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前回までのあらすじ
コユキと善悪、アスタの魔神達は恐れ慄(おのの)いていたのであった。
自分たちの兄弟であるはずのバアル、その配下達はどこかで誰もが耳にした強敵、
ベル・ゼブブとベル・ズール・イーチだったからである。
こんなビッグネームと戦えるのだろうか? 未だに無名な自分たちが……
迷いは恐怖となって三人、二柱の魔人の心を蝕んでいく……
しかし、老いた聖女トシ子は恐れるな! その言葉を三人に贈るのであった。
コユキと善悪の盟友たるオルクス卿も言うのである。
「マダ、ノコッテルヨ? 」
と。
善悪とコユキは残り物のアーティファクト探しを始めるのであった、一縷(いちる)の望みに縋(すが)るように……
おいっ! 作者よ!
こんなに消極的な向き合い方で本当に何とかなるのか?
そろそろエタるんじゃねぇのか? もうあきらめちゃえよ? 楽になれよ?
うっすら聞こえる悪魔の声に抗う様に、『聖女と愉快な仲間たち』は更なる苦闘にその身を晒していく!
晒すって言ったら晒していく! のであった、ふうぅ!
さて、暴虐の狂詩曲(ラプソディー)、その行く末に待つ答えとは……
大き過ぎる敵に抗う術は有るのであろうか?
瞬き厳禁の狂気の詩は、此処(ここ)より紡がれるのである(大風呂敷)←(大丈夫?)←(知らん)←(えー?)
はてさて、狂気と暴虐の後半戦! 始まり始まりー! の、巻。
開幕ですっ。
ザザーン ザザーン
「ねえ、善悪、これってぇ…… 海よね?」
ザザーン ザザーン
「うん、海でござるな……」
尊い(たっとい)オルクスの告げるままに、日本に残されたアーティファクトを求めて旅立った真なる聖女コユキと聖魔騎士善悪の前にはどこまでも広がる大海原が広がっていたのである。
寺のベースキャンプで待つ、トシ子経由で都度確認を取りつつ進んだ二人の前には、力強い波音を響かせる、その名の通りの『響灘(ひびきなだ)』が立ち塞がっていたのであった。
福岡県北九州市から真西に向かった宗像(むなかた)市の鐘ノ岬(かねのみさき)の海岸に立った二人の前には美しい岩場の海が広がっていたのであった。
「ねぇ、善悪? も一度おばあちゃん経由でオルクス君に聞いてくれない? この西百五十メートルってさ、あの、本当かな……」
「そうでござるな! 聞くでござるよ、コユキ殿…… でも、もし、そうだったら…… ねえ、どうするの?」
「くぅぅっ! なんか竜宮城とか言われた時に嫌な予感がしてたんだけどねぇー! クハッ、んまあ、一応確認してみてよっ、善悪ぅ……」
「りょっ! ちょっと待っててね、あ、期待はしないでよ? ……もしもし? あ、師匠! 一応確認したいのでござるが――――」
善悪がトシ子と話している声をどこか遠くで聞きながら、コユキは目を細めて吠える響灘を見つめながら思いを馳せるのであった。
――――フグとかアワビも良いんだけど、響灘って言ったらやっぱりブリ、鰤よね、無事アーティファクトを見つけたら今夜は鰤尽くしと洒落込むしか無いわね…… じゅるる、じゅるる
「はい? 海の中? あーやっぱりそうなんでござるかぁ? うん、うん、まあ、一応やってみるでござるが…… はい、はいね、頑張るから、うんうん分かったでござるよ! はいね、はーいはーい、ピッ! ねえ、コユキ殿ぉ、やっぱ海の中だって! どうしよっか?」
コユキは答える。
「鰤ね!」
「は?」
「大丈夫よ善悪! アタシ鰤取ってくるわ! 任しといて!」
「ブリ? 違うでござるよ、コユキ殿ぉ! 今探しているのは『浦島太郎の腰蓑(こしみの)』でござるよぉ! 違う違う違う違うっ、ブリじゃない、ブリじゃな~い! でござるよぉ?」
コユキは涎(ヨダレ)を流しつつ答えた。
「分かってるわよ善悪! 任しといて、鰤取ってくるついでに腰蓑も持ってくるからねぇ!」
「はあぁ、仕方ないコユキ殿でござるな…… まあ良いか! んじゃ、あそこに見える漁協で何か使えそうなものが無いか聞いてくるから待ってるでござるよ、いい? ちゃんと待っててね、ほれ、虎〇の羊羹でござる! ちゃんとステイしていてね、良い? ステイっ! ん? んん? おけい?」
羊羹を貰ったコユキは嬉しいのか何なのか分からない呻き声で答えるのであった。
「グルルルルゥ、ガルガルルルルゥ!」
「はあぁあ~」
善悪はため息を吐いて漁協へと向かうのであった。
暫く(しばらく)(大体二分弱)は海を見つめて緊張感を漂わせつつ立って待っていたコユキであったが、待機時間が二十分にも及ぶとその集中力も消え去ってしまい、腰を下ろし、顎に手を置き、結果今は海岸縁りに大の字に寝て大鼾(おおいびき)を掻くしか他に無かったのであった。
チョンチョン…… チョン…… バシッバシッ! ドゴっドゴっ!
「おい! 起きろよこのデブっ! 人が苦労してる間に熟睡とか! おおいっ! 馬鹿っ! 起きろっ!」
善悪の叫びに応えるデブが一人……
「むにゃむにゃ…… なに? ご飯出来たのん?」
どうしようもないな…… 流石に我慢強い善悪は笑顔で言うのである、凄い!
「ほら、おっさん用の巨大ウェットスーツと散水ホース(四十メートル)が貸して貰えたのでござるよ、さっさっと準備するのでござる!」