テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
m ( 低浮
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
服のショップを後にした玲王が次に向かったのは、デパートの中でも一際洗練されたラグジュアリー・シューズフロアだった。
「おい、玲王! スポーツシューズ買いに来たんじゃないのかよ。ここ、革靴とか……なんか凄そうなのばっかりだぞ」
おずおずと高級な絨毯を踏む潔を余所に、玲王は迷いのない足取りで店員を呼び寄せる。
「こいつに合うスニーカー。ランニング用じゃなくて、タウンユースの最高級モデルをいくつか持ってきて。あと、そのサイドゴアブーツも」
「かしこまりました、御影様」
店員の慣れた対応に、潔は目を白黒させるばかりだ。
「俺の選んだ靴で歩け」
「ほら、潔。これ履いてみろ」
差し出されたのは、シンプルながらもカッティングが美しい、白のレザースニーカー。潔が恐る恐る足を入れると、驚くほど吸い付くようなフィット感だった。
「……すげぇ。なにこれ、全然疲れない……」
「当たり前だ。素材も製法も普通のとレベルが違うんだよ」
玲王はソファに腰掛け、試着した潔の足元をじっと見つめる。
清潔感のある白い靴が、潔の真っ直ぐな立ち姿に驚くほど似合っている。
「……あ、こっちのハイカットもいいな。潔、それも履け」
「えっ、まだ履くの!? さっきのスニーカーで十分すぎるって!」
「うるせー。俺が選んでやってんだ。全部試せ」
玲王は次から次へと、潔に似合いそうな靴を「鑑定」していく。
一足数十万円するような限定モデルから、職人仕立てのブーツまで。潔が困惑しながらも「……これ、歩きやすいな」「形がかっこいいな」と素直に感動するたび、玲王の独占欲は静かに、しかし確実に満たされていった。
(……この靴で、俺の隣を歩け。……俺が買った服を着て、俺が選んだ靴を履いて……)
玲王は自分でも無意識に、潔を自分好みの色に塗り替えていく快感に浸っていた。
かつて凪を完璧にプロデュースしようとした時の熱量とは、また違う。
憎んでいるはずの男が、自分の選んだもので輝いていく。その様子に、イライラするほど胸が高鳴る。
「……店員、今履いたやつ、全部。あとサイズ違いで予備も用意しろ」
「……ええっ!? 全部!? 玲王、正気かよ!?」
潔が飛び上がって驚くが、玲王は涼しい顔でブラックカードを差し出す。
「金なら腐るほどあるっつーの。……それに、お前にいい靴履かせとかないと、またどっかフラフラついて行きそうだしな」
「……? 俺、そんなに迷子になるか?」
「……お前は自覚がねーんだよ、バカ……」
玲王は真っ赤な顔をして、吐き捨てるように言った。
本当は、他の奴(凪や凛や蜂楽)のところへ走って行かないように、足枷でもつけるようなつもりで靴を買い与えているのだ……という本心は、プライドが邪魔して口には出せない。
山のような靴の箱と紙袋を店員に配送手続きさせながら、玲王は「……次は、美味いもん食わせる。……感謝しろよ」と、潔の肩を抱くようにして(半分は照れ隠しの力尽くで)エスコートするのだった。