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―ここは、のどかで平和な国、カール王国。国の平和を守るため、騎士たちは今日も警備を続けている―
「メイジ、これから巡回警備?」
「うん、レラも?」
「そう。私は山の方に行くのだけど、メイジはどこに行くの?」
「私は街の方だよ。ついでになにか買い物でもしようかなって思ってる。」
「ふふ、買い物はいいけど、しっかり警備もしなさいよ?」
「わかってるって!」
「じゃあ、お互い頑張ろうね。」
いつも通りの、他愛のない会話。まさかこれがいつものレラとの最後の会話になるなんて、思いもしなかった。
私はメイジ、カール王国を守る騎士の一人。今日もいつも通り、巡回警備に出かけた。今日の担当は街の方。ついでになにか買い物でもしようかと、心を少し踊らせながら、私は城を後にした。
さてと…山の方へ行くのはあまり得意じゃない。道が複雑で、どこを見たかわからなくなるし、何より動物が怖い。最近熊が出たという話も聞くし、襲われたらどうしようと思ってしまう。あまり殺したくはないし…。
そんな事を考えつつ、私―レラは、警備に出かけた。
少し歩くと、鳥の鳴き声が聞こえた。この山には鳥もたくさんいる。山への出入り口になっている坂を登り、住民たちに声をかけつつ歩いていく。巡回警備は慣れたもの。そして、脇道へ入り、周囲を確認しつつ歩いていると…
「すみません、お嬢さん」
声をかけられて振り向くと、18歳くらいの青年と、フードで顔を隠した女性が立っていた。
私が「どうしたんですか?」と聞くと、その青年は、
「我々はこの山に来るのが初めてなもので、道に迷ってしまったんです。あなたの服装を見る限り、騎士の方でしょうと思ったので、声をかけたというわけです。街には、どうやって行けばいいのでしょうか?」
と答えた。なるほど、道に迷っていたのか。たしかにこの山はかなり入り組んでいるから、初めて来る人が道に迷うのも無理はない。というか、初めてで道に迷わない人はほぼいない。そういう人は普通にすごい人だと思う。私は、
「街に行きたいのなら、この道を真っすぐ行って、2つ目の角を曲がって…あ、一緒に行きましょうか?そのほうがすぐに分かるかと思いますが…。」
と言ってみる。すると青年が
「そうですか、じゃあ一緒に来ていただけると助かります。」
と言ったので、私は「行きましょう」と言って歩を進めた。しかし青年たちはついてこない。私が
「どうしたのですか?」
と聞くと、青年が笑った。
「あなたが人を信用する人で良かったですよ…これで、ギーザ様のお望みをまた一つ叶えられる…フフフ…」
私は「ギーザ」と聞いてはっとした。この青年…ダークワールドの住人か!
私は体を青年の方に向け、剣に手をかけつつ聞いた。
「なぜ私に声をかけた?お前がダークワールドの住人ならば、騎士などに普通は声をかけまい。」
すると青年は、
「フフフ…知りたいかい?全ては…このためさ!」
ガコン!
「ちょ…何をする!」
私は反射的に叫ぶ。その後周囲を確認した。私はどうやら、カプセルのようなものに入れられているようだった。私が蓋を開けようとしても、鍵がかかっているのか開かない。青年がカプセル越しに話しかけてきた。
「僕の名はジャイロ。ダークワールドの発明家さ。僕らの使命は、君を捕らえること。さあ、共にダークワールドへ行こう。」
私は納得などするはずもなく、
「私などを連れ去ってどうする!早くここから出せ!」
と叫ぶ。すると青年…ジャイロが、
「暴れるな…ゼータ、眠らせて。」
と、隣にいたフードの女性に話しかけた。どうやらあの女性はゼータというらしい。ゼータが呪文のようなものを唱えると…
猛烈な眠気に襲われ、私は意識を失ってしまった。
私が目を覚ましたのは、ある石造りの部屋だった。
「何だここは…牢獄か?だとすればここは…ダークワールドだろうか。」
すると、牢獄番らしき人が私の方へ向かってきて言った。
「ギーザ様がお呼びだ。ついてこい。」
長い石造りの廊下を抜け、螺旋階段を上がる。そして、天井の高い広間についた。私の前には…宿敵であるギーザ。
ギーザが口を開く。
「ジャイロにゼータよ、よくやった。こやつがカール王国の一流騎士、レラで間違いないな?」
すると、あの時の青年が答えた。今は普段着らしい黒い服を着ている。
「はい、間違いありません。」
ギーザは、
「この者をダークナイトとする。ロイスよ、ペンダントを持って参れ。」
ロイスと呼ばれた少年が、「はい」と答えて、月のような飾りがついたペンダントを持ってきた。よく見ると黒い石が埋め込まれている。そして、ロイスたちを含め、ここにいる私以外の人間は皆そのペンダントをつけていた。
「つけてください」
ロイスにそう言われ、私はそのペンダントを首からかける。すると、一瞬視界が歪んだ。
「うっ…!」
猛烈な頭痛に襲われ、私は思わずうずくまる。横でジャイロが口を開いた。
「この者はおそらく以前から忠誠心の強い騎士だったのでしょう…。それはすなわち、ジャイロ様への忠誠につながる」
「う…」
目を開くと、私はベッドに寝かされていて、横にはジャイロとゼータがいた。
「目が覚めたようだね。じゃあ問題を出そう。我々がお守りするべき方は?」
私は即答した。
「ギーザ様です。」
私の答えを聞いて、ジャイロは笑顔になった。
「大正解。よかった、君もこちら側の住人だね。あと、僕には敬語など使わなくていいよ。」
「はい…じゃなかった、うん。」
見た感じ歳は同じくらいだろうか。でもジャイロの方が、圧倒的に身長が高かった。その横でゼータが呟く。
「私達はね、あなたみたいにギーザ様から頂いたペンダントのおかげで、こうして戦えているの。だから、ペンダント、なくさないようにね。」
仮面の下の目が少し笑ったような気がした。なんだか懐かしい感じもする。このゼータという魔術師は…誰かに似ている。でも、思い出せなかった。もしかしたら過去の記憶がほとんどないのかもしれない。でも、きっと私は戦える。
あれから少し経ち、私もだいぶダークナイトとして馴染んできた頃だった。ギーザ様から招集がかかり、私達は広間に集まった。
「本日より、カール王国への侵攻を開始する。ダークナイトは以前告知したとおりに分かれて動け。そして、ジャイロ、ゼータ、そしてレラは、あちら側の強い騎士の相手をしろ。」
「御意」
いよいよ出陣だ。ジャイロが造ったらしいよくわからない車のようなものに乗り、ダークナイトたちに続いて出ていく。
「敵襲!敵襲ー!」
櫓から聞こえた鐘の音に、私は体を震わせた。城で休んでいたときに、敵が来たというのだ。すぐさま従者のレオナルドに装備を取ってこさせる。
「メイジ様、準備ができました。」
私は鎧を身につけ、剣を腰につけた。戦闘訓練は毎日している。だから、そのとおりにやるだけ。
「出陣!」
隊長である私が号令をかけ、出陣する。ふと振り向くと、遠距離攻撃部隊のライカが城の上から見ていた。私と目が合うと、親指を立てた。私はそれを見て笑顔になる。すぐに前を向くと、山の方から黒い鎧の騎士たちが降りてきた。いよいよ始まる。
どうやら最初に来たのは雑兵らしく、そこまで強くはないようだった。しかし、少しずつ敵の数が増えてきて、私も何人かを相手せざるを得なくなった。レオナルドが私の周囲の敵をほとんど斬ってくれるので、私はあまり剣を振らないけど、それでもレオナルド一人では限界がありそうだった。私も剣を構えて、周囲を警戒しつつ戦う。すると、どこからか声が聞こえた。
「待て、その者の相手は私がしよう。お前たちは別の部隊を潰しに回れ。」
敵の雑兵たちがはけて、声の主の姿が見えた。
「久しぶりだな、メイジ。」
私の名を呼んだその騎士は…紛れもなくレラだった。