ーーパチンーー
真っ暗な自宅の明かりをつける。どうやら今日は誰もいないようだ。
リビングには、私のご飯すら置かれていない。まるでずっと人が住んでいないような空虚な空間。
(また、あの男のところか。)
すっかり慣れた光景に寂しさももう湧かない。反ってそのことが私を虚しくさせた。
それはきっと、頭の中では諦めていてもどこかで期待した自分がいたから。
私を迎えてくれる、暖かい家族の姿を。
そんな私の考えを無理矢理振り払うと、私は冷蔵庫からヨーグルトだけ持って部屋に向かった。
今は、そんな事実よりもやらなきゃいけないことがあった。
「………」
空になったヨーグルトのカップもそのままに、ベットに横たわり、虚ろに携帯を眺める。
指が画面に近づくほどに、身体中が震える。触れる直前にぴたっと止まった。
(やっぱり…恐い。でも言わなきゃ。今の気持ち。)
深く深呼吸をする。かなり気持ちが楽になった。そして…そのまま画面に触れた。
ーートゥルルルーー
着信音が聞こえ、心臓の鼓動が早まっていく。全身に血が巡っているのが分かる。
少しでも落ち着きたくて、ぎゅっと身を縮こまらせながら反応を待った。
ーートゥルルル、トゥルルルーー
しばらくたっても誰もでない。待てば待つほど、緊張感や不安に襲われる。
やがて、ドキドキは収まっていく。それは諦めにも似た感情。
やっぱり…私とは話したくない…か。
携帯を耳からはなそうとしたその時だった。
ーートゥル…ガチャーー
「……はい。」
感情の読み取れない、無機質な声が聞こえた。
「っ……!!」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!