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32 ◇家電の買い物/2度目
給料日から4日目は休日で、ゆっくりすれば良かったのだが―――
にもかかわらず、美代志は7:30頃には目覚めた。
朝食は、起きてからコンビニに買いに行こうと思っていたのだが、昨日、
夕飯と一緒に由香が食パンを買い置きしていてくれたので、美代志はそれを
食べることにした。
フライパンで弱火で時間をかけて焼き、コーヒーを淹れて食べた。
食べ終えたところで、散歩を兼ねて昼食の買い出しに出掛けようかと
身なりを整える。
そして玄関で靴に足を入れたところでインターホンが鳴った。
行き違いにならなくてよかったと思いつつ、鍵を開けた。
予想通り、由香がドア越しに現れた。
「あー、美代志くん、出掛けるところだった?」
「おはようございます。ちょっと散歩がてら出掛けようかと……」
「じゃさっ、冷蔵庫とかこのまま見に行っちゃわない?」
「僕も冷蔵庫見に行きたいと思ってたところです。
じゃあ、お金の用意をするので少し待っててもらえますか?」
「うん、じゃあ車で待ってるね」
「はい」
美代志は奥の部屋に戻り、家電用に一万円札を多めに財布に入れ、そして
待ってもらっていた由香の車に乗り込んだ。
◇ ◇ ◇ ◇
由香がよく利用する家電ショップでは、すぐに気に入った冷蔵庫が見つかり、
購入を決めたのだが―――。
配達は平日だと2~3日後になる。
そして休日での配達だと2週間になると言われる。
それを横で聞いていた由香が1人暮らしなのですぐにでも搬入してもらわないと
困ると言い放ち、少しごねてみせた。
「うちは、ずっとこちらで家電製品購入しているけど……」
そう言うと、由香は店員に会員カードを提示して見せた。
「ああ、この子は遠縁の子なんだけど……今日の搬入がだめなら余所で
買うしかないのかなぁ~」
店員がカードからパソコンで蒼馬家の購入履歴をチェックしている間、
由香はさりげなく牽制するように言い、とぼけて見せた。
今回のことはオオバ―かもしれないが、とにかくちょっとしたことなら
悪意のないごり押しというものは、大切なことである。
だって、美代志が一週間ほど更に不自由を強いられるか否かの瀬戸際なのだ。
「夜遅くになるかもしれませんが、それでもよければ今日中に搬入させて
いただきます」
ついに由香は、店員からそう言わしめた。
横で一部始終を見ていた美代志は、自分より人生を長く経験している先輩に
敬意を払わずにはいられなかった。