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《木戸芽那編》
私が友達に無視され始めてからもう一月ぐらいが経った。
最近では、朝に自分のクラスに入り、授業を受け、食事を摂るだけ、誰とも話すことなく家に帰るのも習慣化してしまった。
友達は私抜きでずっと楽しそうに話している。見ているだけでも辛かった。
相変わらずいじめは続いている。
そして今日、想像していた通り、私は陽キャグループに呼び出された。
行きたくなかった。
彼女らの剣幕を見ていたら、もう自分がこれから何をされるのかは暗に想像出来る。
「ねぇ木戸サァン、早くしてくんない?」
「ノロマじゃん」
彼女らは教室の外から私に大声で呼びかける。何人かが私に心配そうな視線を向けて来るが、誰も助けてようとはしてくれない。
彼女のうちの一人が、私の手首を掴み強く引いた。
長い爪が腕にくい込んで、ただ痛い。
「早く歩けよ」
「っ」
掴まれている腕を強く引かれ、転びそうになった。
またくすくすと聞こえよがしに笑ってくる。
連れてこられたのは運動場の近くの中庭の端だった。
「ぁグッ」
腹を蹴られ、尻もちをついた。
「今まで散々バカにしてくれやがって」
「おい根暗!なんか言えよ!」
脇腹、太ももなど、服で隠れる所を中心に何度も何度も蹴られる。
「うっ…ぁっ…」
痛い。
何とか言えとは言われるが、私が何かを言ったところで彼女らはまた腹を立てこの状況が悪化するだけだろう。
私はこの時間が早く終わればいいのにと黙ったままひたすら耐える。
彼女らの蹴りが止まる。
反応を寄越さない私に、ついに飽きてくれたのだろうかと期待して彼女らを見上げた。
「ハッ、何期待してんだ、よっ!!」
そんな期待は、すべきではなかったかもしれない。
私は彼女の振り上げられた足を見た。
「ぁア゛ッ」
勢いよく踏み込まれた足を、さらに太ももにグリグリと食い込ませられる。
痛い痛い痛い。ただひたすらに、痛い。
呼吸が荒くなり、脂汗がじわりと滲み出す。
「バレてないと思った?
ずっと木戸サンが私たちの悪口言ってたの、アタシたち知ってるよ」
あぁ…
私は、それで彼女らを怒らせたのか。
「全部聞こえてんだよ
でもさぁ、」
「今回は相手が悪かったね??」
バシャリと水の入ったバケツが頭上からひっくり返された。
蹴られて踏まれて、ドクドクと火照った体に、冷たい水が少し気持ちいい。
彼女らは私を置いて教室に戻って行った。私は置いていかれるようだ。
チャイムが鳴った。
動くのがただひたすらに億劫だった。授業に出るのはもう諦めようと思う。
私はしばらく体を休ませてから、誰も来ないだろうという希望を込めて屋上に上がることにした。