「だれも気づかなかったのに」
正午過ぎ。オフィス内がざわめき出し、私はパソコンデータをきりのいいところで保存した。
デスクチェアのイスにもたれ、はあっと息を吐き出すと、おとといの夜、 紀坂(きさか)と泊まったことが思い出される。
あの日の朝―――紀坂はホテル玄関のタクシー乗り場まで送ってくれた。
別れ際、彼に「また連絡する」と言われ、躊躇う気持ちもあったけど、突っぱねることは頭に浮かばなかった。
その後紀坂からの連絡はなく、 日比野(ひびの)からも入っていない。
あの朝家に帰り、まだ日比野がいたらどうしよう、と思ったけど、それは 杞憂(きゆう)で日比野はもう家を出た後だった。
上野で見かけてから連絡もないのが救いで、今朝化成品部から聞こえてきた話では、おとといから関西出張中らしい。
メッセージすらこないところを見れば、かなり忙しいのだろう。
(私も早********
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