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ダンスとステップ

1 - ダンスとステップ

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2025年05月23日

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どちらかと言うとgt+ky











































箪笥に仕舞ってあった三つ揃えを引っ張り出しては柄にも無く着合わせる。そのまま緩りと足を動かし、次第に腕を、そして身体全体を大きく、靱やかに…。腕を伸ばしターンを決めて足を滑らせる___。









「案外踊れんじゃん。」

「……まぁね、それなりしょ?」


つっけんどんな返事をしてはスーツのジャケットに手を突っ込んだまま目の前の相手を一瞥する。


「用は済んだでしょ、もう帰って。」


顔を再度見ることなく部屋を出ようと扉に足を向ければ腕を引っ張られる。すると引っ張った正体の体温に包まれた。


「……何、ガッチさん。」

「もっかい、ねぇキヨ、俺と踊ろ。」

「何言ってんの、見様見真似で踊っただけなんだから無理。」

「良いよ、俺がリードする。」


ガッチマンは首筋に鼻を持っていけばすん、と鼻を鳴らし匂いを嗅ぐ。キヨは居心地が悪くなったのか身動げばガッチマンを押し返した。


「駄目?」

「……1回だけね。」


ん、と手を差し伸べたキヨにガッチマンは困ったように笑う。


「リードするのは俺だよ?」

「その調子でリード出来んの?」

「おっと、舐められてるねこりゃ。」


肩を震わせ少し笑ったガッチマンは同じく三つ揃えで。




__事の発端は今日ガッチマンが招待されたパーティだった。


そのパーティも無事に終え土産を渡す為寄ったキヨの家でガッチマンは何気無く問うた。


「キヨって踊れる?」

「…はぁ?何、急に……。」

「…いや、ただ踊れんのかなって。」

「パーティに感化されたワケ?」


キヨはそう言っては悪戯に笑った。


「何に感化されたの、気になるわ。」

「…コレ。」


ガッチマンはスマホで撮っていた優雅なダンスをキヨに見せた。キヨは少しの間動画を見た後に少し身体を揺らし踊り始めた。


「スーツ姿で踊ってみてよ。」

「…新手のプレイ?」

「わぁ、えっちだね。」

「ウッワ、サイテー。」

「言い出しっぺはそっちでしょうが」

「へいへい、やってあげるから無かったことにして。」

「んー、仕方ない、やってくれるならいいよ。」



__と言うことで今に至る訳だが…。



「ほら、いち、に、さん、のリズム。」

「いち…に…さん……」


キヨは足元を見詰めガッチマンの足を踏まないように、リズムを取るために奮闘していた。ガッチマンは慣れた様子でキヨの指を絡め取り、腰に手を当てがった。


「ッ、え、」

「ん?これが普通だけど。」

「……そ、」


真ん丸な目をガッチマンに向けた後に再び足元に視線を落とし小さな声でカウントを取るその姿にガッチマンは笑った。


(何気ない提案だけど、これはこれでありかもな)


ふとそんなことを思ったガッチマンは絡めた指に力を入れた。途端、顔を赤くしたキヨが顔を上げてガッチマンを見詰めるので細めた双眸をお返しするとモゴモゴと口を動かしてまた俯いてしまった。そんなキヨを他所にステップを踏み、不意にキヨにターンをさせた。


「うわぁっ!?」


予想外の事にバランスを取り切れなかったキヨはグラリとバランスを崩し倒れそうになり目をぎゅっと瞑る……も、予想していた衝撃が来ることは無かった。その代わり腰辺りに手が這うた。


「…あんがと」


耳に紅を落とし目を逸らし感謝を述べるキヨにガッチマンは口元を歪ませた。


「いいよ、急にターンさせたのはキツかった?」

「…そんなことは無いけど…、」

「けど…?」

「……なんも無い、もっかいしよ。」


ガッチマンの手を握り直したキヨはじっ、と目を見詰めそう言った。その様子にガッチマンは目を見開くも直ぐに表情を取り直しいち、に、さん、と小さく合図を送る。


2人きりの部屋にまるでオーケストラが来たかのような優雅な音楽が聞こえ始める。窓から差し込む陽の光がスポットライトのようで質素な部屋を彩っていた。互いの体温を分け合うように寄せあった身体と握り締められた手が2人の、互いの存在を主張していた。ガッチマンはキヨの顔を見詰めながらステップを踏み、再びターンを仕掛ける。キヨはそれに応え優雅に回って見せればぴったりとガッチマンの身体に寄り添う。異常な世界でもこの部屋だけはただただ幸せだったらしい。殺人だとか自分で命を絶つだとか憎しみが籠った事件だとか…そんなニュースが蔓延っていても幸せは何処かにある、そんな言葉に今は頷けるような気がした。何せガッチマンは想い人と手を繋ぎ、剰え身体をくっ付け合わせて踊っているのだから。


「ねぇ、ガッチさん、リフトしてよ」

「…仰せのままに。」


キヨがガッチマンの首に腕を回し、ガッチマンは片手でキヨの腰に手を当てる。そのままキヨが床から足を離せばガッチマンはターンをして見せた。


「んは、すげぇー。」

「そりゃどうも。」


楽しげに笑ったキヨにガッチマンは目を細めた。リフトが別れの合図だったのか ぱっ、と身体を離したくキヨに少し眉尻を下げた。


「ん?」

「ん、あぁ何も無い。」

「まだ踊っていたかった?」

「いやいや、そんなわけ。リフト強請られてもう限界でーす。」


ガッチマンは手をヒラヒラと振ってはそう言った。キヨはケラケラと笑えばごめんごめん、なんて平謝りを。


「…ねぇキヨ、踊ってくれてありがと。」


ガッチマンはそう言ってはキヨの手を取り指にキスを落とした。


「……いいよ、偶には悪くないね。こーゆーの。」


満足気に笑ったキヨは頬を赤らめた。























「今日はいい日だ、死んじゃう前になあなあで生きましょう。」


スーツを着て踊る2人。 このダンスを最後にしようとしてるgt。詰まるところ別れ話です。見方によれば実るけど作者的には実りません。もし実ると思って見てた人はそれを踏まえて2周目行くなれば行ってらっしゃい👋🏻

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