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あれはまだ小さかった頃、唐澤貴洋は父の産む卵が大好きだった。毎朝起きると父の元へ行き、卵はあるかと尋ねる。

すると決まって父洋は「ありゅよ!」と答え、唐澤貴洋の手にまだほのかに温かな産みたて卵を渡すのだった。

唐澤貴洋はそれを茹で卵、目玉焼き、卵かけご飯などさまざまな食べ方で楽しみ、気持ち良く脱糞をしてまた布団に戻る。

しかし、そんな日々もそう長くは続かなかった。弟厚史が生まれたのだ。厚史が3つになってしばらく経ったある日、事件は起きた。

この日もいつものように唐澤貴洋が父の元へ卵をもらいにいったのだが、今日は何か様子が違った。

そう、唐澤貴洋の目に飛び込んできたのは、美味しそうに洋の卵の固茹で卵を頬張る厚史の姿だった。1日1個だけの洋の卵、弟に全てを奪われた気がした。

すかさず「あれは当職の朝食用ナリ!」と唐澤貴洋は母に泣きながら言った。それに対し母は「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい。」と無情な一言を唐澤貴洋に突きつけた。

その瞬間、唐澤貴洋の尻から茶色い涙が流れ出た。

あれから10数年が経った頃、厚史はこの世を去った。早すぎる死だったと誰もがそう言って悲しんだ。

「いや、早すぎることはない。むしろ遅かった。」

そう語るのは唐澤貴洋。なぜなら、厚史が死んでから1ヶ月も経たぬうちに洋は卵を産まなくなったのだ。年をとった洋はもう卵を産める体ではなかった。

唐澤貴洋がその事実を知ったとき、尻からはあの日と同じように茶色い涙が流れた。

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