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「ご注文は?」
ルティの手に引かれ、料理屋で食事を取ることになった。注文を聞いている女主人はとても何かの末裔には見えないので、ここでの警戒は特にしないことにした。
「はいはいっ! 特製オレンジパイ!」
「じゃ、じゃあ、わらわはチョコドリンク」
「シーニャ、ドラゴンステーキがいいのだ!」
「おれはグライスエンド限定サンドで」
落ち着いて食事を取るのも久しぶりだ。
「かしこまりました」
そういえばフィーサは剣だから食事は必要無かった気がするな。それとも変に怪しまれないように頼んでみたのだろうか。
「フィーサ。チョコドリンクって聞こえたが問題無いのか?」
「別に何てことないなの。何かの液体なら何でも飲んで構わないなの」
「液体限定か。もしかして効能効果を得られるとか……」
「あの温泉に浸かってから出来るようになったなの。むふふ~なの!」
「なるほど」
神剣フィーサブロスの潜在的なスキルはどこまで上がるのか、それを聞く限りおれはまだまだ使いこなせていない。エンチャント攻撃以外にも自ら魔法を使ったと聞くし、おれは特別な武器を味方にしているようだ。
「アック様、少食なんですねぇ」
「ほどほどにしてるだけだな。予定外に差し入れがあるわけだし」
「ええっ? だ、誰からですか!?」
他に作れる奴なんていないのに何を言うかと思えば。
「ルティだ」
「……そうでした! えへへ」
「こぶし亭も気になっているしな」
「ですよねぇ! そこはお任せ下さいっ!」
ルティが作る料理の数々でおれは強さを得られている。それだけに彼女の腕前には疑問を抱かないが、シーニャはずっと首を左右に振っていてルティを全く信用していない。
おれに限っては、出会った当初から強力なドリンクを飲んだ関係で料理耐性が出来た。
◇◇
「はふぅ~……何だか久しぶりにひと息つけましたっ」
「シーニャ、物足りないのだ!」
ルティとシーニャはすぐに完食した。フィーサも器用にドリンクを得ていたようだが、問題はおれが頼んだサンドだ。
「イスティさま、難しい顔をしてどうしたなの?」
「……フィーサ。これが何に見える?」
「むむ? 何かの封書……なの。挟まれていたなの?」
「まぁな。用心深く食べていたがそういう手で来るとはな」
食べられないものを挟んでいたかと思っていたが、ここの料理屋もグルとは考えにくい。その証拠にフィーサに見せる前に燃えて消えてしまった。
「な、なんて書いてあったなの?」
「魔法文字《ルーン》だったが、中身は招待状だった。宮廷仕えの人間って書いてあったな。この先の教会で待っているらしいぞ」
「宮廷? こんな町に宮廷なんて無いはずなの。それにしても大した自信家なの! わざわざ待ち伏せを案内するなんて、気に入らないなの」
町の規模が不明だから何とも言えないが、フィーサの言うとおりここに宮廷なんて大層な人間がいるとは到底思えない。
「ここの末裔は遊びが好きなんだろ」
「どうするなの?」
「……そうだな。フィーサはガチャで引いたリキッドを使っておいてくれ。何が起きるか分からないしな。それに、この手口は派手な男のものとは別のものだ」
魔力に違和感を感じたあの男であればこういうまどろっこしい真似はしてこないはず。樹人族もそうだったが、この町にはそれぞれが単独、あるいはパーティーで動いている連中がいる。
「分かったなの」
おれに対し何をするつもりがあるのかは教会に行ってみなければ分からない。だが、その前に戦闘準備をしておく必要がある。
「もぐ……アック、どこか行くのだ?」
「えぇっ? も、もう行くんですか~!?」
「無理しなくてもここで休んでてもいいぞ。おれとフィーサは教会に行く」
せっかく楽しそうに食事しているわけだしな。
「シーニャもついて行くのだ!! シーニャ、アックと一緒! ウニャッ!」
「わ、わたしもですよ~!! それにしても何かあったんですか?」
「どうやらここは末裔の連中以外にも得体の知れない奴がいる町のようだ。そいつらと話をしに行く」
置いていくつもりは無かったがシーニャはまだ追加の肉を食べていた。ルティは少しだけまどろんで今にも眠りそうにしている。
「イスティさま。ぬりぬりしたなの!」
「よし、行くか」