テラーノベル
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見上げると、今まさに真っ赤に実った実が、緑と赤の綺麗なコントラストを見せている。
「食べごろね」
「はい、なので収穫しちまおうと思いまして」
ふと横を見れば、収穫した実を入れるためだろう。かごが置かれていた。
「私も……手伝っていい?」
「……本当は、お止めしたいところなんですがね」
「ふふっ」
リリアンナは微笑みながらふと周りの木を見て、思わず「え?」とつぶやいた。
「どうなさいました?」
いま、自分たちがいるすぐそばの木は実が食べごろのものばかりだ。なのに右隣、王都から戻ってきた日に真っ赤な実を付けていた木は、すでに収穫を終えて葉っぱだけになっていた。
そうして……不思議なことに逆サイド――左端の木は、まだ青い実を付けたままだった。
「不思議ね」
「……?」
「どうして、こんなに実のなり方に差があるのかしら? 同じ時に植えた木でしょう……?」
ましてや、植えられた場所にもそんなに立地的な差異はない。
「それはですね、お嬢様」
脚立を立てながら、ジャンがニヤリと笑う。
「実は、旦那様のご指示があったのです」
「ランディの?」
「はい」
ジャンは得意げに頷いた。
「お嬢様が王都からお戻りになる頃には、実を召し上がれるようにして差し上げたい、と」
リリアンナは驚いて目を瞬かせる。
「確かに……私が帰った時に、こっちの木の実はすぐ食べられた……。まだ収穫期には早かったはずなのに……どうして? って思ってたの」
「ええ。本来ならばあんなに早い時期の収穫は難しゅうございます」
ジャンは穏やかに笑った。
「実は旦那様が魔石をご用意くださいましてね。夜は温室ヴェールを張り、あの木の周りだけ地温を保つよう手配してくださったんです」
「温室ヴェール……」
「ええ。あとは土の具合を見ながら、私が水や肥料を調整いたしました」
だから最初の一本だけ、早く実ったのだという。
「旦那様は『ジャンが頑張ってくれた』としか仰いませんでしたが……」
ジャンは照れくさそうに頭を掻いた。
「私一人では、とてもあそこまでは出来ませんでしたよ」
リリアンナは、赤く色付いた実を見上げた。
あの日。
王都から戻ってきて、この木に実った初めての林檎をランディリックやナディエルと一緒に食べた。
あの時は、ジャンが腕によりを掛けて育ててくれたのだとばかり思っていた。
でも……その裏で、ランディリックがそこまで心を砕いてくれていたと知って、胸の奥がじんわりと温かくなる。
「さすがに手間もコストもかかる作業なんで、一本ずつが関の山なんですがね。そのおかげで、一本ずつ収穫時期をずらせて……長いこと美味しい実が食べられるって寸法です」
最近はつわりのせいで、口に出来るものが限られている。
そんなリリアンナにとって、庭で採れる瑞々しいミチュポムは、何よりありがたい存在だった。
(……本当に、あなたは)
ジャンの言葉を聞きながら、リリアンナはランディリックの深い愛情を感じていた。
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コメント
2件
ランディー!!!!🥰
読みました〜!😭💕 ジャンが「旦那様のご指示」って言った瞬間、胸があったかくなった…! リリアンナのつわりで食べられるものが限られてるのに、収穫時期をずらして長く楽しめるようにって、ランディの細やかな愛情がすごく伝わってくる…。「本当はお止めしたい」と言いながらも手伝わせてくれるジャンとのやりとりも好きです。裏で誰かが動いてくれてたって知るの、エモすぎますね…! 次話も楽しみにしてますね!🌸