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自分は出来る、自分は出来ない。この矛盾にここ何年かは悩んできた。その中でも一番理解できない矛盾点は『〇〇な感情のときは出来る。でも〇〇な感情のときは出来ない。』という感情の制御によって異なる矛盾点だ。
もっと素敵な言葉を投げかけてあげたい。もっと自分にしか出来ないことをしたい。そういう独りよがりでできた『矛盾』が僕を苦しめる。
今年で17歳の私は大人と子供の境目のような謎の時間を淡々と過ごしている。父親はおろか母親でさえも私のことを信じてくれない。たった一度の失敗で今まで積み上げてきた積み木ががらがらと崩れ落ち家族を離れ離れにさせた。もしあの時冷静に頭の中を整理出来ていればあんな言葉は口から飛び出さなかったのかもしれない。だが、私は魔法使いでも超能力者でもない。過去に戻ることは絶対に出来ない。永遠とも言い得る時間の中で反省し続けるしか償う方法は無いのだ。そう私は『学校に行かないこと』を人生の分岐点で選んでしまった。
だが、そんな私に進路を決める時がやってきた。「空欄を埋めよ。(長所と短所)」という謎の紙が届いた。そう、これは個人面談をする時までに書かなくてはならない。
私は咄嗟に筆記用具を取り出して必死に自分の長所と短所を考えた。
どれくらい時間が経っただろうか短所の面ばかりで長所の面が見当たらない。どれだけ必死に頭を動かしたとしても意味など全くなかった。元々、自己肯定感が低く、自分に自信なんて微塵もない私にこんな難問をぶつけてくるなんて………。
がちゃ…この音は親が帰宅したという音だ。階段を降りるとパリッとした綺麗なスーツを着た男性が玄関の靴を脱いでいた。久しぶりに父親が帰ってきた。
「おかえりなさい…」
「お、今日は学校に行ったのかー?」
まただ、もう二度と行かないって言って母親は了承してくれたのに父親はなんの理解も示さない。不登校に人権なんて無いのかもしれない。そもそも学校に頑張って行けば個人面談なんてないのだからこんな面倒なものを書かなくていいのだ。
「もう行かないって…何回言えばいいの?」
「何回って……学校は行かないと」
「行きたくないの…」
「今日は体調良さそうだし…母さんに連絡っ…」
「いい!いい!大丈夫!」
咄嗟に父親の持っていたスマホを奪い取った。その画面には母親への着信履歴が表示されていた。私は悟った。すかさず上の階に避難しようと逃げる体制をとった瞬間にぷるぷるーぷるぷるーと着信音が鳴った。あー、ほんっと最悪……
父親はすぐに電話に出た。
「もしもし?」
「あー、居るよ。うん学校は行けてないらしいんだけど」
「うんうん。あーそうなんだ」
「すず~すず~!!」
名前を呼ばれて逃げようにも逃げられなかった。
「ん、もしもっ…」
『あんたさぁ?なんで学校に行かないわけ?今日元気だったんでしょー?』
食い気味で私の話を無視して質問を投げかけてきた。この癇癪を起こしがちなヒステリックさが大の苦手だ。両親は気づいてはいないが私が人前で会話が出来なくなった原因の一つが母親の癇癪だ。
「う、うん。」
『ほんっとダメダメな子ね、なぁーんでこんなにも出来損ないなのかしら。』
「学校に行ったら必ず人と話さないと行けなくなる。その度に手も足も痺れて感情が制御出来なくなるし、汗も涙も止まらない。おまけに息がしずらくなって最悪過呼吸にもなるって…この前も説明したよね…?」
『あら?そうだったかしらぁ笑まぁ、明日になったらその苦しみも解けるわよ。だーってぇ、社会でそんな人見たことないもの笑』
「……私が社会に適応出来てないってこと?学校に行ってない私は……」
『そーこまでいってないじゃなぁい笑あんた障害も病気も持ってないでしょ?そんな正常なあんたが社会で生きていけないわけないもの!私の子なのよ?それぐらいできて当たり前なのよ。明日には帰るから明日は学校行ってね?』
そんな言葉が私の耳に届く訳もなく返事もすることもなく電話を切った。
こんな誰かに作られた『自分』じゃ何か分かるわけない。もっと『自分』について知りたい。どうしてこうなってしまったのか。どうして人前に立つと震えが止まらなくなって息が詰まってしまうのか。どうして、どうして、どうして!!こんな『自分』大っ嫌い。本当の『自分』を誰か教えてよ。どんなに嘆いて叫んでもこの声は誰にも届かない。不登校者に人権なんてはなからないのだから。
だが、どんなに打ちのめされても結局『自分』を本当の意味で救えるのは私だけだから。そんな複雑な感情が押し寄せ自室で泣いてしまった。こんな『矛盾』を抱えた私をもっと知りたい。救えるのならば全て忘れさせてくれ。消えたいなんてわがままは言わない。生まれてきたことに意味がないのならば私を産んだ母親を恨むことは必然だったのかな。だから、『自分』から全てを奪った母親を私は決して許さない。