コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
先輩は…死と共にいる。
いつ消えてもおかしくない流星のような儚くて残酷な命が瞬いて、消えた。
どうしようもない不安で眠れない日々が続いても、心は眠りを求めてなどいなかった。
考えることすら何処か億劫に感じて導かれるように部屋から玄関、玄関から海岸へ足を運ぶ。
特段気にしていない服装は薄くて寒気を感じたが全てが今更だった。
海岸に着けば先客がそこに、居た。
「先輩…?」
どうしてそこに。そう口に出る前に先輩は奥へ奥へ消えていく。
その姿は誰かに導かれているようで何故か自分は見惚れていた。
波に膝下が浸かる位置まで歩いた先輩は、急に振り返って自分に手を振った。
───その瞬間、夢が醒めた
血が引いてゾッとするような恐怖を感じて足が竦む。動かない。どうして、どうしてだ。どうして動いてくれないんだ。
行かないで、先輩。
追いかけるように砂浜を走る。あの時、波に攫われた先輩が戻る事はなかった。
嫌いだ。全部。自分も、世界も…何もかも。
海水は冷たくて涙のようだった。
BADEND「手がすり抜ける」