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※この作品には(多分)全体的に不快と思わせる部分や、ショッキングな表現がされています。検索してはいけない言葉オールスターと合コンしてる様な感覚になるので合コンが苦手な方は逃げて下さい。
やがて耐えられなくなった私は、
ぐちゃぐちゃになった髪を押さえて、
お母様の部屋に逃げるように行った。
今まではお母様に心配させたくなくて、
この傷を見せまいと、お母様の部屋には行かなかった。
四枚の襖、その真ん中を開く。
広い部屋の割に少ない家具、
日の光など入らず、いつも暗い。
その中心にある布団。
そこにたった一人、お母様は佇んでいた。
布団の上に座り、襖が開いた事に気付いたお母様は
こちらに向かって微笑み掛けた。
「あら、
お久し振り。元気?」
「…………。」
「まぁ、そうだろうね。
悪かったね。おいで。」
そう言ってお母様は、こちらへ手招いた。
私は久し振りに会ったお母様の声を聞いて
感化され、いつの間にか、泣いていた。
「うんうん、大丈夫。
怖かったろう。痛かっただろう。」
お母様は私を抱き締めて、私の髪を梳く様に撫でた。
「よーしよし、いい子だね。
もう大丈夫さ。怖くなったら、
母様の所へおいで。
此処では泣いて良いんだよ。」
お母様は病気の症状で目が見えない。
その為、お母様は目を包帯で隠しているが、
私を見るお母様からはよく表情が読み取れる。
「…うん、ありがとう…お母様…
……愛していますわ。」
「…!
…ああ、私も…、私もだよ…!
愛してる…この世の何よりも愛してる さ…!」
正直、何を愛して、何に愛されたらいいのか、
よく判らない。
でも今は、このままがいいと思った。
此処を離れたくないよ。
ねぇ
誰でもいい
愛して
愛して
愛して
もっと…もっと…
なんとなく落ち着いた私は部屋に戻った。
明るくも暗くもない、軟禁制の部屋。
出られない訳じゃない。
出たくさせないんだ。
私がこの部屋から出れば、
あの人の理想絵図、
私の地獄絵図が広がる。
そんなの見たい筈がない。
女中達の殆どがここから逃げない理由は
名誉の為だろう。
それか、完全に狂ってる人種か。
人の不幸を愉しむものか。
そんな目で見ないで
私は生きたいだけ
誰かに愛を貰いたいだけ…
だけ…?
愛は
どのくらい重い?
愛を貰うのは難しい事?
愛って何?
誰か教えてよ…
────────
ある日の事、
…お母様から櫛を貰った。
黒漆に金色の花の模様が入った
扇型の綺麗な櫛。
「辛くて、部屋から出られない時は
これを使って」
と。
それから私は毎日、
狂ったように髪をずっと梳き続けた。
髪を梳いている時は、全てを忘れられる。
二度と誰にも迷惑を掛けたくない。
髪は引っ掛からず、滑らかに流れていく。
傷付けられるよりも
髪が伸びていくのが楽しかった。
やがて私の髪は、
腰より下に、長く伸びていった、
もう、この髪は、絶対に切りたくない。
…と、
白昼夢から意識を離す。
……この長さ、
あの日だ。
覚えてる。
忘れる筈がない。
白昼夢から目覚める瞬間、
開いた襖から声が聞こえた。