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・:.。.・:.。.



誰もいないバス停に晴美だけだポツリと一人座っている



メディアが嗅ぎ付けたのだろう、バス停の屋根の上から上空でヘリコプターがホバリングしているのが見える



バス停のロータリーには閉鎖されているのでバスも車も入ってこなく人っ子一人いない



やがて一台の黒のレンタカーがバス停に停まった、真希が晴馬を抱いて降りて来た




「こんにちは」


「こんにちは・・・」




真希は晴美の隣に座った



ドキン・・・ドキン・・・落ち着くのよ!私、真希ちゃんを刺激しちゃダメ!晴美は何度も唾を呑み込んだ




「晴馬ちゃんは元気?」


「お腹が空ているみたいだけどミルクを飲まないの」


「私がお手伝いできるかもしれないわ」



そう言って晴美は授乳ケープをポケットから出して首に巻いた、その下でブラウスのボタンと授乳ブラジャーのホックを外して準備をする




「さぁ・・・できたわ・・・その子を貸して」



そっと真希が赤ん坊を晴美に渡した、ずっしりと赤ん坊の重みが晴美の腕に伝わり、柔らかな温もりが胸に広がる、ハラハラと晴美の目から涙が溢れ、頬を伝って顎の先で滴った




ああ・・・もう二度とこの子を抱けないと思っていた、ツンツンと乳首で晴馬の唇を突くと、カポッと吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)で勢いよく乳首に吸いついた、途端にコンセントに電流が繋がれたかのように乳房が張り出し、母乳が溢れ出す



今や晴馬は吸いつかなくても溢れてくる母乳をゴクゴクと飲み、晴美の心は感動で震えた



この子は生きている・・・本当にここにいる



ふと晴美が真希を見ると、彼女の頬にもハラハラと涙が流れていた。真希の目は晴馬を見つめ、愛おしさと後悔が混じった複雑な光を湛えている




「少し体重が重くなってるわ・・・肌艶もいいし・・・」


「とっても良い子だったわ」



二人は見つめ合い、言葉を超えた何かで繋がっていた、晴美は無言で授乳を続け、真希はその姿をじっと見つめていた、やがてお腹いっぱいになった晴馬はチュポンッと乳首を離し、小さな口から満足げな吐息が漏れる



晴美は授乳ブラジャーのホックを止め、シャツを整え、授乳ケープを畳んでポケットに押し込む、晴馬を立て抱きにして肩に預け、軽く背中を叩くと小さなゲップが辺りに響いた



「真希ちゃ・・・」



その時、大声で怒鳴る男の声が場を切り裂いた




「真希ーーー!その子を返せ!!」





康夫がこっちに向かって猛ダッシュしてくる、警察官が制止しようとする手を振り払い、赤い顔で突進してくるその姿は、まるで獲物を追う獣のようだった




「ちっ!」




真希の顔が一瞬で強張り、すかさず晴美の腕から晴馬を奪い取った、晴美の腕が空っぽになるのと同時に、真希はくるりと身を翻して走り出した




「まって!真希ちゃん!晴馬を返して!」





晴美の叫び声がショッピングモールの喧騒に響く、康夫もまた全速力で追いかけ、怒号を上げながら真希の背中を追う、真希は晴馬をしっかりと抱きしめて雑踏の中を巧みにすり抜けていく

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