学校も終わって、やっと我が家に着いた。鍵でドアを開け、玄関に入ったその瞬間、私は膝からガクリと崩れ落ちた。だ、ダメージが大きすぎる……。
「高校生にもなって、先生にあんなに怒られるとは……」
予想はしていた。宿題をやってこなかったことで怒られることは。しかしである。宿題をしてこない常習犯として認識されていた私は、反省を促すために先生から激怒されたのだ。
「いいじゃん宿題くらい! 見逃してくれたって! なのに、男子も見てる前で公開説教だなんて。もし男子の中に運命の王子様がいて呆れられたりしてたら、私、立ち直れない……」
あー、もう嫌だ。怒られた上に、追加で宿題を追加で出されてしまったし。よし、今日こそ絶対に宿題をして……あ!!
私は一度自分の部屋に戻って自転車の鍵を手に取った。そしてマンションの駐輪場まで猛ダッシュ。そのままの勢いで自転車を猛スピードで走らせた。
「宿題、学校に忘れてきたーー!!」
もう、あんなお説教なんか二度と食らいたくなかった。だから今日こそ絶対に宿題をする! してみせる! と気合を入れていたというのに、まさかそれを学校に忘れてくるとは……あり得ないな。自分のバカさ加減にさすがに呆れてしまう。
「はあ……はあ……つ、疲れる……」
自転車を勢いよく漕いで漕いで漕ぎまくってたら、体力ゲージがどんどん削れていった。今はもう、完全にゲージはゼロ。日頃の運動不足がたたってしまった。元々、私は運動が苦手だ。だから帰宅部なわけだし。
って――
「ああ!! 危な……ぐえぇ!!」
ペダルから足を滑らせて、その際にハンドル操作を間違えて、そのまま自転車ごと電柱に激突。痛い……。思いっきり頭をぶつけてしまった。
「イタタタ……まさか電柱にぶつかって転倒しちゃうなんて。あーあ、自転車も。私って、もしかして世界一不幸な女子高生なんじゃないの……?」
とりあえず、勢いよくぶつけた頭――額を触って確認。良かった、血は出ていないみたいだ。だけど、自転車のフレームが完全に曲がってしまっている。これでは使い物にならない。
「宿題なんて、いいか……」
もうどうにでなれと、私は半ば投げやりにコンクリートの上で大の字に寝転がった。通行人がちらちら見てくるけど、誰一人として助けてくれようとしない。世間って結構冷たいな、と。心の底から思い知らされた。
でも違った。皆んなが皆んな冷たいわけではなかった。
「おいお前、大丈夫か?」
私に声をかけてくれた人がいた。声で分かった。男子だ。私は一度、起き上がってその人の姿を見やった。
我が目を疑った。
その美しさに。
「白馬に乗った王子……様」
その男子は私と同じ高校の制服を着ていた。不思議な魅力に溢れていた。
長くて綺麗な黒髪。整った顔立ち。少しだけ悪い目つきはしていたけど、それが逆に、私にとって魅力的に映った。
一言で言えば、イケメン。
こんなにもカッコいい男子に声をかけてもらえるだなんて。私は世界一幸せな女子高生だと思った。
でも、このすぐ後に私が彼に抱いた印象はこうだ。
この人、とにかくめちゃくちゃイヤな奴!!
『第3話 出逢いは突然に』
終わり
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