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甘野芣婭 (17歳)
ギルベルト君とコンラット、ガゼルっちの相手をしていて、巨大な蜘蛛は芣婭が杖を向けてる事に気付いていない。
「死ねぇぇぇえ!!!」
ビュンッ!!!
巨大な蜘蛛は叫びながら巨大な足でギルベルト君達の事を踏みつけようとするが、3人は軽々と攻撃を避け、元気になったガゼルっちは高く飛ぶと巨大な蜘蛛の顔に蹴りをいれる。
ブンッ、ドカッ!!!
ガゼルっちに顔を蹴られた巨大な蜘蛛の体が大きく揺れ、つかさずコンラットが剣を振り下ろして蜘蛛の足を数本斬り落とした。
シュンッ、ブシャアアアッ!!!
「グアアアアッ!!!」
斬られた傷口から血が噴き出して苦痛の声を上げるが、グチュグチュッと音を立てなながら傷口から足の骨と筋肉、皮膚も再生を始めるが、再生を止めるかのように足が氷が纏われる。
ギルベルト君の足元に青色の魔法陣の中から氷柱達が現れ、一斉に巨大な蜘蛛に向かって飛んで行く。
シュシュシュッ!!!
グサグサッ!!!
放たれた氷柱達から巨大な蜘蛛の事を守るように、小さい蜘蛛達が巨大な蜘蛛の前に集まって守るように固まり、代わりに氷柱に刺された。
「悪魔はねぇ、傷の治りが早いんだよ。それが上位悪魔なら、もっと早くなる。僕の蜘蛛達は僕に従順で、騎士のように守ってくれる」
「巨力な一撃をやれば、奴に重傷を負わせる事が出来ますね」
「俺の芣婭の事を狙っている悪魔を野放しにする訳にはいかない。コンラット、お前は悪魔の相手をしろ。俺が奴の体に魔法を喰らわす」
「承知しました、ギルベルト様」
ギルベルト君から命令を受けたコンラットの動きは早く、巨大な蜘蛛の前にいた小さな蜘蛛達を斬り捨て、巨大な蜘蛛の体に剣を突き刺し、体の至る部分を斬り始める。
負った傷を早く治す事が出来るが苦痛を感じない訳じゃない、大きな悲鳴声を聞いているだけで耳が痛くなってしまう。
ケロちゃんとベロちゃん、フルフルの3人なんて、崩れた物置の木の壁に腰を降ろし、どこから出したのか分からないティーカップを持ってお茶会を開催してるし。
「おーい、芣婭!お前もこっちでお茶にしないか?バエルの相手は、アイツ等に任せてさ」
そんな事を考えながら3人の事を見ていると、芣婭の視線に気がついたベロちゃんが笑顔で手招きをしてきた。
「ううん、今はお茶しないよ。それに、今から芣婭は魔法を使うんだから!」
「「はい?」」
芣婭の言葉を聞いたケロちゃんとベロちゃんの声が重なり、持っていたティーカップを投げ捨てて芣婭の側までやって来る。
「お前、あの獣人の野郎に魔性の女を使ったんだろ?あれは血も魔力も結構減っちまうんだよ。意識を失ったのだって、魔性の女を使った反だ。今の芣婭の体に魔力は残ってないだろ」
「え、そなの⁉じゃあ、絶好のチャンスなのに魔法使えないの⁉」
「魔法が使いたいなら、俺の魔力を分けてあげますよ」
ベロちゃんと芣婭が話していると、ベロちゃんはそう言って芣婭の額に口付けをした。
チュッと唇が触れた瞬間に体の中に何かが流れ込んでくる感覚がし、お風呂上りみたいに体の中ぽかぽかして、不思議な感覚。
「あ、テメェ!何、勝手に芣婭の額にキスしてんだ⁉」
「何って、俺の魔力を分けてあげたんですよ。魔力を提供する時は体のどこかに、口付けをしないといけないじゃないですか。何、怒ってるんです?貴方」
「話の流れ的に、俺が芣婭に魔力を分けるのが分からなかったのか⁉」
「はぁ、貴方の話が長くなりそうだったので、俺がしただけです。さぁ、こんな奴はほっといて魔法を使ってみてください」
ケロちゃんはベロちゃんとの会話を一方的に終わらせ、芣婭の体を抱き上げて地面に立たせてくれる。
芣婭が倒れないようにしっかり支えてくれて、ベロちゃんは気に入らなさそうにケロちゃんの事を睨んでいた。
今なら魔法を放てる絶好のチャンス!
えーと、シーちゃんが教えてくれた呪文はこうだったよね?
「闇撃!」
大声でそう言うと杖の先に紫色の魔法陣が出現し、紫色の小さな球体がどんどん大きくなり、一瞬で巨大な蜘蛛の元まで飛んでった所までは良い。
あー、飛んでってくれて良かったー。
なるほど、魔法ってこんな感じなのかー。
のほほーんとしたものなのかなって思ってたんだけど、放たれた紫色の玉が優しく巨大な蜘蛛の体に触れた瞬間、体の半分が吹き飛ばされる。
ボォォンッ!!!
ブシャアアアッ!!!
吹き飛ばされた衝撃で血肉があちこちに飛び散り、噴き出した血液は建物にバケツの水をひっくり返したように思いっきりかかった。
「「「…え?」」」
芣婭とシーちゃん、ゼパ君の3人は同じ顔をして、同じ反応で、同じ言葉が重なってしまい、あんな小さな球に物凄い威力のあるものを生み出してしまったようだ。
「「「「…え?」」」
同じ反応していたのは芣婭達だけではなく、ギルベルト君達も同じ顔して同じ言葉をしているのを見て苦笑いしてしまう。
巨大な蜘蛛の傷口がさっきみたいに再生を始めず、ボタボタと音を立てながら地面に血が垂れ落ちる。
「い、今のって芣婭がやったのか?お、俺の見間違いじゃなければだが…」
「撃ったのはね?芣婭なんだけど…、ケロちゃんに魔力を分けてもらったの。え、威力ヤバくいない?」
「これは、ヤバイって言葉では片付けられないな…」
ギルベルト君の途に答えると、隣で聞いていたコンラットは苦笑しながら頬を掻いていると、ベロちゃんがケロちゃんに声をかけていた。
「お前、どんだけ芣婭に魔力を分けたんだよ…」
「どれだけって言われましても、バエルの体を破壊できるだけの魔力ですけど」
「じゃあ、半分だけか。もっとやったのかと思ってたが、そうでもなかったな」
ケロちゃんの言葉を聞いたベロちゃんは、途中から興味がなくなったのか眠そうに欠伸をしている。
今回はケロちゃんに魔力を分けて貰って魔法を使えた
けど、もっと他の魔法も使ってみたくなったな。
お家に帰ったら、パパに教えて貰おうかなぁ。
「ア、アンタ、何なの⁉」
いつの間にか人に姿に戻ったバエルは大怪我を負った状態で、キッと芣婭の事を睨みつけて言葉を吐く。
「怪我の治りが遅いんじゃねーか?バエル」
「アンタ等のどっちかが、あの女に魔力を分けたんでしょ⁉悪魔同士の戦いでも、傷は早く治るもの、だけど、何で?何で、今回は怪我が治らないの」
「いやぁ、それは芣婭に聞かれて分からないって言うか…」
「お姫様の血を飲めば治るもんね、だからアスタロト様に渡す前に飲ませて!」
ダンッ!!!
ゴスロリ少女がそう言って、ギルベルト君とコンラットの足元をすり抜けて芣婭の元に向かって来るのが見えた。
四つん這いの体勢のまま腰に生えている尻尾だけが早く動き、ガゼルっちが急いでゴスロリ少女の後を追い掛けるが、ゴスロリ少女の方が早く芣婭の元に辿り着く。
「女王様の同じ顔、妹の事を隠してたって事だよね?ケルベロス」
「これ以上、近付くのは許しませんよ。お嬢様、お下がりください」
「フルフルもここにいる人間達も鬱陶しいなぁ」
ビュンッ!!!
ゴスロリ少女の言葉に反応して腰に生えている尻尾が、フーさんに向かって振り下ろされ、フーさんは杖型の剣で尻尾を受け止める。
キィィンッ!!!
剣と尻尾の先端部分がぶつかった衝撃で小さな火花が上がり、フーさんが手慣れた手付きで尻尾を斬り落とした瞬間、ゴスロリ少女はフーさんの足元を潜っていた。
斬られる事を最初から見越していたのか、尻尾を捨てる事を頭に入れていたのか分からないが、ギルベルトとコンラット、ガゼルの3人はすぐに芣婭の前に立つ。
「芣婭!」
「わっ⁉」
ギルベルト君に強く肩を抱かれ、コンラットとガゼルっちの2人は戦闘態勢に入り、ゴスロリ少女が芣婭に近寄れないようにするが予想外の事が起きる。
バサッ!!!
ゴスロリ少女の背中から悪魔の羽が生え、コンラットとガゼルっちの前で羽を羽ばたかせて頭上を飛び越えてしまう。
「えぇぇぇっ⁉そんな事ってありですか⁉羽が出て来るとは思ってもいなかったんですけど!」
「芣婭に指1本触れさせたりしない、安心しろ」
「ギルベルト君っ」
「はい、そこ!イチャイチャすんな!!!」
芣婭とギルベルト君の会話を聞いていたベロちゃんが、タイミングよくツッコミを入れて来た。
シュシュシュッ!!!
ギルベルト君の足元に再び青色の魔法陣が現れ、形成された氷柱達がゴスロリ少女の元に向かって飛ばされるが、羽を自由自在に操って氷柱を避けて行く。
羽を強く羽ばたかせて勢いをつけたバエルは芣婭の事しか見ていなく、芣婭の方に向かって手を伸ばして向かって来た時、背後から甘いバニラの匂いが鼻を通った。
あ、この匂い、どこかで嗅いだ事があるような…。
そんな事を考えていると誰かに後ろから顎を触られ、細長い指で顔を上げさせられ、芣婭に視界に入ったのはバフォさん。
「え⁉バフォさん⁉」
「ボス⁉」
突然、現れたバフォさんの姿を見て芣婭とフーさんの声が重なる。
「やぁ、お姫様。どうなったか気になってきてみたら、俺の出した試験を合格したようだね」
「試験?え、合格したの?いつ?バフォさんの前に連れてきてないよね?」
「たった今、俺の目の前に連れてきてくれたじゃないか」
「バフォメット!!!邪魔なんだよ、その子は僕達のモノだぁぁぁぁ!!!」
ゴスロリ少女は物凄く怖い顔をして、バフォさんの事睨み付けているが当の本人は全く気にしていない様子で、なんならゴスロリ少女の反応を面白がっていた。
あれー?もしかしてバフォさんって、物凄ーく性格が悪いのではありませんか?
「退け、バフォメットッ!!!」
「退くのは貴様だ、バエル」
「っ⁉」
「奈落」
バフォさんが呪文を唱えた瞬間、ゴスロリ少女の体がピタッと動かなくなってしまい、背後に大きな黒い穴が空間にでき、中から出てきたのは灰色の手達がゴスロリ少女の体を掴む。
ガシッ!!!
「なっ⁉何、こ…」
ボキッと何かが折れる音が聞こえ、何が折れたのか気になって見ようとしたんだけど、ギルベルト君に手で目隠しをされてしまう。
あれ、これもデジャブ…?
ボキッ、ボキッ、ボキッ!!!
「ギャアアアッ!!!痛いっ、痛いぃぃぃっ!!!」
見えなくれもゴスロリ少女が何をされているのか分かる、きっと羽とか腕か足の骨でも折られていて、むちゃくちゃ痛がってるんだろうなって。
あのちょっと怖い手で体を掴まれていたし、その手が何かしてるんだよね?
「アンタ、今の技は上位闇魔法の1種だろ」
「おや?もしかして、君も闇属性?氷属性だと思ってたけど、2つ属性持ちか。へー、本当にいるんだな。
お姫様の目を塞いでる見たいだけど、刺激が強かったかな?」
「強すぎるから、こうして芣婭の目を塞いでるんだろ」
「王子様がお姫様の可愛い目を塞いでいるんだから、汚い物を見なくて済むし良いだろ?良いタイミングで来れて良かったな」
ギルベルト君とバフォさんが話している間に恐ろしい音が聞こえなくなると、ギルベルト君が優しく目から手を離してくれる。
自由になった視界にゴスロリ少女の姿は見なく、残っているのは地面に広がった血溜まりだけ。
「あれ?ゴスロリ少女は帰ったのかな?」
「あぁ、バエルは俺の屋敷に送ったんだ。安心して良いよ、お姫様」
「そうなんだ?あ、合格って事はあの子が薬と関係してるって事だよね?」
「お姫様の言う通り、バエルが人間と取引していた悪魔さ。俺の前に連れてきてくれたしね、悪魔召喚書は持ってきてる?」
「うん、持ってるよ」
バフォさんに言われて一応、持ってきていた腰に下げていた悪魔召喚書を取り出すと、バフォさんは悪魔召喚書を1ページ捲って手袋を外す。
綺麗なデザインのナイフを取り出しては手袋外した手の指をナイフの刃に食い込ませ、白い皮膚の上にぷくっと赤い血が傷口から溢れ、捲ったページに指を押し当てると悪魔の紋章が描かれていく。
ダンタリオン様とは違うデザインの紋章で、悪魔によって紋章のデザインは違うんだなぁ。
「頑張ったお姫様には、ご褒美を上げないとね?お疲れ様、お姫様」
「バフォさん、ありがと!」
「それじゃあ、俺はアイツから話を聞き出さないといけないから魔界に戻るよ。フルフル、行くぞ」
「かしこまりました、ボス」
バフォさんに呼ばれたフーさんはすぐに駆け寄り、2人は一瞬で芣婭達の目の前から姿を消すと、ヒューズ達がこっちに向かって走って来るのが見えた。
「芣婭!!!」
「芣婭ちゃーん、ギルベルト様ー!!!」
「パパ、ヒューズ!」
「無事だったかい⁉怪我はしてないかいって…、怪我してるじゃないか!!!」
ヒューズと一緒に駆け寄って来たパパは、腕に残された噛み痕を見て、思いっきり顔を真っ青にさせていく。
「ちょっ、パパ大丈夫?顔が真っ青だけど」
「それはこちらの台詞だよ、芣婭!あぁ、可哀そうに…っ、すぐ魔法を使って傷を塞ぐから」
「申し訳ございません、公爵」
芣婭とパパの会話を聞いていたガゼルっちがパパに向かって深く頭を下げ、謝罪の意を示す。
ガゼルっちの突然の行動に一瞬だけ驚いていたけど、パパはキリッと顔つきを変えてガゼルっちに声をかけた。
「君の傷が治っていると言う事は、娘の血を飲んで治ったって事で間違いはないね?」
「はい、公爵の言う通りでございます。彼女の優しさに甘えてしてしまいました。大事な御令嬢の体を傷つけてしまいました、いかなる罰でも受けるつもりです」
「公爵様っ、僕も悪いんですっ!僕がちゃんと止められなかったから、お姉ちゃんの体を傷つけてしまいましたっ。だからっ、罰を受けるなら僕も受けますっ」
ゼパ君は泣きそうな顔をしながらパパの足に抱きつき、ガゼルっちと一緒になって深く頭を下げる。
ギルベルト君が芣婭の肩を抱いたまま、ガゼルっちとゼパ君の元に向かい、ガゼルっちの肩を叩いて顔を上げさせた瞬間、ギルベルト君がガゼルっちの頬を平手打ちする。
パシンッ!!!
「うわっ、痛そー」
「おい。ヒューズ。こういう時は静かにしてろ」
「ムグッ⁉」
ヒューズの口を慌ててコンラットが抑え、芣婭達と距離を取って後方から事態がどう動いて行くのかを見るようだ。
芣婭はギルベルト君の隣にいるから、むちゃくちゃドキドキしながらガゼルっちとギルベルト君の2人を交互に見つめる。
マジで、どうなるの⁉
ガゼルっち、ギルベルト君に叩かれちゃったし、緊張してきたんですけど…!!!
「公爵、コイツと芣婭を2人きりにさせてしまったのは自分です。芣婭の体を傷つけてしまったのも自分、この責任は俺に取らせて下さい」
「えっ⁉ギルベルト様がっ?そんな僕は大事にするつもりはありませんよっ?」
「いえ、ガゼルの気持ちも汲み取ってやる必要があります。暫く、この2人にはうちの団の寮で監視させてもらいます」
「黒騎士団の団員寮ですか?」
「はい、常に騎士達が側にいる環境ですから、芣婭の血を目当てに逃げ出そうとしても簡単には逃げられませんし。1番は俺の監視下に置いておきたいってのもあります」
ギルベルト君の話を聞いていたパパは暫く考えた後、芣婭の方に視線を向けて頭を優しく撫で始めた。
「パパ?」
「ギルベルト様の話を聞いて、芣婭はどう思ったんだ?君が決めなさい」
「芣婭が決めて良いの?パパが決めた方がよくない?そうでもない?」
こう言うのって、大人の人が決めると思ってたけど、芣婭に委ねてくれる感じ?
「僕が決めても良いんだけど、2人は君の方には心を開いている。何より、僕よりも君の口から聞きたいと思うよ?そうですよね?ギルベルト様」
パパに声を掛けられたギルベルト君は頷きながら、パパと同じように視線を向ける。
「そうですね、俺もそう思います。芣婭、お前が決めてくれるか?」
「え⁉う、うーん、大事な決断とかした事がないんだけどなぁ…。ガゼルっちに血を吸ってって言ったのは芣婭なの、ガゼルっちは自分の腕を噛んで芣婭の事を噛まないように我慢してくれたの」
「芣婭はガゼルの傷を治してやりたかったんだよな?」
「うん、芣婭の事を怪物から守ってくれたから。すっごく苦しそうだったから、治してあげたかったの。2人を離れさせたくないし、安全な所にいてくれると助かるかな」
「分かった、俺達はアンタの申し出を受けるよ」
芣婭はそう言うと、ガゼルっちはあっさりとギルベルト君の申し出を了承し、ギルベルト君はコンラットとヒューズの事を手招きした。
2人はすぐにギルベルト君の元に向かい、軽く頭を下げるとガゼルっちとゼパ君の事を2人の前に出す。
「この2人を今日から俺の監視下に置く、黒騎士団の団員寮に住ませてやれ」
「かしこまりました。ですが、他の奴隷達と一緒にファントムウルフに送らなくてよろしかったのですか?」
「おい、聞かれてるぞ。さっさと答えろ」
ヒューズの問いかけを聞いたギルベルト君に答えるように急かされたガゼルっちは、顔だけ芣婭の方に向けながら口を開く。
「俺はまだ、芣婭に恩を返せていない。守るって約束も果たせていない状況の中で、母国に帰るつもりはない。だが、ゼパだけは国に送ってくれると…」
「僕はガゼルと一緒にいるよ!帰らないから!」
「…だそうだ」
ゼパ君が力強い言葉を吐きながら、ガゼルっちの前に出た姿を微笑ましそうに見つめ、隣にいるヒューズに指示をする。
「分かった、お前達は俺達と一緒に来てくれ。ヒューズ、2人の事を頼む」
「了解です、団長。はーい、2人共!こっちに来てねー」
コンラットから指示を受けたヒューズはガゼルっちとゼパ君の事を連れて、どこかに行ってしまい、コンラットがギルベルト君の耳の側で何かを囁いてた。
雰囲気からして、お仕事の話っぽい。
「芣婭、馬車まで見送るから公爵と一緒に帰ってくれるか?」
「一緒に帰れない感じ…、だよね。分かった、パパと帰るね」
仕事だって分かってる、きっと保護した奴隷達を母国?に送ってあげるみたいな話もしてたし。
だけど、今日はギルベルト君と離れたくないって思ってしまう。
ずっと側にいれた訳じゃないからかな、寂しかったのかもしれない。
ギルベルト君はわがままを言っても良いよって、言ってくれたけど言いづらいし、タイミング的に今じゃないのは分かってる。
「やっぱり、今日は一緒にいよう」
「え?」
「今日はあまり一緒に入れなかっただろ?俺がいなくても、アイツ等がやってくれる」
「でも、良いの?一応、お仕事でしょ?」
「コンラット」
芣婭と話しながらギルベルト君がコンラットの名前を呼ぶと、コンラットは軽く頭を下げてからヒューズ達が歩いて行った方向に歩いて行く。
「もう夜は遅いが俺の家に泊まるか?」
「「「はい⁉」」」
ギルベルト君の言葉を聞いたケロちゃんとベロちゃん、パパの3人は大きな声を出してその場で固まってしまう。
お泊りって、文字通り泊まるって事ですよね?
「お前、泊まらせて芣婭にやらしい事するつもりだろ⁉」
「そ、それはいけませんよ⁉2人はまだ、婚姻を結んでいませんし、交際を始めて日が浅いんですから!!!」
「勿論、手を出すつもりはありませんよ。ケロべロスの2匹とシエサも連れて行きます。俺も芣婭との事は真剣です」
ベロちゃんとパパの言葉を聞いたギルベルト君は、芣婭とそんな事にならないように考えてくれていたみたい。
簡単に手を出そうとしない所も、芣婭の事を本当に大事に思ってくれている所も、芣婭のわがままを聞いてくれる所も大好き。
ギルベルト君への好きって感情が溢れ出してしまい、思わずみんながいる前でギルベルト君に抱き付いてしまう。
その光景を見たパパは、顔を真っ青にさせて倒れそうな所をシーちゃんに支えてもらい、暴れ出しそうなベロちゃんの事をケロちゃんが片手で体の動きを止める。
ギルベルト君も突然、芣婭が抱き付いたら一瞬だけ驚いた顔をするけど、すぐに背中に手を回して抱き締め返してくれる。
「芣婭、ギルベルト君と一緒にいたいから、お家に泊まる」
「分かった、今日は夜更かししよう」
そう言ってギルベルト君は腕に力を入れて、ギルベルト君は力強く芣婭の事を抱き締めた。
***
ロールベルク家の甘野芣婭の自室のテーブルの上に置かれたスマホの画面が光る。
画面に映し出されたのは、【5月15日に殺害された甘野夫妻の長男である、甘野冬馬(20歳)さんが行方不明になって一瞬間が経ちました】と書かれたニュースアプリの通知だった。
コメント
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読了しました!今回の大捜査編⑧、本当に熱かったですね…! 芣婭ちゃんが初めて魔法を放った瞬間の威力の差に、「え?」って3人で声を揃えるシーン、思わずクスッとしました。あれ、ちゃんと覚醒の予感がしてぞくぞくしましたよ。 それにしても、バフォさんがまさかあのタイミングで現れて「合格」を伝えるのは痺れました。伏線回収が鮮やかで、思わず「おおっ」と声が出ました。 そして最後のギルベルト君の「俺の家に泊まるか?」——あの場面の空気、すごく良かったです。芣婭ちゃんがみんなの前で抱きつくの、胸がぎゅっとなりました。好きな人に真剣に向き合ってくれてるのが伝わってきて、読者としてすごく温かい気持ちに。 しかも最後のスマホ通知…これは気になりますね。次回が待ち遠しいです! 百はな🍑さん、素敵な物語を届けてくださってありがとうございます。引き続き楽しみにしています🌷
耀聖(ようせい)
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