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あれから、何年たっただろうか。
悠佑は、今でも病院のベッドから離れられずにいる。
体にうまく力が入らず、立てないので移動する時は車椅子。
カラーを1日中つけていても、体調はよくならないままで。
病院食も喉を通らないらしく、食べても全部吐き戻してしまうので、見るたびに痩せていく悠佑が痛々しい。
一回だけ、少しケアを行なってみたが、すぐ胃液を吐き戻してしまった。
それからは、薬に頼りっぱなしの生活になった。
でも、薬もできるだけ合うやつを飲んではいるが、Subの性質上、頭痛や吐き気などの体調不良が出てしまう。
担当医は、日に日に弱っていく悠佑を見て、そう長くはない、と言った。
#ご本人様には関係ありません
兎雪。@新連載始動
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油 淋 鶏 _ .
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今日も病院食を前にして、箸も取らずににらめっこする悠佑。
ずっと食欲がなく、毎日のように手をつけない。
看護師さんも『今日も手つけてくれなかった』と嘆いていた。
「ゆーすけ! 来たよぉー!!」
笑顔で抱きつきに行くと、子供をあやすように、はいはいと頭を撫でられる。
さっきまで寝てたのに、悠佑の顔色はずっと悪いままで。
「ゆーすけ、体調どう?」
そういうと、はぐらかすように無理やり笑顔を作る悠佑。
「……ごめんなぁ、…」
呟くように、泣きそうな声で謝る。
「なんで謝るんねやっ! 悪いのはあいつやろ? ゆーすけはなんも悪くないねん!」
ぽすぽすと、ベッドを叩きながら言うと、悠佑が申し訳無さそうに目を逸らす。
「…ゆーすけの歌早く聞きたいなー…」
多分、もう悠佑は歌えない。
少なくとも、普通の生活に戻れることはないだろう。
それも承知でこの病院に入院させているし、している。
「…、まろ、久しぶりに外でる、か…?」
「…行こ!!」
悠佑が、自分から外に出ようとするのは、あれ以来だろうか。
それも、看護師さんが聞いても断り続けてきた悠佑が、だ。
そしてすぐに看護師さんを呼んで、先生にも、許可をもらって。
車椅子も用意してもらって、なにかあったときのための薬、と水を小さなポーチのようなバッグにいれる。
「いってきまーす!」
「、いって、きます…」
「はーい!いってらっしゃい! 気をつけてくださいね!」
笑顔で看護師さんが見送ってくれて、少し、ほんの少しだが、悠佑の顔が綻んだ。
点滴を片手に持って、カラカラと車椅子を押す。
悠佑は、車とかに強いほうじゃないから、あんまり長い時間乗っていると酔うって、看護師さん言ってたっけ。
病院の中庭についたら、車椅子をベンチの隣に止めた。
今の時間はちょうど日陰になっていて、少し暖かくちょうどいい気温だ。
悠佑の隣に座ると同時に鳥が飛んでいく。
ぼーっと架空を見つめていた悠佑は、鳥を目で追う。
「どう? 気持ちいい?」
「…落ち着かない、」
返事がワンテンポ遅い、慣れない景色に疲れたのかな。
花壇に咲いている花を眺めては、木に止まっている鳥を眺めて。
それらを無心に眺めている悠佑を眺めて。
たまにこちらを向いて、また虫を眺める。
池に掛かっている小さな橋の上をサササッと走っていくスズメ。こちらを向いたと思ったらすぐに飛んでいってしまった。
無心で自然を眺めていると、急に声がかけられる。
「まろーあにきー! 調子どぉー?」
声のする方を見ると、ド派手なピンク色の髪_ないこがいた。
にっこにこで聞くが悠佑はもう寝落ちしていて、人の話など聞ける状態じゃない。
すぅすぅと寝息を立てて眠る悠佑はなんともかわいい。流石俺の悠佑。
「っと、にき寝ちゃったか、俺が来る時絶対寝ているよな、あにきー。」
むすーと不機嫌そうなないこ。
「病室帰るから、ないこ点滴持って。」
「はーい」
そのまま車椅子を押して、来た道を戻る。
病室に帰ると、悠佑を抱いて、ベッドに寝かせた。
もう深い眠りについたのか、車椅子から移しても、起きる気配は一切しない。
そして、看護師さんに車椅子を片付けてもらって、ないこは丸椅子にストンと座った。
俺はベッドに腰掛ける。
「まろ、いつまでこんな生活続けるつもり?」
さっきまでの表情と打って変わって、会議の時みたいな真面目な顔。
「なにが?」
「とぼけんな。 まろ、最近まともに寝てないだろ。
悠佑が心配なのは分かるけど、悠佑の次には、まろが潰れる。
流石に、悠佑に続いてまろがいなくなるのはいれいす的にもボイシング的にも厳しい。
ただの1企業じゃない。ファンだって心配してる。
配信のアーカイブのコメント見たか?『いふくんのテンション悠佑くんがいた時より低い』とか『まろちゃん元気ないよ?』とかファンからも分かるくらい。」
確かにないこが言っていることは、的中している。
配信では、悠佑のことを伝えていない。
悠佑が苦しんでいるのに配信とか、ライブとか、そんなことをしてていいのか、たまに心配になる。
「ね…横になるだけでも体は休められるからさ。
…お願い…悠佑だけでもみんないっぱいいっぱいなのに、次、まろになにかあったら…少なくとも俺はいれいすを、ボイシングを支えられなくなる…だから…!」
「はいはいw、そんな顔せんといてや。」
ないこの表情はどんどん暗くなっていって、今にも泣きそうな表情になる。
左腕をないこの後頭部に回して、ポンポンと頭を撫でる。
気づくと、ないこは俺の腕の中で泣いていた。
声を押し殺すように。俺の服を両手で握ってぐりぐりと頭を押し付ける。
しばらくそうしていると、ないこは眠っていた。
りうらに迎えにこさせて、ないこは引き取ってもうらうとして。
ないこも悠佑がいなくなって、もういっぱいいっぱい。
ないこだけじゃない。いれいすのメンバーも、ファン達も、ボイシングのメンバーも。
俺が、悠佑から目を離したから、みんなが不安を募らせている。
悠佑に言うと、『俺が悪いんや、まろは悪くない』って言う。
他のメンバーに言うと、『まろもあにきも悪くない』って言う。
もう、なにがなんなのかも、わかんなくなってきて…。
「…ッぉ! …ッぁろ! まろッ!」
「?」
急に、りうらの声がしたと思ったら、眼の前がぼやけている。
「まろ、どーしたん。急にあにきの部屋呼んだと思ったら、まろ泣きながら、目腫れさせて寝てるないくん抱きしめて…、 びっくりした。」
「え、俺泣いてた…?」
そう聞くと、りうらは呆れたように眉を寄せて。
「現在進行系で泣いてるよ。 なにあったん。」
確かに自分の顔を触った見たら目から水が流れている。
あぁ、情けないとこ見せたな。
「ははっ、なんでやろね」
目を細めて言うと、なにかを悟ったようにふーんと俺を見下ろす。
「あーそ。 まあこのままないくん放置するとやばいことになりそうだからりうらお持ち帰りするけど。 …まろも無理すんなよ。」
そう言って、自分より身長高いのにひょいっとないこを抱き上げて、病室から出ていった。
「…、」
気がつくと、時計は8時半を指していた。
明日も朝早いのを思い出して、病室を出た。