリゴルドーへ向け転移した。
「ただいま!お母さん!セイさん達が来てくれたよ!」
年相応のミランを見るのは久しぶりだな。
大人ミランか、幼児ミランしか普段は見れないから新鮮だ。
「まぁまぁ。ようこそ。入ってくださいな」
「お邪魔します」
リビングに通された俺達はテーブルを囲んだ。
珍しくバーンさんも家にいたのは、どうやら今日が偶々年越しまでの最後の休みだったようだ。
「今日はプレゼントを持ってきました。私達の故郷ではこの日にプレゼントを渡す風習があるんです。ですので、遠慮なく受け取ってください」
普段世話になっているお返しを込めてのプレゼントを、ミラン家族全員へと渡した。
エリーの家族にも会いたいし会わなきゃならないが、それまでにやらなきゃいけないことがあるから、残念ながら今年のプレゼントは渡せないな。
「ありがとうございます!黒髪のお兄ちゃん!」
「ありがとうございます。大切にします!」
ミレーユちゃんとバランくんだ。二人ともしっかりしている。
できたお子さんばかりでバーンさんは頼もしいだろうな。
ミレーユちゃんにはぬいぐるみ、バランくんには革の鞄をプレゼントした。
「えっ?私達にもですか?」
ミラン母にはマフラーと手袋を。バーンさんには帽子をそれぞれ贈った。
「あと、これは皆さんで食べてくださいね」
聖奈さんからはクリスマスケーキのプレゼントだ。
ミラン家族は大いに喜んでくれて贈り甲斐があった。
次はこっちのクリスマス会だな。
「これを引くんですね?」
「ああ。斜め上に向けてひくんだ」
俺とミラン&エリーは、クリスマス会の準備をしている。
料理はもちろん聖奈さんだ。
「じゃあいいかな?」
机に料理が並べられて、準備は完了だ。
「せーの!」
「「「「メリークリスマス」」」」パァンッパァンッパァンッ!
「「きゃー!!」」
幼児二人はクラッカーの音に大はしゃぎだ。
「すごいです!こんな小さな筒から…大量に」
「音が大きいですね!驚いちゃいました!」
エリーはクラッカーの構造に興味を持ち、ミランは珍しく興奮している。
驚いたのが恥ずかしかったのかな?
「さっ!食べましょう!でもその前に、いいかな???」
聖奈さんが目をギラつかせながら二人へと近づく……
ホンマに不審者や……
カシャカシャカシャ
シャッターを切る音がしばらくリビングを包んだ。
一通り撮影し終え、料理を食べる。
「七面鳥なんてよく調理出来たな。このビーフシチューも絶品だ!」
「私も焼いたことはなかったからどうなるかと思ったけど、レシピ通りにすれば失敗しなかったみたいだね」
「黒いシチューも美味しいです!」
「立派な鳥です」
俺からしたら七面鳥は少しグロいが、こっちの人からしたらよく肉がついた立派な鳥なんだろうな。
俺はどちらかと言えばシチューはビーフシチュー派だから嬉しい。
うん。どれも美味い。
食後、幼児二人がソワソワしだした。
これだけ豪華な食事だったんだ。デザートに期待しているのだろう。
「本当はクリスマスはケーキなんだけど、最近ケーキの供給過多だったから、少し趣向を変えたの」
その言葉に明らかにテンションが下がる幼児達。
「あっ!でも、こっちもケーキだよ。見た目は少し違うけどね!」
そう言って冷蔵庫から取り出したのは……
「じゃーん!」
「黄色いです?」
「ですが少しクリームが乗ってますね」
うん。俺が好きなケーキだ。今日は好物が多いな。
「チーズケーキだよ!少しだけホイップクリームでデコレーションしたけどね」
「チーズですか。たしかに色はそうですね」
「チーズも好きなので嬉しいです」
あまり嬉しそうじゃないな。
ただのチーズだと思って食べたら驚くぞ?
「あまーーーーい!!」
「ふわぁぁぁあ!!」
2人とも良いリアクションだ。
聖奈さんはもちろんカメラを連写している。
「うん。美味いな!」
「良かった。セイくんが前に好きだって言っていたから、今日はチーズケーキにしたんだよ」
おお!ありがてぇ。
なんかサービスいいから怖いけど、いいんだ。今が幸せなら。
こうして、クリスマスを無事に乗り切った俺達は年末を迎える。
社会人として、初めての年越しだ。らしいことは何もしていないけれど・・・
〓〓〓〓〓〓〓〓小話〓〓〓〓〓〓〓〓
ミレーユ「ありがとう!お兄ちゃん大好き!!」
バーン「おい。まさか末娘にまで手を出すんじゃないだろうな?!」
ミラン「お父さんのバカ!私はまだ手を出されていないよ!!」
ミラン母「あらあら。もう少しで息子が増えるのかしらねぇ」
バーン「な、なんだと…」
聖奈「大丈夫ですよ!私がちゃんと見てますので」
聖(あんた写真撮ってるだけじゃん…)
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