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(前回からの続きです)
数日後の夜。わたしとお兄ちゃんはいつものようにゲームをして遊んでいた。
「ねぇねぇお兄ちゃん」
「なんだ?」
「この間の話だけど、どういう意味なの?」
「あぁ……えっと、つまり、女の子ならみんなが喜ぶものを撮れば、そのぶんだけ視聴者が増えるってことだ」
「そうなの?」
「あぁ」
「じゃあさ、例えば小学生がスカートめくりされてるところ撮ったら、もっと伸びるってこと?」
「……た、多分な」
「へぇ~……あ、そうだ! ちょっと待ってて!」
わたしは自分の部屋に戻る。そして、自分のパソコンを立ち上げて、お気に入りのサイトを開いた。そこには、いろいろな女の子の写真が載っている。いわゆるエッチな写真ってやつだ。その中でも特にパンチラしている写真をクリックする。
「ふむふむ」
わたしはパソコンの前で腕を組む。
「これならいけるかも!」
次の日。わたしは学校帰りにその足で、近所の公園に向かった。公園の中には、小さな子どもを連れたお母さんたちが何人かいた。
「こんにちは~!」
わたしは大きな声で挨拶をした。ママさんたちはびっくりしてこちらを見てくる。
「あら、こんにちは」
「こんにちはー」
「こ、こんにちは……」
何人かのママが笑顔で返してくれる。わたしはそれを見て嬉しくなって、さらに大きな声を出した。
「あのっ、わたし、動画投稿をしているんですけど、よかったら撮らせてくれませんか?」
「動画?」
「はい! 実はですね、最近人気のyoutubeで、こういうことをしたら、もっとたくさん見られるかな~と思って!」
そういって、わたしはスマホをポケットから取り出す。そこには動物とふれあう子どもの姿が映っていた。
「動画を撮りたいの?」
「はい!」
「ふぅん……」
ママ達は顔を見合わせていた。そして、そのうちの一人が言った。
「いいわよ」
「本当ですか!?」
「でも、条件があるの」
「じょ、じょうけん?」
「そうよ」
「どんな条件でしょう?」
「ちゃんと顔にはモザイクかけてね。ほら、子どもとはいえ、知らない人たちに顔を見せるのは怖いでしょう」
「あっ、はい、わかりました。顔にはちゃんとモザイクかけます!」
……顔にはね。
「じゃあ、撮影始めるよー」
「はーい」
わたしは公園の隅っこで、一人で遊ぶ女の子を撮影することにした。本当は二人きりで遊びたかったけど、流石にそれは断られちゃった。
「よーし、まずはボールであそぼっか」
「うん」
そういってわたしは、サッカーボールを地面に転がした。それを女の子が追いかける。
「とどかない……」
「がんばって! もうちょっとだよ!」
「う、うん」
「いいぞぉ、がんばれぇ」
「よし、とれた!」
女の子は両手を上げて喜ぶ。
「やったね!」
「うん!」
「じゃあ次はね……」
女の子は、今度は砂場で遊び始めた。わたしはそれを後ろの方で見守り、しばらくしたらカメラを持って近づいていく。
「どう? うまくできそうかな?」
「うーん、むずかしいなぁ」
「そっかぁ……でも、大丈夫! すぐにできるようになるよ!」
「ほんと? じゃあやってみる」
「うん、頑張って!」
「おねえちゃんもいっしょにやろう」
女の子はそう言って、わたしの手を引っ張ってきた。
「えぇ? うーん……わかった。一緒に遊ぼうか」
わたしはしゃがみ込んで、泥団子を作り始めた。
「みて、おっきなおだんごできた」
「すごいねぇ、上手だねぇ」
「おねえちゃんも、おおきなのつくって」
「おっけー! こうなったら大きいの作っちゃおう!」
わたしと女の子は並んで座り、黙々と作業を続ける。しばらくすると、女の子が口を開いた。
「ねぇお姉ちゃん」
「ん? なに?」
「なんで動画撮ってるの?」
「えっ、どうしてだと思う?」
「えっと、よくわからない」
「ふふん、正解はね、みんなに見てもらうためなんだよ」
「そうなんだ」
「そうだよ。だって、そうすればもっとたくさんの人に見てもらえるから」
実際、その子と遊んだ動画は、今までにない再生数になった。そのおかげで、わたしのチャンネル登録者も増えていくことになった。わたしは毎日のように、女の子と遊んであげた。公園で。家で。学校で。
もちろん、顔にはしっかりモザイクをかけてある。顔以外の場所には、モザイクをかけなかった。これが、再生数upの秘訣なのだ。でも、やりすぎちゃいけない。あくまで、自然に、映っちゃった、って感じで、しかもばっちり映るように……。
こうしてわたしは、世の中の真実をひとつ知った。だけど、子どもを撮ってる親たちは、やたら再生数が伸びた動画の秘密に気づいているのかなぁ。(終り)