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重たい段ボールを抱えて歩くいるまの隣で、らんは小さな声で息を整えていた。
夕陽が射し込む廊下は人影も少なく、2人の足音だけが響く。
🌸「……本当に大丈夫?」
らんがちらりと横をのぞき込む。
🌸「無理してない?」
📢「平気です」
即答するいるま。
腕に食い込む重さはそれなりだったが、彼女の前で弱音を吐くわけにはいかなかった。
🌸「そっか。 … 本当、頼りになるね」
らんの声は穏やかで、心の奥にじんわりと染み込んでくる。
しばらく無言で歩いたあと、階段の前に差しかかる。
段差を見て、らんは少し眉を寄せた。
🌸「ここは私が … 」
📢「危ないっす」
言葉を遮るように、いるまは軽くらんの肩を押しとどめ、自分が先に段を降りる。
そして両腕でしっかりと段ボールを支えたまま、慎重に下り始めた。
🌸「 … ありがとう、いるま」
上から見守るらんの声が、少しだけ柔らかくなる。
いるまの胸がきゅっと縮む。
📢(……そんな風に言われると、余計に)
階段を降りきったところで振り返ると、らんが微笑みながら近づいてきた。
🌸「ありがと。いるまのおかげで、凄い助かった」
真正面から向けられたその笑顔に、息が詰まる。
📢「 … っ、、いや、大丈夫です」
言いかけて、言葉を飲み込んだ。
どうしても「好きです」とは言えない。
だけど胸の奥で、伝えたい気持ちがせり上がってくるのを抑えるのに必死だった。
段ボールを置いて、いるまがほっと小さく息をついた。
その横で、らんが何気なさそうに首をかしげる。
🌸「ねぇ、いるまってさ … 好きな人とかいないの?」
唐突な問いに、いるまの肩がわずかに跳ねる。
📢「っ … なんで、そんなこと … 」
📢(なんで今?顔に出てた … ?)
🌸「だって、いるまって優しいし、クールに見えて面倒見いいじゃん?
きっとモテるでしょって思って」
らんは軽く笑いながら言う。その笑顔は悪気も探りもなく、ただの世間話の延長。
けれど、いるまにとっては、心臓を一撃で撃ち抜かれる言葉だった。
📢( … 今この人に「好きです」って言ったら … どうなる?)
頭の中で想像して、すぐに首を振る。
そんな勇気はない。
彼女にとって自分は、ただの後輩でしかないんだから。
📢「 … 別に、いないっすよ」
精一杯の平静を装って答える。
「えー、ほんとに? 信じられないなぁ」
らんは少し意外そうに目を丸くし、それから柔らかく笑った。
🌸「でも、いるまなら、きっといい恋ができると思う」
何でもない調子で言われたその一言に、胸の奥がぎゅっと掴まれる。
__だって、その「いい恋」の相手に、彼女自身がいることを知らないから。
📢「 … そうだといいですけど」
いるまの言葉に、らんは少しだけ足を止めた。
窓から差し込む夕陽に照らされ、彼女の横顔がやわらかく赤く染まる。
🌸「 … いるまは、『いい恋』ってどんなのだと思う?」
突然の問いに、心臓が跳ね上がる。
📢「ど、どんなって … 」
思わず言葉に詰まったいるまを見て、らんは小さく笑った。
🌸「私はね … 」
視線を窓の外に向け、ゆっくりと続ける。
🌸「お互いに支え合えて、相手と一緒にいると安心できる。そういう関係がいいな、って思うの」
その声は優しくて、まるで夢を語るようだった。
📢( … それ、全部 … 俺が、会長に感じてることだ)
けれど、口にすることはできない。
唇をかすかに開きかけて、結局言葉は喉の奥で溶けていった。
🌸「 … ふふっ、なんか真面目なこと言っちゃったね」
らんは照れ隠しのように笑い、再び歩き出す。
彼女の背中を追いながら、いるまは胸の奥で叫んでいた。
__本当は、今すぐにでも「俺がそうなりたい」って言いたいのに。