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鴨之助
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わ
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第30話
「お兄様。お久しぶりです。ギーゼラです」
ノックを二回してきたのは……ギーゼラだった。
魔力も、声も正真正銘俺の妹だ。
今は、夕食を食べ終えて、部屋でゆっくりしていた時だ。
「あぁ。入れ」
扉を開けたら、肩まで伸びたサラサラの黒い髪に、黒い瞳の、もう少ししたら八歳になる女の子……ギーゼラがいた。
「失礼します」
「そこに座って。こんな遅くによく来たな」
「昼は、お忙しいとお父様が……」
そう言いかけた所で、ギーゼラが転びかけた。俺が何とか支えたから怪我は免れたけど……このまま転べば、机の角に頭を打っていただろう。
「っ……!」
「大丈夫か?!」
ギーゼラは体を強張らせながら頷いた。
……怖かっただろうな。
「……お兄様は、凄いですね」
「え?」
「お兄様は、強いのに優しくて、賢いんです。ありがとうございます」
ギーゼラが可愛らしく笑った。
『良かった』と言うように俺も笑った。
「あ、それで今日は……」
と言いかけた所で、隣の部屋――ハンナの部屋から何か、本棚か何かが倒れるような大きな音が聞こえた。
ハンナ……? 黒猫……?
どっちが何をやらかしたんだ……?
二人以外の魔力は見えない。偽装魔法の見破り方も教わってるから、確かだろう。
「ひぇっ!」
「大丈夫だ。いつもの事だ」
「いつもの事……?」
隣で疑問符を浮かべているけど……いつもの事では済まされない。
ちょっとマズイような気がする。
だけど、俺が首を突っ込むようなことでは無い気がする。
「あ、それで、今日は……お父様に内緒で来たんです。夜が怖くて……」
そう言えば先日、ギーゼラの部屋から夜に刺客が侵入して……父上の部屋に侵入しようとしたと……
「そうか。俺の……いや、隣の部屋にいるやつから教わった、おとぎ話があるんだ。『かぐや姫』というお話なんだ」
✵
むかーしむかし。
ある、おじいさんが竹を切っていると、一本の光る竹を見つけました。
切ってみると、中にはとても可愛らしいかぐや姫が座っていました。
おじいさんは、かぐや姫を持ち帰り、おばあさんと一緒に大切に育てました。
そのかぐや姫は、すくすくと育ち綺麗な女性となりました。
その美しさに、結婚を申し出る人が何人も来ましたが、かぐや姫は興味がありません。
無理難題を言い聞かせても、できないまま戻ってくる若者が偽装をして、かぐや姫が直ぐに見破ってしまうのでありました。
とある日。
月を見て、とても悲しい顔をするかぐや姫におじいさんが尋ねます。
「どうしてそんなに悲しい顔をするんですか?」
「私は、月から来た者です。もう直ぐ月から迎えが来てしまいます」
おじいさんは、困り果てました。大切な、大切な一人娘を月に帰されては困ります。
当日の夜。
おじいさんは、沢山の兵を集めてかぐや姫を守ろうとしました。
しかし、月の使者のような人が、手をかざし光を放つと、眠ってしまいました。
かぐや姫は、不死の薬を渡し、別れの言葉を告げて月へ帰りました。
おじいさんとおばあさんは、「かぐや姫がいないのに、長生きする必要がない」と言い、沢山の兵に国一番の山の上で不死の薬を燃やしたとさ。
✵
「……かぐや姫。幸せだったのかな?」
ギーゼラが寂しそうな顔をしながら、そう呟いた。
「助けてくれて、育ててくれたおじいさんとおばあさんと最後まで一緒にいれたから、幸せだったんじゃないか?」
……困らせてしまうから、その大切な人から離れたんだろうな。
その時、扉が四回ノックされた。
「黒猫だ」
魔力を見ても、声からしても黒猫だ。
「入っていい」
ガチャリと扉を開けて、黒猫が獣人の姿で入って来た。
……なにやら、手はボロボロ。顔色は、悪くて瞳が揺れている。
「何があった」
「ハンナが、棚の下敷きになったんだ。一人では持ち上げられなくて……手伝ってくれ」
黒猫は、頭を深々と下げた。
……ギーゼラがいるからだろう。俺がどっちを選ぶか分からないからな。
「あぁ。勿論だ」
「ありがとう」
隣の部屋にはいると……何事?
本や、紙、教科書が散乱して……その先には意識を失ったハンナが、大きな棚の下敷きになっていた。
体半分に乗っかっている。血は……少し滲んでいる程度。
ギーゼラは丁度、死角で見えない。
「お兄様。大丈夫なのですか……?」
そう言って覗こうとしたけど俺はギーゼラの目を塞いだ。
「あぁ。何とかする。ギーゼラは、後ろを向いて待ってくれないか?」
スカートをギュッと握りしめながら頷いた。
俺は、笑顔で頭を撫でた。
コメント
1件
ああっ、ギーゼラちゃんかわいすぎる〜!!😭💕 夜が怖くてお兄様のとこに来るなんて、もう尊い…!! かぐや姫の話を聞いて「幸せだったのかな?」って呟くところ、すごく胸にきたよ…。お兄様が「大切な人を困らせないために離れたんだろうな」って思うとこ、優しすぎて泣ける😢✨ 最後に黒猫が助けを求めてきて、ギーゼラの目を塞ぎながら「後ろ向いてて」って言うお兄様の優しさ…! 兄妹愛と信頼関係がぎゅっと詰まった回だったね!!