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おまる
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出張から戻った翌週
営業部に新たな取引先の担当者が挨拶に訪れた。
大手広告代理店の若手エリート、成瀬。
彼は私の仕事ぶりに感銘を受けたと言い
打ち合わせが終わるやいなや、私に個人的な誘いをかけてきた。
「佐藤課長、次のプロジェクトの打ち合わせを兼ねて、今夜ディナーでもいかがですか?課長のような素晴らしい女性と、もっと深いお話がしたい」
成瀬は私の手を取ろうとするほど距離が近く
その自信に満ちた笑みに、私はかつてのトラウマが微かに疼くのを感じて身を引いた。
「……申し訳ありません。プライベートな時間は、すでに予定が埋まっておりますので」
私は丁寧に、けれど明確に断った。
その様子を、デスクで資料を整理していた瞬くんが
凍りつくような冷ややかな目で見つめていることに気づき、背筋が凍った。
成瀬が去った後、オフィスは静まり返っていた。
瞬くんは何事もなかったかのように仕事を続けていたが、そのペンを握る指先には、白くなるほど力がこもっていた。
その日の夜のオフィスにて
「……っ、瞬、くん……?」
突然、瞬くんに壁ドンなるものをされ困惑する私
「『深いお話』、したいそうですよ。あいつ」
瞬くんの声は、聞いたこともないほど低く
怒りと独占欲で濁っていた。
彼は私の両手首を頭上で片手で押さえつけ、逃げ場を奪う。
「……俺は余裕を装うって決めてたんです。凛さんの仕事の邪魔はしたくないって。…でも、あんな風に、あんたに馴れ馴れしく触れようとする奴を見たら……頭がどうかなりそうだった」
「……ただの仕事よ。私はちゃんと断ったわ」
「断っても、あいつはあんたの『女』の顔を見てた。……それが許せない」
彼は私の首筋に深く、噛み付くように顔を埋めた。
痛いほどの吸い付き。
明日、確実に隠しきれないほどの跡が刻まれる。
「…今夜は、俺以外の男のこと、一瞬でも考えられないようにしてないと……仕事のことだって」
「…あ、っ、しゅん、……っ」
彼は強引に私の唇を奪い、理性を焼き尽くすようなキスを落とした。
いつもならあるはずの「上司への気遣い」はどこにもない。
そこにいるのは、愛する女を他の男に奪われそうになった、飢えた一匹の獣だった。
私は彼の激しい鼓動を感じながら
その独占欲の深さに恐怖よりも、どうしようもないほどの甘い悦びを感じていた。