テラーノベル
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眩しい朝日が差し込む一軒家のキッチン。
昨夜の「0歳児モード」からすっかり目が覚めた元貴は、今、人生最大級の羞恥心と戦っていました。
朝食のトーストを口に運ぼうとして、ふと昨夜の断片的な記憶がフラッシュバックします。
涼架の服の裾を握りしめて「うー」と言ったこと。
滉斗に抱き上げられ、されるがままにパジャマを着替えさせられた(気がする)こと。
極めつけに、滉斗の腕の中で「ひろとぉ……」と甘えた声を出したこと。
「…………っ!!」
元貴の顔は、テーブルに並んだイチゴジャムよりも真っ赤に染まりました。持っていたフォークがカツンと音を立てて震えています。
そんな元貴の様子を、コーヒーを飲みながら眺めている滉斗。彼は公認心理師としての冷静な観察眼を、今や「元貴を愛でるため」だけにフル活用していました。
「……元貴。トースト、冷めるぞ。それとも、昨日みたいに食べさせてほしいか?」
「ひ、ひろと! 言わないでってば……! あれは、その、仕事でちょっと疲れすぎてて……」
「別に、俺は気にしてない。むしろ、あのアプローチは心理学的にも非常に健全なストレス発散だ。……まあ、個人的な感想を言わせてもらえば、あと3日分くらいは心のフォルダに保存したけどな」
「フォルダにしまわないで! 今すぐ消去して!」
必死に抗議する元貴ですが、滉斗の瞳には「絶対に忘れてやるものか」という強い意志が宿っています。彼にとって、昨夜の元貴は「可愛い」という言葉では片付けられないほど、独占欲を満たしてくれる最高の癒やしだったのです。
そこへ、夜勤明けのようなテンションで2階から涼架が下りてきました。
「おはよー! いやぁ、昨日の『元貴ちゃん』は最高だったね! 僕、プロの意地で写真撮るの我慢した自分を褒めてあげたいよ!」
「涼架さんまで……! もう、今日は二人とも顔見ない!」
「えー、いいじゃない! 滉斗なんてさ、元貴が寝た後、僕に『昨日の動画、防犯カメラに残ってないか』って真剣に聞いてきたんだよ?」
「ひろと!!」
元貴がガバッと立ち上がると、滉斗は視線を逸らさずに
「……冗談だ。バックアップは俺の脳内だけで十分だ」
と、全くフォローになっていないフォローを入れました。
真っ赤な顔をして「もう知らない!」と玄関へ向かう元貴。
けれど、仕事用の鞄を持つ彼の手を、滉斗がそっと引き止めました。
「……元貴」
「……何? まだ何かからかうの?」
「いや。……今日も頑張れ。……夜、またああなっても、俺が全部受け止めてやるから」
不器用で、けれど絶対的な肯定。
元貴は毒気を抜かれたように、また少しだけ顔を赤くして「……ん。……いってきます」と小さく笑いました。
「よし! 二人とも、いってらっしゃい! 今日も元気に『大人』やってくるんだよー!」
涼架の明るい声に見送られ、二人はそれぞれの戦場(職場)へと向かいます。
昨夜の甘い時間は、今日を生きる三人の、何よりのエネルギーに変わっていました。
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コメント
3件
まぁ可愛い姿見せられたら忘れることできないもんね…💭 続き楽しみにしてます!!
まさか着替えまで甘えるとは可愛い