テラーノベル
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仁人side💛
スマホの画面に表示された名前に、指が止まる。
勇『今日、時間ある?』
短い一文なのに、やけに心臓がうるさい。
なんで普通に連絡してくるんだよ…
あんなことがあった後なのに…
何もなかったみたいに。
いや、違う。
あいつは、全部分かった上で来てるんだった。
勇『俺の家でデートでもどう?』
追い打ちみたいに届くメッセージ。
仁「はぁ…」
息を吐く。
断る理由なんて、いくらでもある。
距離を置くって、決めたばかりだし。
でも、迷惑かけたし…
結局、全部受け止めさせたのは自分だ。
それに…逃げてるみたいで、嫌だ。
仁『少しだけなら』
送信ボタンを押した瞬間、心臓が、嫌なほど跳ねた。
勇斗side🩷
勇「よしっ」
短くガッツポーズし、思わず笑ってしまう。
断られる可能性も普通にあったけど、来るって言ってくれた。
それだけで、十分…逃げてないってことだろ。
それが、嬉しい。
勇「今日で、ちょっとは進めるかな」
ぽつりと呟く。
無理にじゃない。
でも、もう引く気もない。
落とすって決めたから。
仁人side💛
カチ、と鍵が回る音が、やけに大きく響いた。
ゆっくりとドアを開けて、中に入る。
仁「お邪魔しまぁす…」
小さく呟いた声が、誰もいない部屋に溶けていく。
今手に持っている、この鍵。
前に「いつでも来ていいから」って、軽く笑いながら渡されたもの。
その時は、メンバーの家に行く、っていう感覚で、深く考えたことなんてなかった。
でも、今は違う。
同じ鍵なのに、同じ場所なのに、意味が、変わってしまっている。
玄関のドアを閉めた瞬間、ふわっと、空気が触れる。
仁「……っ」
思わず、息が止まる。
勇斗の、匂い。
前に来た時も、同じはずなのに、あの時は、こんなふうに意識したことなかった。
ただ意外と綺麗にしてるとか、物が多いなとか、そんなことしか思ってなかったのに。
今は、一歩踏み出すだけで、全部が、あいつに繋がる。
ソファ、テーブル、置いてある服、空気。
全部に、気配が残ってる気がして…
仁「無理……」
ぽつりと漏れる。
心臓が、うるさい。
ただ部屋に入っただけなのに、あの距離も、あの声も、全部一気に蘇ってくる。
意識、すんなよ…
自分に言い聞かせる。
でも、無理に決まっている。
靴を脱いで、ゆっくり中に上がる。
床に触れる感覚すら、どこか落ち着かない。
ふと、視線がソファに落ちる。
ここ、座ってたよな…
前に来た時、 普通に隣に座って、なんでもない話して、笑って…
それだけだったのに。
今、その距離を思い出すだけで、妙に、近く感じてしまう。
仁「ふぅぅ…」
深く息を吐く。
だめだ。
全部、意識しすぎてる。
分かってるのに、止まらない。
無意識に、袖を握る。
こんなの、ただのデート…だろ。
なのに、なんでこんな…
期待してるみたいで。
そんな自分が、一番、嫌だ。
その時、奥の方から物音がした。
ガチャ、とドアが開く音。
勇「あれっ来てた?」
聞き慣れた声に、心臓が跳ねる。
振り向くのが、一瞬、怖くなる。
でも、ゆっくり、顔を上げる。
仁「今、来た」
声が、少しだけ掠れた。
視線が、合う。
勇斗は、いつも通りの顔で、でも、どこか少しだけ、嬉しそうに笑っていて。
勇「ちゃんと使ってくれてるじゃん、合鍵」
軽く言う。
その一言で、また、胸の奥が熱くなる。
仁「別に」
視線を逸らす。
でも、その手は、まだ少しだけ震えていて、 勇斗はそれに気づいてるのか、いないのか、 ゆっくり近づいてくる。
勇「緊張してんの?」
少しだけ、からかうように。
仁「してねぇよ…」
即答するけど、声に説得力はない。
距離が、縮まる。
勇「顔、赤いけど?」
覗き込まれる。
仁「うっさい…///」
逃げるように顔を逸らすけど、その距離の近さに、余計に意識が集中する。
もう、前と同じではいられない。
それだけが、 はっきり分かってしまっていた。
勇「とりあえず座ってよ、立ったままだと落ち着かないでしょ」
そう言って勇斗が軽く笑う。
その笑顔があまりに自然で、さっきまで自分だけが玄関で息を詰めていたことが、少し馬鹿みたいに思えた。
仁「おう」
短く返して、ソファに腰掛ける。
勇「なんか飲む?」
キッチンへ向かいながら勇斗が振り返る。
仁「なんでもいい」
勇「なんでもいいが一番困るやつな笑」
そう言って笑う声が、やけに優しい。
少しして、勇斗がグラスを二つ持って戻ってきた。
勇「はい」
仁「あ、あんがと」
受け取ろうと手を伸ばした、その時、指先が触れた。
仁「…っ!」
ほんの一瞬。
それだけなのに、体がびくっと反応してしまう。
勇斗はその反応に気づいたのか、少しだけ目を細めた。
勇「そんな緊張する?」
からかうような声。
仁「してねぇし」
即答する。
でも、たぶん全然隠せてない。
勇斗はそのまま、隣に座った。
しかも、思ったより近い。
仁「いや、近くね?」
思わず口から出る。
すると勇斗は、きょとんとした顔で言った。
勇「そう?」
そう?じゃない。
どう見ても近い。
肩が触れそうなくらい近いくて、少し動いたら当たる距離。
仁「その…離れろよ」
勇「なんで?」
悪気のない顔で聞いてくる。
その顔がずるい。
仁「なんでって……」
言葉が続かない。
理由なんて言えるわけない。
勇斗は、ふっと笑った。
勇「この前、遠慮しないって言ったじゃん」
さらっと言う。
仁「……っ///」
その言葉だけで、顔が熱くなる。
覚えている。
あの朝、あいつは確かにそう言った。
「遠慮しない」「落としにいく」って。
でも、こんなにすぐ実行されるとは思わなかった。
勇「嫌ならちゃんと言って」
優しい声で言う。
でも、その言葉に逃げ道がない。
本当に嫌なら離れる。
でも、離れてほしいわけじゃない。
仁「嫌じゃ…ないけど」
小さく答えると、勇斗が嬉しそうに笑った。
勇「じゃあこのままで」
その笑顔が反則すぎる。
勇斗は何もしてない。
ただ隣にいるだけ、ただ笑ってるだけ。
なのに、こんなに苦しい。
自分だけが振り回されているみたいで悔しい。
勇「なに?」
じっと見ていたことに気づいたのか、勇斗が首を傾げる。
慌てて目を逸らす。
でも、その瞬間ふと思う。
やられっぱなしなのも癪だ。
勇斗は余裕そうに笑って、自分ばっかり照れて、自分ばかり心臓がうるさい。
それが、なんだか悔しかった。
仁「……なあ勇斗」
勇「ん?」
そう呼ぶと、勇斗が自然にこっちを向く。
その無防備な横顔を見た瞬間、半分意地みたいな気持ちで、手を伸ばした。
勇斗の服の袖を、軽く引く。
勇「え」
そのまま、勇斗の頬に、ほんの一瞬だけ、キスをした。
仁「……っ///」
やった瞬間、自分で何してるんだと正気に戻り、 一気に顔が熱くなる。
でも、もっと驚いていたのは勇斗だった。
勇「え、ちょ」
固まっている。
目を見開いて、さっきまでの余裕が全部消えていた。
仁「いつも余裕そうなの、むかつくし…」
勇斗が、言葉を失っている。
その反応に、少しだけ気分が良くなる。
仁「たまにはそっちも困れっ」
そう言うと、勇斗は顔を手で覆った。
勇「……ずる///」
低く漏れた声。
仁「は?」
勇「今のずるい」
耳まで赤い。
さっきまでの余裕なんてどこにもない。
照れてる…
あの勇斗が、こんなふうに照れるなんて。
それが嬉しくて、少し面白くて、思わず笑いそうになる。
勇斗は顔を覆ったまま、少しだけ恨めしそうに言う。
勇「そんなのされたら無理なんだけど」
仁「知らねぇよ笑」
そう言いながら、自分も顔が熱い。
でも、さっきまでより少しだけ楽だった。
自分だけが振り回されてるわけじゃないと分かったから。
勇斗は手を下ろして、まだ少し赤い顔のまま笑った。
勇「じゃあ俺も遠慮しないけど」
仁「え」
次の瞬間、ぐっと距離を詰められる。
仁「ちょっ、待っ」
勇「待たない」
笑って言う。
さっきの仕返しみたいに、顔を覗き込まれる。
近い…近すぎる。
勇「可愛すぎ」
仁「うるさいっ///」
結局、また振り回される。
でも、それが嫌じゃない自分がいて。
さっきまでよりもずっと近い距離で、もう、まともに勇斗の顔を見られなくなっていた。
すると、少しすると距離が戻っていく。
勇「はい、ストップ」
ふっと笑いながら、勇斗が少しだけ体を離す。
仁「は?」
思わず間の抜けた声が出る。
勇「これ以上やると、普通に俺が持たない」
軽く言う。
その言葉に、一瞬、思考が止まる。
理解した瞬間、顔が一気に熱くなる。
仁「お前……っ」
何か言い返そうとするけど、言葉にならない。
勇斗はそんな仁人を見て、少し楽しそうに笑った。
ずるい。
さっきまであんなに余裕なかったくせに、もう切り替えてる。
仁「はぁぁぁ…」
息を吐いて、ソファの背もたれに体を預ける。
心臓が、まだうるさい。
でも、さっきまでの張り詰めた感じとは違って、少しずつ、空気が緩んでいく。
勇「で、体調はどうなん?」
何事もなかったみたいに、いつものトーンで話しかけてくる。
仁「急に普通に戻すなよ」
小さく呟く。
勇「いや、このままだと会話できなくね?」
仁「まあ」
小さく頷く。
そこからは、ほんとに、いつも通りだった。
最近の話。
太智がまた変なこと言ってたとか、舜太がやたら勘が鋭いとか、柔太朗とのゲームが長いとか。
笑って、軽く突っ込んで、また笑って。
さっきまであんなに意識していたのが嘘みたいに、自然に言葉が出てくる。
でも、ふとした瞬間に思う。
これ、勇斗はデートって言ってたんだよな…
その事実を思い出すたびに、少しだけ胸がざわつく。
勇斗は、たまに視線を向けてくる。
その視線が、ほんの少しだけ優しくて、ほんの少しだけ特別で。
それに気づくたびに、また心臓が変な動きをする。
仁「なあ」
ふと、口に出る。
勇「ん?」
仁「なんでそんな普通なんだよ」
ぽつりと零す。
勇斗が少しだけ目を細めた。
勇「普通じゃないけど?」
仁「いや、普通だろ」
さっきのことも、あの距離も、あの言葉も。
全部あったのに、またこうやって普通に話してる。
仁「俺だけ、変に意識してるみたいじゃん///」
小さく言うと、勇斗は少しだけ笑った。
勇「意識してないわけないじゃん」
仁「は?」
勇「めっちゃしてる」
さらっと言う。
少しだけ体を乗り出して、目を合わせてくる。
勇「普通に話してないと、変なことしそうだから我慢してるだけ」
一瞬で、言葉を失う。
仁「……っ///」
また、顔が熱い。
そんなこと、平然と言うな。
仁「意味わかんねぇ」
そう言いながらも、少しだけ嬉しくて。
俺だけじゃないんだ…
そう思った瞬間、胸の奥が、じんわり温かくなる。
それからまた、他愛もない話に戻る。
気づけば、笑ってばっかりだった。
何も考えずに、ただ一緒にいて、ただ楽しいって思える時間。
ふと、視線が窓に向く。
外はもう、すっかり暗くなっていた。
仁「あれ」
思わず声が出る。
勇「ん?」
仁「もうこんな時間?」
勇斗も時計を見て、少し驚いた顔をする。
勇「ほんとだ」
さっきまで、昼だった気がするのに、あっという間だった。
時間が経つのが、こんなに早いなんて。
それだけ、楽しかったってことだ。
でも同時に、少しだけ、胸が締まる。
帰らなきゃ…
その現実が、じわっと重くのしかかる。
少しだけ寂しいと思ってしまった自分に、また戸惑いながら、静かに視線を落とした。
靴を履きながら、妙に落ち着かない。
仁「ありがと」
小さく落とす。
勇「ん」
短く返ってくるその距離が、さっきまでの時間と比べて、やけに遠く感じる。
引き留められると思っていたが、勇斗は案外すんなり帰してくれそうだ。
明日の仕事のことも把握してくれているからだろうと思う。
勇斗に背を向け、ドアに手を掛けたその時、肩にふわっと重みが落ちた。
勇「寒いだろ」
振り向くと、すぐ近くに勇斗がいる。
自分の上着を、何でもない顔でかけてくるその仕草が、やけに自然で、やけに優しい。
仁「いらねぇし」
反射で返すけど、声に力がない。
勇「いいから着とけ、俺の着て欲しいの!」
軽く押し返される。
そのまま、ほんの一歩分、距離が縮まる。
勇「風邪ひいたら困るし」
低くて、近い声。
仁「……ありがと」
今度はちゃんと、小さく受け取る。
じゃあ、と言いかけ、視線を少し落とした瞬間。
額に、やわらかいものが触れた。
仁「え」
思考が、追いつかない。
今の……キス?
理解が追いつくより先に、反射的に顔を上げる。
近い。
まだ、そこにいる。
そのまま、ほんの少しだけ、唇に触れられる。
本当に、一瞬。
でも、確かに触れた感覚だけが、くっきりと残る。
仁「……っ///!?」
一気に熱が上がる。
固まって言葉が出ない。
勇「じゃっ、またな」
何事もなかったみたいに、柔らかく笑う。
仁「……っ、は!?」
やっと出た声も、続かない。
勇斗はもう、いつもの顔でドアを指すだけで、それ以上何も言わない。
仁「んっ、じゃあな!!」
半分逃げるみたいに外に出る。
ドアが閉まる音。
一瞬で、静かになる。
仁「…っん……」
息が上手くできない。
額に手を触れる。
そのまま、唇にも触れる。
嫌じゃない。
むしろ…
もっと、とか思ったの、やばいだろ…
ぐっと、肩の上着を掴む。
上着に残る勇斗の匂い、さっきのキス、あの距離。
全部が混ざって、頭がうまく働かない。
仁「無理……///」
かすれた声が漏れる。
距離置くとか、もう、無理かもしれない。
認めたくないのに、体はもう知ってしまってる。
でも拒めないのは、体だけじゃなくて…
そのまま、足は止まらず、夜の中へと溶けていった。
勇斗side🩷
ドアが閉まったあと、しばらく、そのまま立っていた。
静かだ。
さっきまであいつがいた空気が、急に抜けたみたいに、部屋がやけに広く感じる。
勇「はぁ……」
深く息を吐く。
壁に軽く背を預けて、目を閉じる。
やりすぎたかも、とは思う。
別れ際に、額にキスして、そのまま唇にも…
思い返して、小さく笑いそうになる。
完全に、衝動だった。
あの距離で、あんな顔されて、そのまま帰らせるとか、無理に決まってる。
勇「我慢してた方だろ…」
誰に言うでもなく呟く。
そのままリビングに行き、ソファに腰を下ろす。
さっきまで仁人が隣にいた場所。
無意識に、視線がそこに落ちる。
普通に座って、普通に笑って、でも、ちょっと触れただけであんな反応して。
思い出して、喉の奥がじんわり熱くなる。
勇「かわいすぎだろ…///」
ぽつりと零す。
あの、頬にキスした時の顔も、そのあと、こっち見れなくなってたのも。
そして、仁人からやり返してきたやつ。
勇「あれは…反則…///」
思い出しただけで、顔を手で覆う。
普段あんなことしないやつが、急にああいうことするから、余計にくる。
勇「ずるいのはそっちだろ」
苦く笑う。
少しだけ、沈黙。
でも、すぐに顔を上げる。
さっきまでの軽さとは違う、少しだけ真剣な目。
あいつ、逃げてない…よな。
前なら、もっと距離取ってた。
もっと誤魔化してた。
でも今日は、ちゃんと隣にいて、ちゃんと笑って、ちゃんと触れてきた。
それだけで、十分すぎるくらいの変化だった。
勇「……焦んなくていいか」
小さく呟く。
欲を言えば、今すぐ全部欲しい。
恋人、番…仁人の全部。
でも、引かれたくないから…
勇「ちゃんと、落とす」
ゆっくりでいい。
でも確実に。
仁人が、自分の意思でこっちに来るまで。
その時は、絶対離さない。
ソファに深く背を預けて、天井を見る。
さっきまでの温度が、まだ残ってる気がした。
勇「次会った時、どうなるかな」
小さく笑う。
多分またあいつは目を合わせなくなる。
でも、それすら楽しみだと思ってる自分に、少しだけ呆れながら。
静かな部屋の中で、ゆっくり目を閉じた。
逃がす気、ないけどな…
その決意だけは、さっきよりもずっと、はっきりしていた。
#🍼!
コメント
5件

めっちゃきゅんきゅんしました!!あとリアルな二人って感じがして、とても好きです。ありがとうございます

最高すぎます!
