この作品はいかがでしたか?
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「おねぇ、しゃん、おかし、っ、よね?」
突然 舌足らずな言葉でそう投げかけられ、私の思考は停止した。
時刻は夕暮れ。既に日が沈み始めていて、雨上がりの地面に太陽の光が反射している。
振り返り、声のした方に目をやると、二つ結びに赤いリボンを付けた少女が、私を見上げていた。
彼女の瞳に、私が映っている。
「…ね、おかしー、よーね?」
再び少女が口を開いた。
滑舌が悪く聞き取りにくかったが、彼女は確かに私の事を「おかしい」と言った。
心外である。
見ず知らずの少女に「おかしい」と言われる程、私は変な人間だったのだろうか。
自分ではとてもそうは思えない。至って普通の見た目をした女子高生だと思う。
どう返すか答えあぐねていると、少女は突然カーディガンの裾を掴んできた。
何かを伝えたいのだろうか。じっと少女の顔を見つめるが、彼女はずっと無表情のままだ。
「…………えっと。」
口を開く。…が、何と言えば良いのか分からなくて、言葉に詰まってしまった。
なにせ、人に「おかしい」など言われた事が無いのだ。何も言えなくなるのも無理はない。
助けを求めようと辺りを見渡せば、同級生達は皆居なくなっていた。きっと、早々に帰宅してしまったのだろう。
近くで、葉っぱから水が一滴垂れる。ポトンッ、と、高い音が夕暮れの坂道に響いた。
不意に、少女がクイクイッと裾を引っ張ってきた。 そして、 驚く程強い力 で、私の顔を自分の口元に近付けた。
「……え?」
「おねぇ、ちぁ、いーにおい、すーね」
少女が、にへらと不気味な笑みを浮かべる。
この歪な笑顔を間近で見続けていたら、どこか不思議な世界に吸い込まれてしまいそうだ。
それぐらい、彼女の顔は人間らしくなかった。
「ちょっ……、離して、ね? 」
私がそう優しく諭すも、少女の力は緩まない。
今日は災難な日だ。何故こんな恐ろしい思いをしなくてはいけないのか。
今分かるのは、この子は普通の女の子では無いと言うことだけだ 。
少女は、ゆっくりと口を開ける。
まるで、私を食べようとしているかのように。
…………食べようとしているかのように?
そうだ。この子は、私を食べようとしている。 滑舌が悪いんじゃない。舌足らずなんじゃない。
さっきまで言っていた「おかしい」は、「お菓子」で____
全てを理解した次の瞬間、私の視界は真っ赤に包まれた。
Fin…
コメント
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その時、颯爽と駆けつけた寺生まれのTさんが! Tさんは狙いを定め「破ァ!!!!!」と叫んだ。すると、Tさんの両手から青白い光が飛び出し、少女を吹き飛ばした。 「これで安心だな…」そう呟いて片手で煙草に火をつけるTさん。 寺生まれってスゲェ…改めてそう思った。
こういうのとても好きです ありがとうございます
【解説】 表現力が無さすぎて伝わらなかった部分を解説します ・少女……人間を食べる人外。 主人公はクッキーが好きで、いつでもクッキーを持ち歩いていた→「いい匂い(クッキーの匂い)」 ・舌足らずです。滑舌悪いです。後半難しすぎて諦めました。「おかしい」は全部主人公の勘違いです。 ・最終的に主人公は食べられました。