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夜、物音がして目が覚めた
瞼を開けて周りを見渡すと、隣にいる彼が体
を起こしていた
背中には汗が滲んでいる
今はそんな暑い時期ではないはずなのにどうしてだろうか
手を伸ばして彼の服を引っ張ろうとした_
けど辞めた
彼は心配されるのがあまり好きでは無い
以前、怪我をして帰ってきたことがあった
「酷い怪我、直ぐ手当てしな_」
『やめろ』
「でも、」
『僕に触るな!』
私の手を振り払って彼はお風呂場へ向かって行った
私が頼りないの?
それとも私のことを嫌ってしまったのだろうか
その日から、毎日少しずつ不安が積み重なっていく
冷たい言葉を放たれる度に酷く落ち込み
貴方に私は必要のない存在なのかもしれないと考えてしまう
ダメだ、寝よう
こんなこと考えても何も解決しないのだから
彼に起きていることがバレないように寝返りをうって再び目を閉じれば
『ゴホッゴホッ、』
咳き込む声が何度も聞こえる
今振り返って貴方に声をかければ
私は貴方の役にたてるの?
それとも、
「貴様には関係ない」
…そうだよね
私が今あなたを心配したところで咳き込むことが無くなる訳でもない
何の役にも立てないのに心配だけされて邪魔でしかなかったよね
でもさ
貴方を心配することだけでも、貴方の彼女である私の役目なんじゃないのかな
涙が零れた
私が居なくても、貴方にはなんの支障もでない
私は貴方が居ないだけで寂しくて悲しくなるのに
こんな彼女でごめんね
彼が再び先程よりも酷く咳き込んだ
貴方に触れて声をかけたい
「大丈夫?」
って
でも、そんなの貴方にとっては迷惑でしかない
あなたを心配する役目は、私ではなかったんだね
咳き込む彼を背に、私は再び眠りについた
朝目を覚ますと彼は隣にいなかった
リビングに行くと、机の上に紙が置かれているのに気がつく
「今日は早く帰る」
それだけ書かれていた
何故こんなことをしたのだろう
何時も何も言わずに出ていくのに
また朝食を抜いたのか
はぁ、とため息が出てしまう
何時も彼に朝食を出せば、見ないうちにお皿の上のものは綺麗さっぱりなくなっている
だけど不思議なことに、彼が直接食べている姿を私は見たことがなかった
今思えば凡て捨てていたのかもしれないと思った
最初から迷惑でしかなかったんだ
私が告白した時も
食事を作る時も
心配する時も
凡て、彼に負担をかけていたのかもしれない
私は初めから貴方に必要なかったんだ
では何故告白をOKしたのだろうか
考えても分からないよ
私はこんなにも貴方の事を想っているのに
きっと今日早く帰ってくるということは何か話しがあるのかもしれない
「別れ」
という言葉が頭に真っ先に浮かんだ
別れ話か、と自分でも納得できる
こんな彼女
初めから厭だったもんね
彼の帰りを待つにつれて苦しくなった
お腹が痛くなりトイレに駆け込めば、生理だった
本当についてない
あと少しで彼が帰ってくる
あと少しで、別れるんだ
今までの思い出がフラッシュバックした
厭なこともあったけど、いい思い出もあった
ああ、楽しかったな、
気づかないうちに涙が頬を伝って床に落ちた
ガチャ
扉の開く音
心拍数が一気に上がった
急いで目を擦って泣いていたことを隠す
「お、おかえり」
「お風呂できてるよ、先入る?」
『……』
彼は私を見つめた
そっか、今ここで言うんだね
今までありがとう
それだけでもしっかり伝えなければ
私は彼の次の言葉を待った
彼はゆっくり口を開く
苦しい
今から死ぬと宣言されたかのように苦しくなった
早く、云うなら云ってよ
苦しいから、
彼は私から目を逸らして言葉を発した
『い、一緒に、入らぬのか…?』
「……」
聞き間違いだろうか
別れの言葉には聞こえなかった
「な、なんて云った?」
『何故1度で理解せぬのだ、』
彼は口に手を当てながら再び呟く
『何時も貴様は一緒に風呂に入らぬかと聞いてくる、だから今日くらいは入ってやっても、_』
彼はチラチラと私を見ながら話していたけど、途中で言葉を止めて
目を見開きわたしをみていた
何?どうしたの?
『何故…泣いているのだ』
彼の言葉に反射的に目を触った
冷たいものが目から溢れている
私は膝から崩れ落ちた
不安から開放されたように、目から涙があ 溢れている
別れなくていいんだ
まだ、彼と一緒に居てもいいんだ
改めてそう想うと、今度は嬉しくて涙が溢れる
『ど、どうしたんだ、』
珍しく慌ててる彼に少し笑ってしまう
泣きながら笑ってる私に彼は困惑している
困惑しながらも、私を抱き抱えてリビングまで運んでくれた
私が泣き止むと、彼は安心したような表情を見せた
ああ、やっぱり私はあなたのことが本当に好きなんだ
改めてそう感じた
その後私は今まで思っていたことを凡て彼に打ち明けた
それを聞いた彼は、申し訳なさそうに、恥ずかしそうに顔を背けた
私の朝食を食べない件は、食べるのが勿体なくて職場に持って行って食べていたそうで
私が心配するのを厭がるのは、弱い所を見せたくなかったそうだ
「私は芥川さんの彼女なんだよ?心配させてくれないとやだ」
そう云えば、彼はすまなかった、と一言云ってくれた
彼は思ったよりも私のことが好きみたいだ
『それよりお風呂入っちゃいな。夕飯作っとくよ』
そう云ってキッチンに向かおうとすると、彼は私の腕を掴む
彼を見ると下を向いていて表情が分からない
どうしたの?と聞けば
『莫迦なのか貴様は、。今日くらいは一緒に入ってやってもいいと云ったではないか、』
照れながら云う彼は最高に可愛かった
だけど、
「ごめん…生理来ちゃって、。今度また一緒に入ろうね」
そういえば彼は顔を真っ赤にして立ち上がる
怒ってお風呂場に行くんだろうな、と彼の次の行動を読んで楽しんでいると、
『…今云った言葉、忘れるでないぞ…』
とそのままものすごいスピードでお風呂場に向かう彼
私は彼が愛おしくてたまらなかった