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#bl注意
ゆゆゆゆ
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#Nosferatu
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コメント
1件
第23話、読み終わりました…。視覚を封じられたことで研ぎ澄まされる音や気配の描写が本当に繊細で、ノス♡♡♡トゥの緊張と抗えない感覚が手に取るように伝わってきました。特に最後の鏡のシーン――自分の姿を直視させられてなお、苦しさの中に「満たされている」自分が映る、あの矛盾が凄まじくて思わず息を呑みました。支配されていく過程の丁寧な心理描写、とても好きです🖤
部屋は暗かった。
灯りは少ない。
赤い蝋燭の火だけが、
どこか遠くで揺れている。
ノスフェラトゥは椅子へ座らされ、
静かに呼吸を繰り返していた。
視界は黒い布で塞がれている。
目隠し。
それだけで、
妙に落ち着かなかった。
吸血鬼である彼にとって、
視覚は強い感覚のひとつだ。
それを奪われる。
たったそれだけなのに。
世界から切り離されたみたいな不安が、
じわじわ身体へ染み込んでくる。
喉には首輪。
そこから伸びる鎖が、
しゃら、と小さく鳴った。
その瞬間。
ノスフェラトゥの肩がびくりと震える。
「……っ」
どこにいる。
そう聞きたいのに、
声が出ない。
代わりに聞こえるのは、
衣服の擦れる音だけ。
コツ、コツ。
革靴の音。
ゆっくり歩く気配。
近い。
いや、
今は後ろか。
そう思った瞬間。
耳元で低い声が落ちた。
「そんなに緊張してるの?」
「……!」
ノスフェラトゥが息を呑む。
近い。
吐息が耳へ触れる距離。
なのに、
触れられない。
それが余計に感覚を鋭くする。
スペクターはくすりと笑った。
「見えないと弱いね」
「……うるさい」
声が掠れる。
すると。
不意に。
指先が喉元をなぞった。
首輪。
その金具を軽く鳴らす。
カチ。
「ッ……!」
たったそれだけ。
なのに背筋が震える。
スペクターはまだ、
まともに触れてすらいない。
だが。
どこへ来るかわからない恐怖と、
次を待ってしまう期待が、
頭をじわじわ痺れさせる。
鎖が、ゆっくり引かれた。
くい。
ノスフェラトゥの身体が自然に前へ寄る。
「そう」
スペクターの声。
低く、
甘い。
「ちゃんと来る」
その声だけで、
喉が熱くなる。
視界がない分、
声が直接脳へ落ちてくるみたいだった。
衣服の擦れる音。
指先が空気を裂く気配。
次はどこだ。
耳か。
喉か。
髪か。
考えるたび、
身体が勝手に緊張する。
そして。
不意に。
指が頬へ触れた。
「……ぁ」
ほんの一瞬。
それだけなのに、
ノスフェラトゥの呼吸が乱れる。
スペクターは満足そうに笑う。
「敏感」
「……ちが……」
否定しきれない。
見えない。
だから、
わずかな接触だけで身体が跳ねる。
スペクターは後ろへ回った。
長いコートが擦れる音。
その気配だけで、
ノスフェラトゥの背筋がぞくりと粟立つ。
「ねぇ」
耳元。
「今、どこ触られると思った?」
「……ッ」
図星だった。
ノスフェラトゥは唇を噛む。
完全に遊ばれている。
なのに。
頭の中は、
スペクターの気配だけで埋まっていく。
鎖がまた鳴る。
しゃら……。
その音が、
もう“次が来る合図”になっていた。
スペクターはしばらく何も触れなかった。
ただ。
ゆっくり呼吸し、
近くを歩き、
時折鎖を揺らすだけ。
それだけで。
ノスフェラトゥは、
自分でもわかるほど落ち着きを失っていく。
「……っ、スペクター……」
無意識だった。
呼んでしまった。
スペクターが笑う。
「どうしたの?」
「……」
「許してほしい?」
甘い声。
ノスフェラトゥは返事ができない。
悔しい。
だが。
その時。
鎖が強く引かれた。
「……!」
身体が前へ引かれる。
立たされる。
そのまま数歩、
導かれるように歩かされた。
コツ、コツ。
革靴の音。
そして。
不意に、
目隠しが外される。
視界へ飛び込んできたのは――。
巨大な鏡。
その前に、
鎖へ繋がれた自分。
ノスフェラトゥの瞳が揺れる。
黒い首輪。
細い鎖。
乱れた呼吸。
そして。
スペクターへ身体を預けるみたいに立つ、
“堕ちた姿”。
「……ッ」
息が止まりそうになる。
見たくなかった。
だが。
鏡は残酷だった。
全部映す。
自分がどれだけ反応しているか。
どれだけ、
スペクターの声ひとつで震えているか。
スペクターは後ろから抱き込む。
赤い瞳が、
鏡越しに細められる。
「ほら」
首輪へ指が触れる。
しゃら、と鎖が鳴った。
ノスフェラトゥの肩がまた震える。
鏡の中。
その姿を見て、
スペクターは愛おしそうに笑った。
「かわいい」
「……やめろ……」
掠れた声。
だが逃げない。
逃げられない。
スペクターは耳元で囁く。
「ちゃんと見て」
「今の君」
ノスフェラトゥは鏡を見つめる。
かつて誰にも従わなかった怪物。
古代吸血鬼の反逆者。
その面影は、
まだ残っている。
なのに。
スペクターの腕の中で、
熱っぽく呼吸を乱し、
鎖を繋がれたまま震えている。
そんな自分がいる。
そして何より恐ろしいのは。
鏡の中のその顔が。
苦しそうなのに、
どこか満たされて見えることだった。