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翠×黈
こちらはnmmnとなっております。
ご本人様の御迷惑をお掛けしないようよろしくお願いいたします。
お名前は伏せております。
こちらはお名前をお借りしているだけで、
ご本人様には一切関係無いです。
翠『』黈「」心の中()
夕方、翠くんからLINEが届いた。
翠『ごめんね、黈ちゃん。今日、帰るのちょっと遅くなりそう、先に寝ててもいいからね』
黈「ん、わかった!お仕事頑張ってなぁ!」
翠『ありがとう!黈ちゃんもゆっくりするんだよ!』
黈「……よしっ」
スマホを置いた黈は、ぱっと顔を上げた。
(今日は、翠くんの帰りが遅い。)
(いつも翠くんはお仕事頑張ってくれて、疲れて帰ってきても翠くんは俺に優しくしてくれる。美味しいご飯も作ってくれるし洗い物だってしてくれる。)
(自分は、何かしてもらってばっかりや。)
黈「……たまには、俺も翠くんに何かしたいなぁ((ボソ」
ふと、そんな気持ちが湧いてきた。
黈「よし!今日、翠くんにご飯作ったろ!」
料理は、正直苦手だ。
卵焼きは焦がすし、野菜を切れば大きさがバラバラになる。味付けだって、レシピを見ながらやっても何故か上手くいかない。
それでも。
黈「いつもありがとうって、ちゃんと言いたいねん」
黈はスマホでレシピを調べ、エプロンを身につけた。
黈「えっと……まずは玉ねぎ切って……」
トントン、トン。
黈「……あっ」
包丁が指先に当たった。
黈「いったぁ……っ」
慌てて包丁を置き、傷口を確認する。
幸い、深い傷ではなかった。
絆創膏を貼って、少しだけ指を動かしてみる。
黈「……これくらいやったら、大丈夫やんな」
(うぅ、嘘。本当は、ちょっと痛い。)
でも、ここでやめたくなかった。
翠くんが帰ってきたとき、テーブルに自分の作ったご飯が並んでいたら。
きっと、びっくりしてくれる。
もしかしたら、笑ってくれるかもしれへん。
黈「……えへへ」
想像しただけで、頬が緩んだ。
それから、黈は必死に料理を続けた。
レシピを何度も確認して、火加減を調整して、味見をして。
けれど。
黈「……あれ?」
完成した料理を見て、黈は固まった。
思っていたより、見た目がよくない。
(うぇ、?お肉は少し焼きすぎてしまったし、野菜の大きさもバラバラ。味付けも、ちょっと濃い気がする。)
一応、食べられないほどではない。
でも、翠くんがいつも作ってくれる料理とは全然違う。
黈「……なんやこれ」
ぽつりと呟く。
黈「もっと、ちゃんとできると思ったのに、」
何度もレシピを見た。
沢山怪我をしても頑張った。
翠くんが喜んでくれるところを想像しながら、一生懸命作った。
なのに。
黈「……うぅ」
目の奥が、じわっと熱くなる。
黈は慌てて目元を擦った。
黈「泣くな、泣くな……っ。まだ、翠くん帰ってきてへんやん……」
せっかく作ったのだから、食べてもらいたい。
そう思って、料理をお皿に盛り付け、テーブルに並べた。
けれど、改めて見ると、やっぱり自信が持てなかった。
黈は料理にラップをかけた。
黈「……帰ってきたら、温め直したらええし」
小さく呟いて、リビングを離れる。
そのまま寝室に入り、布団を頭までかぶった。
しばらくして。
玄関のドアが開く音がした。
翠『ただいまー。黈ちゃーん?』
いつもなら、ぱたぱたと走ってきて「翠くんおかえりぃ!」と抱きついてくる黈。
けれど、今日は返事がない。
翠『……あれ? 黈ちゃん、寝ちゃった?』
靴を脱いでリビングに入った翠は、テーブルの上を見て、足を止めた。
ラップのかかった料理。
その横には、使った調理器具と、途中まで見ていたらしいレシピの画面がついたスマホ。
翠『……これ、黈ちゃんが作ってくれたの?』
驚いて料理を見つめる。
少し不格好で、盛り付けも慣れていない感じがする。
それでも、自分のために作ってくれたのだと、すぐにわかった。
翠『……そっか』
翠はふわりととても嬉しそうに笑った。
翠『ありがとう、黈ちゃん』
そう呟いてから、寝室へ向かった。
翠『黈ちゃん? ただいま』
布団の中で、黈の肩がぴくっと揺れた。
黈「……っ」
返事をしようとした。
けれど、声が出なかった。
(うぅ、翠くんに会いたい。)
(おかえりって言いたい。)
(頑張って作ったんやでって、笑って伝えたいのに、)
(でも、あの料理を見たら翠くんが、がっかりした顔をするんやない、?)
と思うと、どうしても布団から出られなかった。
翠『……黈ちゃん?』
翠はベッドの端に腰を下ろした。
翠『どうしたの? 具合悪い?』
黈「……なんもない」
くぐもった声。
翠『そっか。でも、何もないときの黈ちゃんは、そんなふうに布団に隠れないと思うな』
黈「……っ、」
図星だった。
黈は唇をぎゅっと結んだ。
翠『……隣、入ってもいい?』
黈「……ん」
翠はそっと布団をめくり、自分も中に入った。
黈は壁の方を向いている。
その小さな背中が、かすかに震えていた。
翠『……黈ちゃん、泣いてる?』
黈「……泣いてへんもん」
翠『そっか』
翠は否定しなかった。
ただ、黈の背中にそっと手を添えた。
翠『じゃあ、泣いてない黈ちゃんを、ぎゅーってしてもいい?』
黈「……なんでやねん、」
翠『んー? それは黈ちゃんを抱きしめたいから』
黈「……っ、」
その言葉に、黈の目からまた涙がこぼれた。
黈「……翠くんの、ばかぁ…」
翠『うん。ばかだよ』
黈「……なんで、そんな優しいん、?」
翠『黈ちゃんに優しくしたいからだよ』
とうとう、黈は声を上げて泣いてしまった。
黈「うぅ……っ、翠くぅん……っ」
翠『うん。ここにいるよ』
黈 「ぅ俺なぁ…っ」
翠『うん』
黈「翠くんに…っ、いつもありがとうって…言いたかってん。」
翠『…うん』
黈「いつも、美味しいご飯作ってくれるし……お仕事も頑張ってくれるし…ぅ俺、なんもできひんから…っ」
翠『うん』
黈「やから、今日くらい…俺が作ったろって…思ってん…っ」
声が震えて、うまく言葉にならない。
黈「でも…っ、全然うまくできひんくて…っ。見た目も変やし、味も濃いし……翠くんに、こんなん食べたら嫌になるやろなって……っ」
黈は布団をぎゅっと握りしめた。
黈「んぅ、おれ、頑張ったんに……っ」
最後の一言は、ほとんど消えそうな声だった。
黈「頑張ったんにぃ……っ、うぅ……っ」
翠は一瞬、言葉を失った。
それから、黈を後ろからそっと抱きしめた。
翠『……黈ちゃん』
黈「んぅ、?」
翠『こっち向いて?』
黈は首を横に振った。
黈「…やだぁ…お顔、ぐちゃぐちゃやもん…」
翠『俺、黈ちゃんの泣いてる顔も好きだよ』
黈「……っ、そういうこと言わんといてよぉ」
翠『ふふ、ごめんね。でも、本当だよ』
翠は黈の頭を優しく撫でた。
翠『黈ちゃんが俺のためにご飯を作ってくれたこと、俺、すごく嬉しい』
黈「……でも……」
翠『でも、じゃないよ』
いつもより少しだけ、はっきりとした声。
翠『俺が仕事から帰ってきて、テーブルにご飯があって。黈ちゃんが俺のことを考えながら、一生懸命作ってくれたんだってわかったら…それだけで、すごく幸せなんだよ』
黈「……っ」
翠『料理が上手かどうかなんて、今はどうでもいいの。俺は、黈ちゃんが俺のために何かしてくれようとした、その気持ちが嬉しいんだ』
黈「ぅほんまに……?」
翠『うん。本当』
翠は黈の手を取った。
そこに貼られた絆創膏に気づいて、そっと指先を包み込む。
翠『……これ、料理してるときに怪我したの?』
「んぅちょっとだけ」
翠『ちょっとじゃ無いでしょ、痛かったね?』
黈「……ぅん」
翠『そっか。痛かったね』
その言い方が、あまりにも優しかった。
責めるでもなく、呆れるでもなく。
ただ、痛かったね、と。
それだけで、黈の涙がまた溢れた。
黈「…っ、翠くん……」
翠『うん』
黈「…ぅおれ、翠くんに喜んでほしかってん…っ」
翠『うん。もう、十分喜んでるよ』
黈「…まだ食べてもないやん……」
翠『食べる前から、こんなに嬉しいんだもん。食べたらもっと嬉しくなっちゃうね』
黈「っ、なんやねん、それぇ……」
泣きながら、黈が小さく笑った。
翠はその笑顔を見て、ほっとしたように微笑んだ。
翠『あ、やっとこっち向いてくれた』
黈「…見んといてやぁ…、」
翠『やだ。黈ちゃんのこと、見たいもん』
黈「……翠くんのどあほぉ…、」
翠『うん。黈ちゃんが好きすぎるどあほだね』
黈「っ、んもぉ……!」
黈は真っ赤になって、翠の胸に顔を埋めた。
翠『ふふ。かわいい』
黈「かわいなぁいもん…」
翠『かわいいよ。世界で一番かわいい』
黈「大げさやぁ……」
翠『大げさじゃないよ。俺の大好きな黈ちゃんだもん』
翠は黈の髪を撫でながら、何度も背中をさすった。
翠『黈ちゃん。今日はいっぱい頑張ったね』
黈「…んぅ?」
翠『俺のためにありがとう』
黈「っ、うぅ……」
翠『でもね、俺のために無理して怪我するのは、ちょっと心配かな』
黈「…ごめん、なさい、」
翠『怒ってるんじゃないよ。黈ちゃんの手も、俺にとって大事だから』
翠は絆創膏の貼られた指に、そっと唇を寄せた。
翠『この手で、俺のことをいっぱい抱きしめてほしいし。手も繋ぎたいし。これからも、ずっと一緒にいたいからね』
黈「…っ!?」
黈の顔が、一気に赤くなる。
黈「…翠くん、ほんま、ずるい……」
翠『そう?』
黈「そんなん言われたら……また泣いてまうやんっ」
翠『じゃあ、泣き終わるまで抱きしめてるね』
黈「…ずっと、?」
翠『うん。ずっと』
黈「…明日も~?」
翠『明日も』
黈「…明後日も~?」
翠『もちろん』
黈はしばらく黙ってから、ぎゅうっと翠の服を掴んだ。
黈「んへへ⸝⸝」
黈「なら、いっぱいぎゅーして……」
翠『はい。喜んで』
翠は黈を腕の中に閉じ込めるように抱きしめた。
少しして、泣き止んだ黈の頭を、翠がぽんぽんと撫でる。
翠『ねえ、黈ちゃん』
黈「……なぁに?」
翠『お腹、空いてない?』
黈「…ちょっと」
翠『じゃあ、一緒にご飯食べよっか』
黈の身体が、ぴたりと固まった。
黈「っ、や、やっぱり…ご飯…」
翠『うん。黈ちゃんが作ってくれたご飯』
黈「…ほんまに食べるん?」
翠『食べるよ。黈ちゃんと一緒にね』
黈「ぅおいしくないかもしれへんで……?」
翠『じゃあ、一緒に食べてみよう。もし味付けが濃かったら、次はどうしたらいいか一緒に考えればいいんだよ』
黈「…失敗しても?」
翠『失敗しても』
黈「…見た目、変でも?」
翠『それも含めて、黈ちゃんが作ってくれたご飯でしょ?』
黈は、ゆっくり顔を上げた。
黈「翠くん……」
翠『ん?』
黈「ありがとぉ……」
翠『どういたしまして』
翠『こちらこそありがとうだよ笑』
黈「えへへ⸝⸝」
翠は黈のおでこに、ちゅ、と優しくキスをした。
翠『大好きだよ、黈ちゃん』
黈「ぅおれも…翠くん、大好き、!⸝⸝」
翠『うん。知ってる』
黈「ぅええ…!なんでよ!」
翠『だって、俺のために一生懸命ご飯を作ってくれたんでしょ? そんなの、愛されてるって思っちゃうよ』
黈「ぅうもう、ほんま…っ⸝⸝」
また顔を赤くする黈を見て、翠は嬉しそうに笑った。
リビングに戻ると、テーブルの上には、ラップのかかった料理が並んでいた。
黈は翠の後ろに隠れるようにして立っている。
黈「ぅうやっぱ、恥ずかしい…⸝⸝」
翠『大丈夫。俺が隣にいるよ』
翠は 料理を温め直し、ふたり分のお皿を用意した。
そして、黈が作った料理をひとくち食べる。
黈「…………」
黈「ど、どう……?」
翠はゆっくり噛んで、飲み込んだ。
それから、黈の方を向いて微笑んだ。
翠『うん。おいしいよ』
黈「…ほんま?」
翠『うん。ちょっと味が濃いところもあるけど、ちゃんとおいしい』
黈「…っ、気ぃ遣わんでええんやで……?」
翠『気なんて遣ってないよ。本当においしい。俺、黈ちゃんが作ってくれたから、もっとおいしく感じるのかも』
黈はじっとすちの顔を見つめた。
やがて、目を細めて笑った。
黈「うへぇ、よかったぁ…((ヘニャ」
その笑顔を見た瞬間、翠は思わず頬を緩めた。
翠『…あー、もう』
黈「…ぅえ?」
翠『黈ちゃん、かわいすぎる』
黈「ぅええ!? なんでやねん!」
翠『だって、そんな嬉しそうに笑うんだもん。俺、今日帰ってきてからずっと幸せだよ』
黈「んぅっ、もうええから、はよ食べてぇ…!」
翠『はーい』
翠は笑いながら、もうひとくち食べた。
黈も隣に座って、自分の分を口に運ぶ。
黈「…あ、ほんまや。ちょっと濃い……」
翠『ふふ。次は一緒に作ろうね』
黈「…ええの?」
翠『もちろん。俺が教えるから、黈ちゃんはゆっくり覚えていけばいいよ』
黈「…ほな、次はもっとおいしいの作れるように頑張るっ!!」
翠『ふふ、楽しみにしてるね』
黈「絶対やで!」
翠『うん。約束』
小指を絡めて、ふたりで笑う。
そのあと、翠は黈の絆創膏をもう一度確認してから、そっと手を握った。
翠『でも、次からは怪我しそうになったらすぐ教えてね』
黈「…ん!」
翠『黈ちゃんが頑張ってくれるのは嬉しいけど、俺は黈ちゃんが笑ってくれてるのが一番嬉しいから』
黈「…翠くん」
翠『ん?』
黈「…今日も、帰ってきてくれてありがとう」
翠『ただいま、黈ちゃん』
黈「……おかえり、翠くん」
翠『大好きだよ』
黈「ぅあ⸝⸝お、おれも、大好きやで⸝⸝』
翠は笑って、黈の頬にそっとその次に口にキスをした。
翠『明日も明後日も、その先も、ずっと一緒にいようね』
黈「うんっ!一緒にいる!」
黈は翠の肩にこてんと頭を預けた。
失敗した料理も、泣いてしまったことも。
今日のふたりにとっては、きっと忘れられない思い出になる。
そして、黈は思った。
次はもっと上手に作りたい。
でも、それ以上に。
大好きな翠くんと、一緒にご飯を食べられることが、何より幸せやなぁ。
コメント
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まさん、第8話読ませていただきました…! 黈ちゃんの「いつもありがとうって言いたいねん」っていう気持ち、すごく伝わってきて胸がぎゅっとなりました。料理頑張ったのに思うようにいかなくて泣いちゃうのも、翠くんにがっかりされるのが怖くて布団の中に隠れちゃうのも、全部愛おしかったです…💧 翠くんの「痛かったね」っていう優しさ、何も責めずにただ受け止めてくれるところ、本当に理想の恋人すぎます…。黈ちゃんが作ったご飯を「ちゃんとおいしいよ」って食べてくれるシーン、ほっとしました🥺 お互いを想い合う気持ちが溢れてて、読んでいて温かい気持ちになりました。素敵なお話をありがとうございます🌙