【zm視点】
暗闇にいると思い出す。
A国に仕えていたときの時間を。
俺をしまっていた部屋は地下で、寒くて、人肌が恋しくて、静かで、暗くて。
だから余計に思考が巡ってしまう。
次の訓練でも怪我しちゃうかな、とか。
また怒られちゃうかな、とか。
次の人体改造はいつなのかな、痛いのは嫌だな、とか。
自由になりたいな、とか。
もっと強くなりたいな、とか。
正義ってなんなんだろう、とか。
皆、いつも俺を正義正義っていう。
俺はその言葉に見合う人物でもないし、そもそも生きてていい人間じゃない。と思う。
A国で信頼していた人にある意味裏切られ、人生を変えられて、勝手に正義を押し付けられて。
初めて誰かの正義になれたかな、なんて思ったらなにも見えなくなって、聞こえなくなって、感じられなくなって。
もうわからないんだ。
自分が何をしたいか。
生きる意味は何なのか。
なんで正義なんて言われなくちゃいけないのか。
正義の正解がなんなのか。
もう……やめて………………
刹那、どくん、ともう止まってしまうはずの左胸が大きく動いた。
それが息苦しく感じて、口で酸素を取り込む。
今まで暗闇だった目の前が白く光ったような気がして、何かが見えたような気がして、掴めそうな気がして、
必死に縋るように手を伸ばす。
でも何かには届かなくて。
さっきまで痛かった体が楽になった気がして。
交差していた思考がクリアになったみたいで。
恐怖と困惑がかき消されて。
いきなりのことにパニックになりつつも、とっくに動かなくなったはずの足を動かす。
久しぶりに地面に足がつく感覚がする。
くるりと振り返ると暗闇が広がる。
正面を見ると、また眩しい光が俺の目に飛び込む。
吸い寄せられるように俺の足は光へと進む。
後ろに引っ張られる感覚…
…足枷をつけられているような。
…手が後ろで手錠によって拘束されているような。
…太いツタが足に絡んでいるような。
…複数の手が俺を暗闇に引きずり込もうとするような。
そんな感覚が圧として背後から伝わる。
それを鍛えきった体で振り切って前に進む。
とにかく今は、暗闇にいたくない。
暗闇は十分だ。
なにも変わらなくとも、なんでもいいから
「希望に縋りたくて……でしょ??」
zm「…、え?」
声が前から飛んできたから瞬間的に顔を上げた。
いつぶりだろう。
会話をする距離で声を聞くことができたのは。
俺自身も久しぶりに発声をした。
少し掠れた声がでた。
「怖かったな。痛かったな。辛かったな。」
「お前は強いな。よく頑張った。休んでいいんだ。」
自分…なのだろうか。
茶髪に白い肌で緑色のフードを深く被った、瞳が前髪の奥から俺を刺すように見てくる男、が光の中から歩いてくる。
その男が語る、一つ一つの言葉達は、全て俺が欲しかったものだった。
今までが救われたようで、報われたようで俺の瞳が潤む。
足の力が抜けて、その場に座り込む。
潤んだ瞳からはぼろぼろと情けなく涙が流れる。
こんなの、とっくの昔に枯らしたはずなんだけど。
zm「ふッ……ぐすッ…、うぅ………ッ」
「思いっきり泣いて良い。
誰も迷惑に思わないし、誰にも迷惑をかけてない。」
男は自分の近くまで辿り着くと、ぽす、と俺の頭に大きな手を乗せて、そのまま滑らせてくれた。
じんわりと体温を取り戻していくような感覚が、溢れだす涙の量を増やした。
その涙が、心の灰を流れ落としてくれたように、自分の中に何かを見出したような気がしたのは嘘ではない。
「お前は、どうしたい?? 」
バリトンボイスが鼓膜から脳に直接響いた。
【sn視点】
翌日、zmの過呼吸があったことを総統に報告した。
gr「それならば一度、医務室の使用を控えるよう私が伝えよう。今は時期的に戦争も起こりにくいし、我が国の兵士ならば訓練での怪我も最小限にしてくれるだろう。」
sn「うん、そうしてくれると助かるわ。俺は彼が起きるまで医務室に篭もるとするかな」
gr「あぁ、了解した。
何か不足があったら伝えてくれ。私が発注しよう。
そして、くれぐれも健康には気をつけてくれ。」
sn「ふん、舐めないでもらいたいね笑。
俺だって一応医者なんだぞ」
gr「ふは、笑
じゃあ、頼んだ。起きたら私に連絡してくれ」
sn「はーい了解。」
なんて結論が出て、少しなんてことない会話をして。
大きくて重い扉を開ける。
時刻は昼頃になり、食堂からは幹部達の声が賑やかな聞こえてくる。
俺の分の昼食をもらって、食堂では食べずにそのまま医務室に向かう。
コツコツと俺の足音が響く、白くて色のない、廊下を進む。
もう少しで医務室につく。
sn「…ッ!!!」
近づくとより一層音が大きく響く。
いつもは音のないこの廊下が、少しカタカタという音が反響しているのは、自分の鼓動や足音のせいではない。
彼はまだ闘っているのか。
一体何と葛藤しているのか。
ひとまず俺は急いで医務室に向かうことだ。
ガラッ
医務室のドアを開けると、zmは頬は赤く染まらせ、少し汗ばんで、息を荒くしていた。
息苦しかったのか、はたまた彼の意識の中で何かと葛藤しているのか。
俺にはわからないが、体をガタガタと揺らし、その振動でベッドがカタカタと揺れていた。
発熱か。
解熱剤を含んだ点滴を引き出しから取り出し、zmに繋がっていた点滴と取り替える。
水で濡らしたタオルを持ってきて汗を拭ってやる。
冷えぴたを貼ってやると特有の気持ち悪さからか、冷たさからか、幾らか顔をしかめた。
それが俺にはどうも可笑しくて、愛おしくて、くすりと笑う。
外の感覚が顔に出たということは、意識がだんだんと浮上してきているということ。
がんばれ、もうすぐや。
【zm視点】
zm「お、れ…?俺は何をしたいか??」
「うん。」
座り込んだ俺を覗き込むようにして、男もしゃがみこみ、顔を見て言葉を噛み締めるように会話をしてくれる。
まだ頭に温かい手が乗っている。
心地よく感じて、とても落ち着く。
ずっと寂しかった心の隙間を埋めてくれるようで、俺の心が素直に言葉になる。
zm「…おれ、ずっと独りで、寂しくて、暗くて、痛くて、辛くて、苦しくて。
ずっと自由になりたくて、もっと強くなりたくて。」
zm「でも、その方法なんてわからなかってん。
今も、その正解がわからへん。」
「そっか。
…なら、問い方を変えてみよう。」
男はその一言を言い終わると突然すっと立ち上がり、俺をまっすぐと見つめた。
「意識を失う前、何を見た?何を聞いた?何を考えた?」
zm「なに、を…?」
「ゆっくりでいい。少しずつでいい、聞かせて。」
zm「最後…は……」
確か…岩?、
いや、違う。
ナイフを奪って、刺して、草が染まっていって。
それから、俺が倒れて。
それで……
zm「エ、em??が、泣いて、るのが見え、て?
…それで、」
音…は、
ザクって、腕の筋繊維を刺された音、じゃなくて、
えっと…、
zm「バイクとか…車?の、音が遠くから聞こえて…」
zm「それで……」
「……それで??」
zm「それで…。
な、仲間になりたいなって、思、った。」
そういうと男は満足そうな顔で
「それが聞きたかったんだ。」
と言って俺の目の前に右手を差し出した。
その行動に息が詰まる。
これは、A国総統に勧誘されたときと同じ。
どうか、この先を言わないでくれ。
そう願うが、男は止まらない。
口を開くのがスローで見える。
そして、
「zm。この手を握って、もうちょっと生きてみない?」
zm「はッ……はひゅ、ッ」
呼吸が浅くなる。
それでも、淡々と男は話を続ける。
「お前は先程、正解がわからない、と言ったけど」
「…もうでてるんじゃない?
何をしたいのか、何が正解か。」
なにが…正解か、おれがわかってる??
「お前を欲してくれる人がいる。
だから、お前を生かそうと頑張った人がいる。
まだ、お前は生きている。」
「ここで負けたら、未来の仲間が悲しむぜ??」
未来、の、仲間…
俺を、必要として…くれてる?
「彼らは間違えない。
お前が嫌がることは決してしないし、お前の望むことを自由にできる。」
自由に…!
望むことを…!!
わかった。
前に進むよ。
男の手を取ると、
「ふふ、笑
お前なら手を取ってくれると思った。」
そう言って、ぐいと手を引っ張り、温かく抱擁した。
まぶたが重くなって、抵抗することなく目をつぶる、その最中で男は言った。
「…僕は過去のお前だ。
お前は自我を押し殺したやろ?
その時に殺された、僕だよ。」
「大丈夫。別に恨んでないし、恨む必要もない。
僕はお前なんだから。」
「僕を信じろ。
正義の答えも、きっとみつかってる。」
意識が白い光の中に沈んでいった。
目が開くと、体は動かなかったが、耳や鼻、目に久しぶりの色々な情報が飛び込んでくる。
外で風が吹いていたり、小鳥が鳴いている音。
つーんとする薬品の匂い。
神、と書かれた布面をつけた、水色髪の男が棚の整理を行っている。
「あ゛、ぅ゛」
久しぶりの発声に音はあまり伴っていなかったが、音の少ない部屋にはよく響くもので
男にその空気の振動が届いた。
「あ?
…あァァァあああああああッ!!!!!」
「起きたァァァァァ!!!!!」
大声に耳がキーンとするが、あまりに嬉しそうな表情で駆け寄ってくるから、悪い気はしなかった。
「起きた起きた!!!偉いね、頑張ったんだねェッ!!!!!」
彼もまた、意識の中で出会った僕のように、
僕の頭を撫で始めた。
彼を見ると、潤んだ瞳と目があった。
ふふん。
はい。2週間ぶりですねみなさん。
うーん。やっぱり、保存ボタンを押さないでアプリを閉じることはだめだよね。
うぅん。
そうです。
一回全部消えたんだよ🤨👊🏻👊🏻👊🏻👊🏻👊🏻
そろ学ばない女から卒業したいですね。
コメント
8件