ナッキは首を捻りながら疑問を隠そうともしないで言う。
「ええぇっ? 巨大化ぁ? んーまあ、生まれて一年目に僕は随分大きく育った事はそうなんだけどさぁー、それ以降特段大きくなっては居ないし、他の皆もその時のままだよぉ! だからさ、その仮説は当たらないんじゃないのかなぁ?」
だとさ。
父ナガチカは呆れ返った表情を隠そうともせずに言う、割かし大きめな声だ。
「はっ? 何言ってるんですか? ナッキ殿は勿論ですが、この池の面々ってヘロンの配下の鳥達以外、揃って巨大化しているでしょう? 一メートル越えのモロコとかカエルとか普通は居ませんよ? ナッキ殿の口の中に納まっているサニー殿だって四、五十センチはあるでしょう? あんまり居ませんよ、そんな大きさのギンブナとか……」
「えっ、そ、そうなの?」
「はい」
断言。
コレまで相対的な大きさを見比べては、いつも通りだね、うん今日も小さいね、君は大きいね、そんな感じで閉じられた空間でマッタリと過ごして来た『美しヶ池』のメンバー達は、すくすくと巨大化していた事が、ここに発覚、白日の下に曝された瞬間だったのだ。
んまあ言われてみればそりゃそうだろう、三メートルを越えてグングン成長中のナッキの口の中に納まるサニーが普通サイズの小さなフナの訳は無い、何の抵抗も感じさせずに飲み込まれちゃうからね。
ナッキが、ペェッ! とやる為にはやっぱ四、五十センチのサイズは必要だろう。
ついでに言えばヒットやティガは優に二メートルを越え、オーリであっても一メートルを越える巨体に育っていたのである。
驚いた表情で互いの体をシゲシゲと見つめている池のメンバーの中で、一番最近仲間に加わったニホンザリガニ、いいや、元ニホンザリガニだったで有ろう八十センチ越えのランプがナガチカに問い掛ける。
「あのナガチカさん、ヘロンや哺乳類、えっとナガチカさんの仲間達も、そのぉ、巨大化出来れば石化を防げる、そう言う事なんでしょうかぁ?」
「ん? 確かにその可能性は高いね! 依り代を経験したヘロンやドラゴ、ウチにいるユイやジローもそうだけどね、悪魔と同化した時に精緻(せいち)な魔力回路が形成されるんだよね、んで、悪魔が離れた後、巨大化して回路を維持させているんだよね? だから一般の動物、哺乳類や鳥類も巨大化出来れば石化する前に回路を構築出来る、そう仮定しては居るんだけどねぇー、でもほら? 巨大化なんて土台無理な話だろう? 子供の頃からセノビ○クとか一所懸命に飲んだけど僕自身、憧れの百八十にはギリ、本当にギリギリ届かなかったしねぇー」
まあ、善悪が日本人としては大男の百八十五センチ、義母であるコユキも百七十センチを軽く越えていた事を考えれば父のコンプレックスも当然かもしれない。
しかし、百八十センチ位だった母と比べて十センチ以上小さい記憶しかない父が百七十も有ったのだろうか?
こんな場面で無意味な盛りをするとは思えないし…… 不思議な事だなぁ……
まあ、私にとっては遥か昔に過ぎ去った曖昧な記憶である、そう言う勘違いも有るのかもしれないね。
そんな私の疑問は当然のように届く事は無く、偉そうにしている我が父、ピッチリ身長百六十八センチのナガチカに向けて(ニヤリ)、ニホンザリガニにしては大柄のランプが言う。
「あのですね、若(も)しかしたら皆さんを巨大化? ですか? 出来るかもしれないのですがぁ…… ナッキ様、私の共生生物なんですがね、お見せしても宜しいでしょうか?」
「共生生物ぅ? それで巨大化出来るって言うのぉ? 見せてよっ! ランプぅ、ほらほらぁ、出し惜しみしないでさぁ! 何なの? その共生生物ってぇっ!」
「はい、これなんですけどね」
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