滑り台とベンチと大きなイチョウの木。
あとは何もない小さな公園のすぐ横に、ひそかに「魔女の家」と呼ばれている、大きな洋館がある。
その家には、魔女が住んでいるという。
「ゆりちゃんの家ってどの辺?」
この休み時間で何度目かの質問に答える。
「えっと、、イチョウ公園の近く、、」
「あー、魔女の家の近所なんだ。」
「魔女の家、、?」
「そ、公園の横の魔女が住んでる怪しい家。」
─もしかしてあの家のことかな。
「庭に大きなほうきが置いてあって、よく黒猫が入ってくの。
偶然窓から中が見えたって子が言ってたんだけど、全身真っ黒の服を着た魔女がいたってね。」
─たしかに魔女っぽい。
「ゆりちゃんも気をつけてね、魔女につかまらないように。」
ゆりの机を囲んでいた女子たちが顔を見合わせてクスクス笑う。
「あ、うん。ありがとう。」
ぎこちなく笑ったゆりは、机の上のお気に入りの消しゴムを眺める。
授業のチャイムがなって、やっとみんなが席に戻る。
─全然変われてないじゃん。
机の下で握りしめた手のひらに爪が突きささる。
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