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お湯
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おこめ。@さぶ
46
💎。視点
退院してから、数日後。
僕はスタジオへ向かった。
声は、まだ出ない。
メモ帳とスマホを鞄に入れて、僕は玄関の前で何度も深呼吸した。
行きたくないわけじゃない。
みんなに会いたくないわけでもない。
ただ、歌えない僕がそこにいていいのかわからなかった。
ないちゃんから届いたメッセージを、もう一度開く。
🍣『無理に収録へ参加しなくていいよ。見ているだけでも大丈夫だから』
僕は少し考えてから、短く返した。
💎『見に行くね。』
それ以上は、何も書けなかった。
スタジオに着くと、りうちゃんが入口で待っていた。
🐤「いむ、来てくれたんだっ」
僕は頷いた。
🐤「体調、無理してない?」
僕はメモ帳を見せる。
💎『うん、大丈夫。今日は見てるだけだよ。』
🐤「うん。それでいいよ。」
りうちゃんは笑ったけれど、
僕はいつものように明るく笑い返すことができなかった。
中へ入ると、初兎ちゃんとアニキが準備をしていた。
🐇「いむくん、来てくれたん!」
初兎ちゃんが、少し驚いた顔をする。
💎『おはよう、初兎ちゃん』
🐇「喉、無理に使ったらあかんで!」
💎『うん。今日は見てるだけだから、大丈夫』
🐇「なら、よし。」
歌わないけれど、僕はいつもの位置へ向かおうとした。
けれど、そこにマイクはなかった。
スタンドも、ケーブルも、名前の書かれた札も消えている。
僕の場所だけが、きれいに空いていた。
🐤「いむのマイク、片づけたの?」
りうちゃんがスタッフさんに尋ねる。
🗣️「今日は発声できないから、いったん外してあります。戻す時にまた準備しますね」
🐤「そっか。」
りうちゃんは納得したように頷いた。
僕も頷いた。
ただの準備だ。
声が出ないから外されただけ。
それなのに、胸の奥がひどく冷たくなった。
ないちゃんが、僕の顔を見て声をかける。
🍣「いむ、ここに椅子置くね。」
僕は頷いて、部屋の端に座った。
いふくんは、少し離れた場所でスマホを見ていた。
僕と目が合っても、何も言わない。
昨日の気まずさが、まだ残っているのだろう。
僕も、話しかけなかった。
音楽が流れ始める。
5人の声が、スタジオの中に響いた。
いつもなら、僕の声が重なる場所。
青組の掛け合いが入る場所。
そこだけ、音が空いている。
いふくんのパートが終わっても、僕の声は続かない。
🐤「……なんか、変な感じするね。」
りうちゃんが小さく言った。
🐇「いむくんがおるのに、歌ってないからかな。」
初兎ちゃんが答える。
僕は笑おうとした。
でも、笑うこともできなかった。
ないちゃんが、すぐに話題を変えた。
🍣「次、サビ前から確認しよう。」
音楽がもう一度流れる。
僕は歌詞カードを膝の上で握りしめた。
声が出ない。
歌えない。
ここにいるのに、いないみたいだった。
休憩に入ると、ないちゃんが僕の隣へ来た。
🍣「来てくれてありがとう。」
僕はメモ帳に書く。
💎『僕の場所、なくなってた』
🍣「今日は声を出さないために外してるだけだよ。」
💎『分かってる』
🍣「なら、そんな顔しないでよ、」
💎『どんな顔?』
🍣「いむが、いむじゃないみたいな顔。」
僕は返事を書けなかった。
”いむじゃないみたいな顔。”
声が出なくなってから、鏡を見ることが増えた。
そこに映る自分は、笑顔の作り方を忘れたみたいだった。
スマホが震えた。
また、メッセージ。
『その空いた場所に、もう戻らないほうがいいんじゃない?』
僕は画面を見つめた。
『あなたが戻ったら、またみんなが気を遣います。』
指先が震える。
『今のほうが、収録はやりやすそうですよ』
僕は急いで画面を閉じた。
🍣「いむ?」
ないちゃんが、僕の顔を覗き込む。
僕はメモ帳に書いた。
💎『何でもない』
ないちゃんは何か言いかけた。
けれど、僕がこれ以上書くつもりがないと分かったのか、何も聞かなかった。
それが、かえって苦しかった。
少し離れたところで、いふくんがマイクを持っていた。
スタッフさんが、いふくんのパートを確認している。
🗣️「今の、よかったです」
いふくんは短く頷いた。
🤪「ん。」
それだけだった。
僕は、自分の空いた場所を見た。
いふくんの隣。
いつもなら、僕がそこに立っていた。
いふくんが嫌そうな顔をして、僕が笑って、みんなが呆れる。
そのやり取りさえ、今日はない。
🤪「ほとけ。」
いふくんが、こちらを見ずに言った。
僕は顔を上げる。
🤪「しんどいなら、帰ればええ。」
心配しているのか、面倒だと思っているのか分からない声だった。
僕はメモ帳に書く。
💎『いふくんは、僕がいないほうがいい?』
書いたあと、見せることができなかった。
僕はその文字を塗りつぶした。
いふくんは、もう何も言わなかった。
収録が終わるまで、僕は部屋の端に座っていた。
誰も僕を追い出さなかった。
誰も僕に歌えとも言わなかった。
それなのに、そこにいることが許されていないような気がした。
帰宅すると、グループチャットに通知が届いた。
🍣『今日は来てくれてありがとう』
ないちゃんからだった。
僕は返信欄を開いた。
💎『こちらこそ』
入力して、消す。
💎『また行く』
それも消す。
…そしてスマホが震えた。
『空いた場所を見ましたよね』
『あそこは、もうあなたの場所じゃないのかもしれません。』
僕は画面を伏せた。
部屋の外には、誰もいない。
なのに、誰かに見られている気がする。
僕は扉に鍵をかけた。
その音が、やけに大きく響いた。
まだ、完全に誰かを疑っているわけじゃない。
ただ、明日またスタジオへ行く勇気だけが、少しずつ消えていた。
学校始まる…毎日投稿…できなくなるかも👉👈
コメント
6件
わぁ…好き