テラーノベル
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その時――涼ちゃんの心の中で、どうしようもない絶望があふれ出した。
「もうだめだ――ここにもいられない」
突然「ドンッ!」という大きな音が教室に響いた。
椅子が倒れ、みんなが驚いて涼ちゃんのほうを振り返る。
涼ちゃんは顔を伏せたまま、涙で滲む視界の中、
全力で教室から飛び出した。
廊下を必死に走る。誰にも見られたくない。
どこにも行き場がないとわかっていても、ここにはもういたくなかった。
教室の中では、生徒たちが一瞬あっけに取られ、
そのうち、心配そうなふたりが追いかけて廊下へと飛び出した。
「涼ちゃん、大丈夫!?」「待って!」
でも、廊下を必死に駆けている涼ちゃんの背中を見つけたとき、
ふたりはそっと立ち止まった。
今の涼ちゃんには、声をかけても、
きっと何も届かない――。その背中に声をかけることもできず、ただ立ち止まってしまった。
「今は……追いかけちゃいけない」
そんな思いがふたりの心に浮かんで、
追いかけるのをやめた。
涼ちゃんの小さな背中は、
長い廊下の向こうへと消えていった――。
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