第3話 眠る彼
「心身に大きなダメージ…か」
当時から彼を担当している小児科の医者に聞いても、
「身体の痣は一切なかったよ。いじめられていたことも、僕はわからなかった。本当に面目ない…」
といい、代わりに当時の様々な記録を見せてくれた。
いじめっ子は、もう5年以上病院に来ていないと医者は話す。
退院して定期検査が終わり、ここに来る理由がなくなったのだろう。
そういう人の情報はプライバシー保護の観点から、誰も閲覧ができない状態で保管され、10年が経過すると破棄される。
「…何もわからない…」
頭を抱え、どう調べれば良いのかを迷っていると、僕のPHSがなった。
「先生、おんりー君の体調が急変し、現在HCUにて治療を行っています。」
「…‼︎ すぐ行きます。」
急いで階段を降り、別棟にあるHCUへと向かう。
中に入ると、そこには苦しそうに寝ているおんりーくんの姿。
僕は、バイタルチェックをしながら薬を投与して、様子を見ることしかできなかった。
「…彼は危篤状態とまではいかなくても、容体が急変することが多い。」
やっと落ち着き、様子を見ている時。
僕は先生に、この子の様々な話をしてもらった。
「1番酷い時は、ICUから6日出られない。」
心臓と呼吸器系が酷く弱い彼は、少し走るだけで酸欠になり、倒れてしまう。
ICUにてECMOを使うくらい容体が悪化する事もあるらしい。
先生に許可をとり、おんりー君の病室に戻ると、窓の施錠がされていなかった。施錠してから、部屋の中を見回すと、机の上に写真立てがあった。
写真では、人工呼吸器をつけた彼と、彼の家族が集まっていた。
彼の両親にお会いしたことがない。どうやら、家が遠く、共働きで会いに来る時間がないらしい。
昔は少しだけ運動していたそうだが、今はそのようなことはできない。
彼について、僕はノートにまとめはじめた。
キャラ紹介1
qnly 15歳
呼吸器系や心臓がとても弱く、物心ついた頃には病院で入院生活を送っていた。
冷たく、人と接しようとしない。
いじめや周りの大人の反応のせいで、自己嫌悪に陥っている。
HCUとは ICUにて手術や治療していたが、治療が長引いたり、中等症の術後患者や、一般病棟に入院していた患者の体調が急変した際などに入院する。
ICUは「集中治療室」、HCUは「高度治療室」。
医療について、情報が間違っていましたらご連絡ください。
コメント
5件
こう…なんだろう、。 私の語彙力消失つしてますが…、 病気だけじゃなく、彼の中に確かに根強く“いじめ”と言うものが残っている。 dzさんとの交流で少しでも気持ちが和らげばな…