テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……りょうへい?」
呼びかけても返事はない。
安いヘッドフォン特有のノイズだけがヘッドセットの奥でかすかに鳴っている。
「え、誰か近くにいないの?」
焦った声が重なる。
けどこのマイクラはリモートだ。
リアルで繋がりがあるのも仲の良い人だけ。
まして住所まで知っているなんてそこからほんの数人。若しくはいないかもしれない。
誰もそこにはいない。
画面の中のりょうへいのキャラはまだ同じ場所で動き続けている。
壁に向かって意味もなく。
「これやばくない…?」
ずきんが言ったその言葉で、ようやく同じことを考えていたと気づく。
笑えない。
ネタにもできない。
ただ…怖かった。
全体VCをONにし、kunさんに来てもらう。
kunさんも全体discordに移動し全員が聞ける状態にする。
「電話誰か持ってるやついないのかよ!」
「住所知らないって……!」
「世界政府とか、仲良い奴らいるだろ!!」
チャット欄が異様な速さで流れていく。
普段ならふざけたコメントや下ネタで埋まるはずのそこに不安と焦りだけが溜まっていく。
そのときまた音がした。
ゴツッ。
さっきよりも小さい…けど確実に“人の動き”を感じる音。
kun「……生きてるよな?」
誰も答えられない質問が宙に浮かぶ。
りょうへいは最近ずっと様子がおかしかった。
「寝てないだけ」
「ちょっと体調悪いだけ」
「仕事が大変でさ笑」
「コマンドまだ終わってなくて」
そう言って笑っていた。
――その“ちょっと”を誰も止めなかった。
「……俺ら気づいてたよな」
ぽつりと漏れた声。
誰も否定しない。
「りょうへいがしんどそうなの。」
画面の中ではキャラクターがようやく止まった。
コントローラーが手から離れたみたいに。
そして。
完全な沈黙がVCを埋めた。
誰も何も言えなかった。