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「……そいつさ」
ピザを持ったまま、ぽつりと続ける。
「多分、バカだったんだよ」
小さく笑う。
「無駄に明るくてさ、空気読まねぇで――」
言いながら。
少しだけ、目が細くなる。
「……でも」
指先が、ほんのわずかに止まる。
「一緒にいると、楽だった」
静かな声。
「何も考えなくていいっていうか……」
言葉を探す。
「……あぁ」
小さく頷く。
「“普通”でいられた」
その言葉が、落ちる。
部屋の空気が、ほんの少し変わる。
「……」
ノスフェラトゥは、無言。
だが。
視線が、わずかに下がる。
「……今思うと」
pizza guyは気づかないまま、続ける。
「そいつがいたから、やれてたのかもな」
笑う。
ほんの少し、懐かしそうに。
「ピザ屋も、なんもかんも」
――その瞬間。
「……」
空気が、冷える。
ほんの一瞬。
だが確かに。
「……なんだ」
気づく。
違和感。
ノスフェラトゥの視線。
さっきまでと、違う。
「……別に」
低く、返る。
だが。
その声は、わずかに硬い。
「……」
沈黙。
pizza guyは眉をひそめる。
「……なんか言えよ」
軽く突く。
「いつもより静かだぞ」
「……」
数秒の間。
そして。
「……それは」
ゆっくりと、言葉を選ぶように。
「お前にとって、必要な存在だったのだろう」
淡々とした言い方。
だが。
どこか、距離がある。
「……まぁな」
あっさり返す。
「だから思い出してぇんだよ」
それは、本音。
迷いのない言葉。
「……」
その一言で。
ノスフェラトゥの指が、わずかに止まる。
ほんの一瞬。
気づかないほどの変化。
「……」
視線が、ピザに落ちる。
だが。
焦点は、そこにない。
「……」
――不要な感情だ。
頭では、分かっている。
あれは“過去”。
ただの記憶。
ただの、人間のつながり。
それなのに。
「……」
胸の奥に、微かな違和感。
掴めない。
だが、消えない。
「……どうした?」
不意に声がかかる。
顔を上げる。
pizza guyが見ている。
少し不思議そうに。
「……何でもない」
即答。
だが。
ほんのわずかに、遅れた。
「……ふーん」
疑っている。
だが、深くは追わない。
「……」
また、静かな食事に戻る。
だが。
さっきまでの空気とは違う。
少しだけ、距離がある。
目に見えない壁のような。
「……」
pizza guyは、ピザを一口かじる。
そして、ふと。
「……なぁ」
「なんだ」
「そのうちさ」
軽く言う。
「思い出したら、そいつの話ちゃんとするわ」
無意識だった。
ただ、共有しようとしただけ。
だが――
「……」
ノスフェラトゥの瞳が、わずかに揺れる。
「……必要ない」
短く、切るように。
「は?」
予想外の返答。
「……過去だ」
低く。
「価値はない」
「……おい」
少しだけ、眉をひそめる。
「さっきと言ってること違くねぇか?」
「……」
答えない。
だが。
それ以上、何も言わない。
沈黙。
重い。
「……なんだよ」
小さく呟く。
「急に」
違和感。
さっきまでと違う態度。
その理由は――
分からない。
だが。
ひとつだけ、確かなことがある。
「……」
ノスフェラトゥは、視線を逸らしたまま。
ピザを、もう一口食べた。
その味を確かめるように。
――まるで、何かを誤魔化すように。
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