テラーノベル
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#オリジナル
めんだこ
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警報が、鳴り響いていた。
赤い光が、施設内を染め上げる。
「アルト!」
走りながら、シオンが叫ぶ。
「もう止まらない!」
その声には、焦りと、決意が混ざっていた。
アルトは端末に手を走らせる。
「止める!」
怒鳴るように言う。
「まだ、間に合う!」
だが、画面に映る数値は無情だった。
環境改変プログラム、臨界点突破。植物進化加速、制御不能。
「……くそっ……!」
歯を食いしばる。
「シオン、お前何をした!」
振り返る。
その先で、シオンは静かに立っていた。
逃げるでもなく、慌てるでもなく。
ただ、受け入れている。
「……選んだんだ」
低く、言う。
その声は、驚くほど落ち着いていた。
「もう、人間じゃ止められないなら」
一歩、前に出る。
「世界ごと変えるしかない」
アルトの目が、見開かれる。
「ふざけるな!」
怒声。
「そんなことして、何が残る!」
シオンは、ほんの一瞬だけ目を伏せた。
そして、答える。
「……世界だよ」
その一言が、すべてだった。
「人間がいなくても、続くもの」
アルトの拳が震える。
「だからって……!」
「アルト」
シオンが遮る。
その声は、優しかった。
「もう、壊れてたんだ」
静かに言う。
「全部」
その瞳には、涙も、怒りもなかった。
ただ、諦めと――覚悟だけがあった。
「……俺は、認めない」
アルトは低く言う。
「そんな終わり方」
そのまま、端末に手を叩きつける。
「中枢を落とす!」
シオンの目が、わずかに揺れる。
「やめろ」
「止めるんだよ!」
アルトは振り返らない。
「まだ、間に合う!」
「間に合わない!」
初めて、シオンが声を荒げた。
空気が、張り詰める。
「もう、遅いんだよ……!」
その言葉には、悲鳴のような響きがあった。
沈黙。
ほんの一瞬。
わかっていたもう止まらないことなんて
だがそれでも、
「……それでも」
アルトは、止まらない。
「やる」
その指が、起動キーに触れる。
シオンは、一歩だけ近づいた。
けれど。
止めなかった。
ただ、見ている。
アルトが選ぶのを。
――起動。
装置が、唸りを上げる。
システム衝突。強制停止プロセス開始。
だが。
同時に。
進化プログラム、最終段階へ移行。
生命反応を検知予備コードスリープ接続。
「……っ!」
アルトの目が見開かれる。
「なんで……!」
「言っただろ」
背後で、シオンが呟く。
「もう、止まらないって」
その声は、静かだった。
すべてが、同時に進む。
止めようとする力と、進めようとする力。
そして。
どちらも、止まらない。
やがて。
光が、すべてを飲み込んだ。
※※※
崩れゆく施設の中でコールドスリープの機械がアルトを包む
アルトは、シオンを見た。
煙の向こうで、立っている。
「……シオン……!」
声を張る。
その中で。
シオンは、わずかに笑った。
「ごめん」
その一言だけが、届く。
「でも」
崩れる音の中で、続ける。
「これでいい」
アルトは手を伸ばす。
届かない
「やめろ……!」
叫ぶ。
「そんな顔で言うな……!」
シオンは、もう動かない。
ただ、静かに。
「……生きて」
その言葉を、最後に。
視界が、崩れた。