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aqua.
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柔太郎site
『今日、帰りにまた柔太郎の家行っていい?』
現場に向かおうとした時にきた、だいちゃんからの個人連絡。準備をしていた途中目に入ったそれにドクンと心臓がなる。
まだ袖を通してなかった服をそのままにすぐに返信する。
『全然いいよ、今日早いけどご飯食べにいく?』
『話したいことあるから外食はいいよ』
話したいこと?普段だいちゃんはこんな連絡をしてくることはない。
いきなり?何で?心がざわつく。
『分かった』
それしか、返せなかった。
太智side
「だいちゃんどうしたん?そんな神妙な顔して」
「…んーん、別に…」
「何?体調悪い?大丈夫か?」
佐野さんと舜太が気にかけてくれる中、吉田さんだけ分かったような顔でため息をついた。
「いや!大丈夫!何でもあらへんから!ちょっと寝るわ!」
そう言って目を閉じるけど全く寝る気なんてなかった。しばらくするとガチャ、とドアが開く音がして「おはよ」と柔太郎の小声が聞こえた。俺が寝てるから気を遣ったんだろう。
そんな小さな優しさに胸がきゅうとなる感覚があった。
吉田さんから言われた言葉で色々考えた。でも考えれば考えるほどわからなかった。
でもこの状態でおとなしくできる性格じゃない。はっきりさせな我慢できへん!自分がどう思ってるのかハッキリさせな、むずむずして気持ち悪い!それが結論だった。
「なんか太智体調悪そうでさー」
「そうなの?大丈夫かな…」
「まあ今日は短めだし大丈夫だろ」
吉田さんは分かってるんだろう。素っ気なくそう言う。
「……だいちゃんってさあ、まつ毛ほんと長いよなあ」
舜太が何気なく言う。何となく右に座っていた舜太が自分に近づく気配がした。
「「舜太」」
柔太郎と吉田さんの声がかぶる。
「覗き込んだだけやんー起こさんって」
「そういう問題じゃない…」
小声で不満そうに言う吉田さんに意図を理解したのか舜太が「ごめんってー!」と嬉しそうに言うのが聞こえる。
柔太郎が止めたのはどういう意味なんだろう…なんて、多分俺が思った通りなんだろう。自惚れみたいなものはしたくないけど、あの日の柔太郎の言葉を思い出してむずむずした気持ちになる。
「はいはい!静かにー!寝る奴は寝る!」
佐野さんがそう言って社内は静かになった。多分みんな寝るんだろう。ごそごそと準備をする音が聞こえて、寝息が聞こえてくる。でも、隣にいる柔太郎は寝てないようだった。
「山中さん寝なくて大丈夫ですか?」
「あーうん、今日は大丈夫」
マネージャーの問いかけにそう返す柔太郎の声は何だか緊張をおびているみたいだった。
俺は結局そのまま眠れなくて、隣にいる柔太郎の気配を感じながら、まるで2人きりでいるような気分になった。
それはとても心地いい気もして、不思議な感覚だった。
柔太郎site
「なんか意外と長引いたなー今日」
「柔太郎とだいちゃん、スタッフさんにも表情固いって何回か注意されてたなー珍しい」
「やっぱ疲れ?大丈夫か?本当に」
「あー大丈夫大丈夫!今日だけやから!」
「何だそれ」
「…ごめん」
明るく返すだいちゃんと対照的に俺は自然と真面目に謝ってしまった。
「…え、いやいや!大丈夫やって!心配してるだけやで!」
舜太が気遣うように俺の背中を抱いてくる。周りの反応が逆に申し訳ない。仕事にこんな感情を持ち込んだらダメなのに。だいちゃんまで巻き込んでいるんじゃないかと思うと落ち着かなかった。
怖くてだいちゃんとの撮影シーンは上手く撮れなかった。触るのが、怖かった。
もし俺の気持ちがバレているなら、嫌がられるんじゃないか?なんて考えてぎこちなくなって何度も撮り直しをさせてしまった。
だいちゃんはいつも通りに振る舞っていたけどいつもより笑顔が少なかった。それもきっと、俺のせい。
「俺たち飯いくけど2人はどうする?」
「あ、こっちはさっさと家帰って休むわー!ごめんな!」
「しゃーないよな、2人ともゆっくり休んでや!」
「ま、がんばれ」
よっしーだけ俺に意味深な笑みで俺を送り出した。この前のことが何となく思い出される。
”言わないと伝わらねえぞ”
俺だって、言えるものなら全部伝えたいよ。
「ねえ俺の家で、いいの?なんか個室の店とか、探せばあると思うけど…」
タクシーに向かう途中思わず聞いてしまった。もし知っているなら、嫌なんじゃないか?と。
「柔太郎の部屋でええよ」
そうハッキリ言われて店を探そうとしたスマホを降ろす。俺は、逃げたいと思ってるんだ。
だいちゃんから言われる言葉が、怖い。なんて臆病者なんだろう。
その後ほとんど会話をせず俺の家に向かった。
太智side
「やっぱ柔太郎の部屋って広くてええなあ」
遠慮なくソファに座ると、柔太郎は俺の隣ではなく床に座る。
「何でこっちこーへんの!話しにくいやん」
「あ、ごめんなんか……」
明らかに柔太郎が動揺しているのが分かった。撮影からずっとそうだ。でも俺もそうだったんだろう。
そんな様子の柔太郎を見て、俺はすぐに聞くことにした。
「柔太郎ってさ、俺のことどう思ってるん?」
「……え?何が?」
何も分かってないかのように答えてるけどわずかに声が震えてるのが分かる。
「…俺、泊まった時の夜、起きてたねん」
柔太郎の顔がさっと青くなるのが分かった。
「ご、めん……」
顔を覆う柔太郎の手を強引に剥がしてこっちを向かせる。
「何を謝る必要があるねん!それより俺の質問の答え!」
「え、だって……」
「こ・た・え!」
少し泣きそうな顔の柔太郎に少し申し訳ない気持ちになる。でも、俺は柔太郎みたいに黙ってられる性格じゃないから…。
「俺は…だいちゃんが、その……好き…」
俺の目は見ずに柔太郎が弱々しく言う。珍しい姿。いつも爽やかで余裕のある柔太郎のこんな姿、はじめて見た。
「ごめん、気持ち悪いよね。でも俺、別に伝えようと思ってなくて…寝てると思ってて…」
「何で伝えてくれないん?」
驚いた顔で柔太郎が俺の顔を見る。この部屋に入ってから初めて目があった。
「俺、あれ聞いてからめっちゃ悩んだんやで!どうして俺なんかな、とか本当に好きってその好きなんかなって…」
「そう、だよね…」
「でも、俺頭で考えても分からへんねん。柔太郎に対しての気持ち」
「うん………」
どんどん声が暗くなる柔太郎を見て、自分も覚悟を決める。柔太郎も今までいっぱい悩んでいたんだろう。そう思うとなんだかたまらない気持ちになった。柔太郎の手をぎゅっと握るとびくりと反応される。
「…試して、ほしいねん」
「ため、す…?」
「だから…その〜…キス、とか……」
柔太郎は思いもよらない俺の言葉に固まっていた
柔太郎site
今、だいちゃん、何て言った?
完全にフラれると思っていた。嫌がられると思っていた。迷惑をかけたことを責められると思っていた。
あまりに突拍子も無い言葉にぽかんとしてしまう。
「だって、そうぐらいしか確かめる事思いつかへんもん!そういうのしたら分かるやろ!?多分!」
俺の手をぶんぶんと振り回しながら言うだいちゃんに脳が揺らされる。何で?と思ったが、だいちゃんらしい結論でもある。
「いや、でも、さ…本当に、いいの…?」
おそるおそる確認する俺にだいちゃんはむっとした表情をする。
「何それ、柔太郎はそこ喜ぶところじゃあらへんの…?」
「っ……それは、その…」
だいちゃんとキスするなんて考えたことすらなかった、考えたら本当にいつか行動に起こしてしまいそうで怖かったから。自分のスイッチが入ってしまったらと思うと、とてもそんな想像はできなかった。
「したく、あらへんの?好きって言ったのは柔太郎やろ…?」
だいちゃんが寂しがるような表情で俺に言う。頭が溶けそうな感覚。かけていたブレーキが壊れそうな。
「したくない訳、ない」
だいちゃんの手を握り返す。
「でも、その、したら…俺が、どうなっちゃうか分からないっていうか…」
素直に言葉が出てしまう。もし俺が止められなかったら?だいちゃんが嫌だと思ったら?色んな心配が頭をぐるぐるする。
「あ、やばい。ごめん。気持ち悪いこと言って…俺……」
言った後にだいちゃんにこんな事を言うべきじゃなかったと気づいた。今日の俺は全然何も見えてない。だいちゃんを怖がらせてしまったかもしれない。抑えようとした言葉が俺の意思を関係なく漏れてしまう。
「そんな事、あらへんよ…」
気づいたらだいちゃんに抱きしめられていた。身長差のせいで自然と俺の胸に頭を預ける形になる。
ぴたりとくっつく体、だいちゃんの甘い匂い、優しい声色。俺の心臓の音がだいちゃんに聞こえてしまいそうで。
自分の中の想いが溢れてしまったのが自分でも分かる。もう抑えられない。
「…俺、やっぱ、ダメだね…」
だいちゃんを抱きしめ返す。手が震えてるのが自分でも分かった。
「だいちゃんのことが、好き」
「うん」
「ごめんね、本当に…好きで、諦められなかった」
「柔太郎が真剣に思ってるのはちゃんと分かってるから」
そう言ってだいちゃんが体を離して俺の目を見る。吸い込まれるようにだいちゃんの唇に俺の唇を重ねた。
深追いたくなる感覚を抑えつけてゆっくりと離してだいちゃんを見つめる。
「…嫌、だった…?」
唇をおさえながらうつむいただいちゃんを見て一気に不安がよぎる。
やっぱり、あの時から間違いだった。家になんて誘ってなければ。俺が欲を出さなければ…。
「……なんか、分からへんから、もっかいして…?」
考えていた思考が中断される。耳を赤くしただいちゃんが上目遣いで俺を見つめる。
俺は思わず無言でもう一度キスをしていた。今度はもっと深く。
「だいちゃん……」
目をあげただいちゃんは無言で俺を見つめてくる。その瞳を見た時ブレーキが完全に壊れた音がした。
太智side
ああ、俺男の人とキスしてるんや…しかも、柔太郎と…。
それなのに何でこんなに違和感ないんやろ?
この案を思いついた時点で俺の気持ちは決まっていたのかもしれない。
ただ俺が待っている事に、この状況に耐えられず出した思いつきだったはずだったのに。
柔太郎にキスされた時、そう思った。胸がドキドキしてたまらなかった。俺の発言に戸惑いながら優しくキスをする柔太郎が、どんなに自分を抑えて自分を気遣ってるのか伝わってきて、何だかとても愛おしいと感じてしまった。
三度目のキスから明らかに柔太郎のストッパーが外れたのが分かった。まるで逃がさないかのように俺を抱きしめて、何度も何度もキスされる。その激しさすら、たまらなくなった。
俺が抱きしめ返すと柔太郎が我に返ったのか、動きが止まる。
「ごめん、俺……」
「今のが、本当の柔太郎なんや」
微笑んでそう言うと柔太郎の顔が赤くなる。可愛いとこもあるやん。
咄嗟に俺から離れようとする柔太郎の顔を掴んで、今度は俺からキスをする。
目と丸くする柔太郎に思わず笑い声が出てしまう。
「何で俺からしたのにそんな顔やねん!もっと嬉しそうな顔してや!」
ぽかん、とした後に柔太郎も同じように笑い出す。
「何、それ」
安心したかのようなため息を吐いて頭を抱える。
「あーもう……俺、バカみたいじゃん……」
「でも柔太郎のそういうとこ、好きやで」
笑顔で俺がそう言うと柔太郎はそのままソファに倒れる。
「ほんとだいちゃんには、敵わないなぁ…」
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「おはようございまーす!」
「ああ、おは………え?」
柔太郎の家に迎えに行ったタクシーの中で、いるはずのない太智の元気な声にぎょっとして振り向く。
「はやちゃんおはよ」
「え?おはようだけど…なんで太智いんの…?」
スタッフが今日は太智は別の場所で拾うと言っていたのでどこか出かけているのか、と何も思っていなかった。何で柔太郎の家から?いや、それよりも……。
俺の視線は2人の腕にいっていた。柔太郎の腕にくっついている太智。まるで、恋人のように。
「柔太郎の家にお泊まりしただけやでー」
「ね」
お互いの顔を見て笑い合うのを見て、直感で何かあったと分かった。
いや、この前あんな重そうな空気で話してたじゃん!?俺色々悩んでたんだけど!?
ぐるぐると考えてると仁人がでかいため息をつく。
「あー鬱陶しいわこの幸せオーラ…」
「え?何?これってそういう事!?ズルいやん!俺は仁ちゃんに人前じゃダメって言われ…」
「舜太〜…?」
「あ」
低い声で仁人が舜太を睨むと、舜太が縮こまる。
え?そこも……?
「あ、揃いましたね。出発します〜」
先ほどまで電話していたスタッフが車を動かす。何もかもについていけない俺はただ呆然としていた。
待って、もしかしてこれ、俺だけ取り残されてる……?
楽しそうに離す柔太郎と太智、必死にご機嫌を取ろうと後ろの席から仁人に話しかける舜太。そこ横で俺はただ項垂れるしかできなかった。
いや、みんな幸せなら、それいいか。いいのか…?
俺の混乱をよそに賑やかな車は撮影現場に向かっていくのだった。
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