テラーノベル
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涼ちゃんは、眠る𓏸𓏸の手元に転がる体温計に気づいた。その無気力な体を少しずつ動かし、そっと手に取る。
ディスプレイには見たこともないような高い数字が表示されていた。
「……」
それは、𓏸𓏸が今どれだけ辛いのか――はっきり示していた。
胸の奥が少しチクリと痛むけれど、涼ちゃんの顔にはいつも通り何の表情も浮かばない。
静かに体温計を元の場所に戻す。
それから、涼ちゃんはまた窓の外に目を向ける。
けれど、さっき見た数字のことが、小さな棘みたいに心に残り続けていた。
午後になり、ようやく𓏸𓏸が休める時間になった。
ふらふらの足取りで隣のベッドにダイブし、そのまま大きく息をついた。
「……しんどいよぉ〜……」
熱のせいで力が出ず、瞳を閉じる𓏸𓏸。その背中はいつもより小さく、弱々しかった。
涼ちゃんはぼんやり窓を見ていたはずなのに、
どうしてもその背中から視線を離せない。
もぞもぞと体を向けると、𓏸𓏸の背中をじっと見つめる。
何も声をかけられないし、表情にも出せない。
それでも、心の中だけで何度も思う。
「……だいじょうぶかな……𓏸𓏸ちゃん……」
静かな部屋の中、二人だけの時間が流れていく。
解けない孤独と絆が、そっと絡み合う午後だった。
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