テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#廃校past complex
ユメミリ@夏の絶不調祭り
315
るる
74
#闇
ruruha
1,447
コメント
2件
作者コメント┊︎ 今回の豆知識、ララビットは草食。
あああ〜〜〜〜!!もうこの食堂の空気感がエモすぎる!!😭💕 イリア先輩の優しさと苦労が滲み出ててすき…ミシェルとラグドールのバチバチとかララビットの冷静ツッコミとか全員のキャラ立ってるの熱い!!🔥 ラグドールの「うさぎって草食動物」に泣いたww でも最後に折れたの尊いね… ヴェルクさんいつ来るんだろ気になる〜次の話も絶対読むからね!!⋆♡
食堂いっぱいに、トマトと香草の優しい香りが広がる。
大きな鍋から立ち上る湯気は、昼下がりの陽射しに照らされてゆらゆらと揺れていた。
イリアはエプロンを整え、大きく息を吸い込む。
「皆さーん! 昼食できましたよー!」
その声が西棟中へ響き渡る。
最初に顔を出したのはナターシャだった。
「……今日の昼ごはんは…?」
期待を隠しきれない様子で鍋を覗き込む。
プリムローズは嬉しそうに答えた。
「今日はミネストローネとパン、それから……サラダです!」
「ミネストローネね。」
ローラが優雅に微笑む。
「いいじゃないの。春と言っても寒い日もあるし…ちょうどいいわね。」
ナターシャたちの後に続いてやってきたラグドールはサラダを見つめて肩を落とした。
「えぇ……。」
「私、野菜苦手なんですけど……食べたくない……。」
「ガキじゃん。」
間髪入れずにミシェルが言う。
「ミシェルにだけは言われたくないです。」
「はぁ?なんで?」
「性格。」
「は?」
「バチバチしないでください……。」
イリアは苦笑しながら二人の間へ入る。
「好き嫌いは禁止ですよ。」
「イリアさんまで…ひどーい。」
食堂には小さな笑い声が広がった。
◇
全員が席につき始める。
イリアは人数を数えるように食卓を見渡した。
「よし……今日は皆さん集まりましたね。」
ララビットが静かにパンをちぎりながら言う。
「一人いないけどね。」
イリアは空いている席を見る。
「研究もほどほどにって、さっき言ったばかりなんですけど……。」
「あの人に何言っても聞きませんよ。」
ラグドールは苦笑した。
「研究が始まると時間の感覚なくなりますから。」
「俺が連れてこよっか?」
ミシェルがパンをくわえたまま手を挙げる。
「幼なじみパワーってやつ…?」
ララビットが冗談半分、困惑半分で聞く。
「うん。」
即答だった。
「……なにそれ。」
呆れたように首を傾げるナターシャ。
ローラはスープを一口飲み、穏やかに笑う。
「ヴェルクが来ないのは、いつものことじゃないの。」
「冷めちゃう前に食べましょう?」
イリアは少しだけ迷ったあと、小さく頷く。
「…まぁ、そうですね。」
そして皆を見渡し、いつもの笑顔を浮かべた。
「それじゃあ皆さん、どうぞ。」
「いつも通り、お好きに食べてください。」
◇
ラグドールはサラダをじっと見つめたまま、ぴくりとも動かない。
「……。」
イリアは苦笑しながら、その様子を見つめる。
「ラグドールさん。」
優しく声を掛ける。
「ちゃんと食べてください。」
「…………。」
返事はない。
その代わり。
ラグドールは何食わぬ顔で、自分の皿をそっとララビットの方へ押し始めた。
「やめて。」
ララビットは間髪入れずに皿を押し返す。
その光景に思わず笑ってしまう。
「ちょっとラグドールさん? ララビットさんに押し付けない。」
「ねぇ、ララビット。」
ラグドールは真面目な顔で切り出した。
「知ってますか?」
「……何を?」
「うさぎって草食動物なんですよ。」
「うん。」
「なのでお願いします。」
「無理。」
即答だった。
「……どういう理屈なの、それ。」
ナターシャがぽつりと呟く。
「ひどいっ!」
ラグドールは大げさに肩を落とす。
「じゃあプリムさん……。」
「え、えっと……。」
突然話を振られたプリムローズは慌てて姿勢を正した。
「だ、誰にでも好き嫌いはありますからね……!」
少しだけ考え込み、小さく手を挙げる。
「わたくしが……。」
「プリムちゃん?」
ローラが優しく微笑む。
「何でも甘やかしすぎるのはダメよ。」
「……。」
プリムローズは数秒固まったあと、申し訳なさそうにラグドールを見る。
「……すみません、ラグドールさん!」
「わたくしも、お野菜は苦手ですわ……!」
「ですので……遠慮しておきます……!」
「……。」
ラグドールはしばらく黙っていたが、不貞腐れたように。
「なーんか、プリムさんに言われると罪悪感湧いてきました。」
イリアはその隙を逃さない。
「ラグドールさん。」
サラダを少しだけ取り分けながら微笑む。
「量は減らしてあげますから。」
「少しだけでも、健康のために食べましょう?」
「うぅ……。」
そこへ、パンを頬張っていたミシェルが口を開く。
「そんなに嫌ならヴェルクにあげれば?」
「あ。」
ラグドールの目が少しだけ輝く。
「それいいですね!」
「『それいいですね!』じゃないですよ……!」
イリアは思わず大きな声を出した。
「ヴェルクさんだってちゃんとご飯を食べるんです!」
「それにラグドールさん。」
イリアは少しだけ真剣な表情になる。
「ただでさえ少食なんですから……栄養失調とか、心配なんです。お願いです。」
ラグドールはサラダとイリアの顔を何度も見比べる。
「……。」
長い沈黙。
やがて、小さくため息をついた。
「……わかりましたよ。」
フォークを持ち上げる。
「今回だけです。」
「ありがとうございます!」
イリアはぱっと笑顔になる。
その様子を横目に見ていたララビットは安心したように息をついた。
「……あ、やっと折れた。」
「次回も頑張ってくださいね。」
「それは聞いてません。」
食堂には思わず笑い声が広がった。
穏やかな昼下がり。
今日も西棟では、いつもと変わらない賑やかな時間が流れていた。