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みなさんこんばんはtakuです。
いいねありがとうございます。
第10話
■答え合わせ
廊下に漂っていた刺々しい空気は、
僕の叫び声で一度途切れた。
しかし、その余韻はまだ三人を包んでいる。
僕は壁に背をあずけ、震える指で涙を拭った。
かっちゃんも轟くんも、
いまは動くことができない。
ほんの少しの沈黙。
けれどそれは、逃げている沈黙ではない。
やがて——轟くんが静かに口を開いた。
「……出久」
デクは、息を整えながら顔を上げる。
轟くんの声はいつもより少しだけ弱く、
慎重だった。
「逃げてもいいし、怒ってもいい。
けれど……何も言わないままじゃ、俺たちは何も変われない」
かっちゃんが舌打ちしようとして、
しかししなかった。
それだけで僕は迷いを感じた。
僕は胸に手を置き、ゆっくり言葉を探す。
「僕……二人に優しくされると……不安になるんだ」
二人が、かすかに目を細める。
「嬉しいのに、苦しくて……
一緒にいると、どっちかを傷つけちゃうんじゃないかって……
どっちも大切だから……怖かった」
喉がつまって、最後の言葉は震えた。
かっちゃんは拳を強く握りしめる。
「……そんなこと、気にすんなよ」
強い声。
けれど、奥にあるのは怒りじゃない。
自分のせいで泣かせちまった、という悔しさ。
「気にしないなんて、無理だよ……」
僕は小さく首を振る。
「僕は……二人を大切に思ってる。
だから、誰かを選んだら……もう片方を傷つける」
その瞬間、かっちゃんと轟くんの胸に同時に痛みが走る。
轟くんが僕の正面に立ち、目線を合わせた。
「出久。 ……俺たちが勝手に“選ばれる側”だと思っていた。 けれど、お前の気持ちを聞いて……初めてわかった」
僕は瞬きをする。
「お前は……“選ぶ側”でもあったんだな」
デクの胸が大きく揺れる。
そんな風に言われるとは思っていなかった。
かっちゃんが、低い声で続ける。
「デク。 てめぇはいつも……自分を犠牲にしすぎだ」
視線が僕を捉える。
「誰かが傷つくかもしれねぇって怖くて……
自分だけ苦しむ道を選ぶな」
僕の目にまた涙がにじむ。
轟くんが、そっと言葉を添える。
「もし……どちらも大切なら。
どちらも手放したくないなら。
それでもいいんだ」
かっちゃんは息を呑んだが、否定しなかった。
デクは信じられない気持ちで二人を見る。
「で、でも……そんなの……」
「無茶だって思ってるんだろ」
かっちゃんが言う。
「でもよ……お前の気持ちが本気なら、
俺たちはそれと向き合うしかねぇ」
轟くんが静かに頷く。
「出久に“選択を強いる”ことこそ……俺たちの傲慢だった」
僕の心が、ぐらりと揺れた。
かっちゃんと轟くんは、
互いを睨まないまま——
同じ方向を向き始めている。
僕の“気持ち”へ向かって。
(こんなの……ずるいよ……)
胸がいっぱいになって、呼吸が震える。
「僕……二人のこと、好きだよ」
ぽつりと落ちたその言葉は、
かっちゃんと轟くんの心を一瞬で打ち抜いた。
かっちゃん自身が気づいていなかった本音だった。
二人は息を呑む。
僕は続けた。
「どっちも大切で……どっちかなんて、選べない。
選びたくない……っ」
涙がこぼれる。
かっちゃんはゆっくり近づき、今度は優しく声を落とした。
「それでいい。
……今は、それでいいんだよ」
轟くんも隣に立ち、静かに言う。
「出久の気持ちは……俺たちが一歩ずつ受け止める」
デクは顔を上げる。
二人の表情は全然違うのに、
“同じ優しさ”を向けていた。
三人はようやく同じ場所に立った。
はじめて、真っ直ぐに、本音をぶつけ合った。
まだ答えは出ていない。
けれど——ここが新しい始まりだった。
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